誘惑は容易に抗えず
水「おっ、ラッキー。お菓子があるやんけ。
あれ? でも、今日お客さん来るんかな?」
ラル「取られては困るよー、マイフレンドー。
それは影ちゃんが私にくれたものだからー、よー」
水「それでも、うちは♪ もらっちゃうYO♫ YO!」
ラル&水「hey、YO♫」
賑やかな雑踏から少し離れた場所に立派な建物がぽつんと建てられている。少女らが商人たちの魔の手から逃れ、息を軽く整えるときには子どもたちに囲まれていた。
「おねえさんたち、どこからかきたの?」
「きっと外にある遠いところだよ! だって、中々見ない髪の色をしてるし。そうだよね、お姉さん?」
三、四歳ほどの子が目を輝かせて質問し、五歳ほどの子が今までに見たことのない風貌に大いに驚く。
「そうだよ、私たちは外の国から旅をしてここまで来たの。君たちに聞きたいことが——」
「おいっ、暫くは他所と関わるなと言っただろうが!」
恐らく孤児院で一番年長の少年が大きな声で言うと、落ち込んだ表情で少女から離れてゆく。
「そこの、あんたは何の目的でここに来た?」
随分と勝ち気な少年の様子が気に掛かりつつも、少女は目的を簡潔に話す。
「昔の物語を知りたくてね、知り合いからここを紹介されたから。院長さんは今いる?」
「こんなところに来るより、他に良いところがあると思うが…………成金の匂いはしないな。ああ、婆さんなら入ってすぐの部屋にいるぜ」
警戒を緩めたのか、多少の弛緩した空気が流れてゆく。
「一応聞くけど、主教の手先とかじゃないよな?」
「そんなに偉い人の知り合いだったら、ここまで馬車に乗ってくると思わない? 残念ながら、若干すかんぴんだから。おっ、そうだ。お菓子食べる?」
袋に包んでいたお菓子を少し取り出して、手のひらに乗せる。
「…………いいのか?」
「別に私は構わないけど、もし孤児院のルールで食べられないんだったら私が食べちゃうよ? まあ、私は袋を渡しただけで、中身がどうなっても知らないけどね」
一つ手で摘み、口に運ぶと、サクッと良い音を立てて、美味しそうに食べる。
「うん、美味しい。でも、こんなにあると喉が渇いて仕方ないわね。こんなに甘くて、美味しいお菓子が一つだけじゃ食べにくいだなんて、つい手土産を多く持ってきてしまったけれど、院長さんにこんなに渡すのも気が引けるわ。ああ、妖精さんがここに置いたクッキーを摘み食いをして、あまつさえ妖精さんたちが口を綺麗に濯いでいれば気が付かないでしょうに」
わざとらしく咳払いをして、ちょうど良い位置に菓子袋を置く。
「さて、私は中に入るので、この荷物が邪魔にならないようにここに置きます。任せるのは申し訳ないですが、見張りをよろしくお願いしますね」
少女らが扉を閉じた瞬間、クッキーを巡る壮絶な戦いが起こったとか。とにかく、後ろからドタバタと音が聞こえて、少女は少し笑ってしまった。
先に言っておくけど、少女の料理スキルは高めだが、
プロの段階には入ってない。
肉を解体できる時点で凄いからね。
おおよその料理なら手順が分かれば作れるくらいのことを加味して、高めと言ってるから。
前書きがラップらしき何かを始めたよー。
にわか過ぎて、それっぽいかも分からず違和感がよー。




