善人たちの城下町、城は誰のものか?
葉「影はどっちが欲しい?
このちろりとちょろくちょこざいチョコか、
どろんとどろっぷトリッひゅっ……
こほん、残ってるのこれだけだから、慎重に選んでね」
影「あっ、うん……そうだね。こっちで」
影(取り繕ってるけど顔が赤いまま……
全部言うくらいだし、どっちも好きなんだろうな)
それが正しいと信じられるのなら、人はその障害に自然と力が篭る。皆が同じものを正しいと思うのなら注ぎ込まれる力は強大で、障害に対して酷く残酷な態度すら取ることができるだろう。
今回は、それが善人であればあるほど尚更に。
「さて、演説は終わったようだ。君たちは彼に対して何を思ったのかな? 少し聴かせてくれないか」
女将のお兄さんは演説自体には気に留めてない様子でこちらに尋ねてきた。
「それは商人として、ですか?」
お母さんが彼の方を向いて質問すると、彼は笑いながら答える。
「ああ、勿論。別に君たちの友として語らっても良いが、ここは敢えて公正公平に意見を聞きたいからね」
商人の皮を被り、ちらりと外の様子に目を通したあと、彼は語り始めた。
「この都の大半は善人だ。手を差し伸べる事は当然で、例え市場で商売をしようとも利益のみを求めない。それは人として素晴らしいかもしれない。
だが、商人とは利を求め、口八丁で人の欲を刺激する。大きな店を経営する者であっても、考えることは行商人のそれと変わらない。手にある商品の価値を釣り上げ、如何に商売を広げてゆくか。価値を高めるためには時として口を使い丸め込まなければならない。
そのために、その人が何を重視しているか見極める必要がある。家族への贈り物か、はたまた上司への手土産、若しくはその人自身が求めてやまないものか。ただ相手が求めたものを渡すだけでは商売とは言えない。それを提供することが、信頼を得ることに繋がる。
相手を満足させる商売が出来てようやく、一人前の商人だ。信頼はお金の流れを生む網であり、打算による思考が染み付いている。どんな事にも利はあり、抜け目なく思考の網を巡らす。
それは善人にとっては少し不快に思われるかもしれない。善人は利を求めるのではなく、善を……ここでは主の教えとでも言っておこうか。相手に情けをかけ、支え合う事を信条にしている人々は一人抜け駆けしようとする商人を疎ましく感じ、逆に商人はやり難い善人相手に駆け引きをしようとは思えない。
この城下町は単体で循環が完結している。だから、相手として適宜でない相手よりは大きな循環の輪にのる君たちとの交流を大事にしたいのさ。
まあ、この都にも商売相手がいない訳でもないから私もここに住んでいるだけれどね。これで心配事は減ったかな?」
「そうだね、貴方になら私が思った事を正直に伝えても問題はないと思う」
お母さんは視線を下に広がる人々に移す。
「あの主教は戦争を起こしたい、ただそれだけの為に勇者のお披露目式も祝杯も全て前座でしかなかったんだ」
確信めいた言葉とともにお母さんは私の方を振り向いた。
演説連投で、もう長い台詞から解放されたかと思ったらまだでした。作者はゆかりちゃんが要約スキルを持っている事を期待しているよ……
前書き
思い付きでお菓子の名前を書いたけど、
長い名前のものって噛んじゃうよね。
葉が噛んだ飴の名前は
どろんとどろっぷトリップドリームドロップ
やばいものではないよ




