胸の上に巻き付く棘
Q.寝起きは良い?
葉「寝起きは良いけど、寝ていたいかな」
影「起きることができれば……」
水「早寝早起き朝ご飯っ!
それが最高のルーティーンやね」
ラル「んー、寝る?」
意識が覚醒した少女は少し寝苦しさを覚えて、横向いて見ると、リリスがぴったりと少女の腕にくっついていた。
それに慣れた様子の少女は上手く抜け出して、篭った空気を窓から一気に開け放つ。そうすれば、晴れやかな空が心地良く出迎えてくれる。伸びをすれば、眠気が多少薄れたのか、少し動きやすい服に着替える。
その辺りで丁度扉の外からノックされた。
「朝食のご用意をしておりますが、部屋で召し上がられますか?」
「そうですね。……あっ、少し待ってください。リリス、起きなさい」
「…………んんっ、おはよう。何?」
寝惚けて目を擦るリリスはナイトキャップを一応被っているが、流石に客人とはいえ、こんなだらしがない姿を見せる訳にはいかない。しかし、外に待たせている使用人をそのまま放置するのも気が引ける。少女が困った顔をしながら、少女の荷物に入れていたリリスの服の予備を渡す。
「…………後ほど伺いますので、お気になさらず」
どたばたとした中の様子を察したのか、使用人は去っていったようだ。
リリスが着替えたあと、使用人を呼びに行こうと扉から顔を出した瞬間、横から声をかけられた。
「準備の程はよろしいのですか?」
「え、あっ、はい」
あまりにも自然に声をかけられたので、動揺しながらも少女は返事を返した。
「では、朝食はいかがですか?」
「お、お願いします」
朝食を新鮮なサラダや、野菜がとろとろに煮込まれたスープなどでもてなされた。
◇
「ふぅ、とても美味しかったです」
「食べたことのないものが沢山あったね、ご馳走様でした」
その言葉に軽くお辞儀をして、皿を下げたあとに使用人から手紙を渡された。
「それは孤児院への紹介状です。それを孤児院の院長に渡せば支障なく本の閲覧ができるでしょう」
「仕事が早いですね、何から何まで…………ありがとうございます」
それにも同じように反応して、使用人が下がるのを見届けたあとに話し始めた。
「…………孤児院、不思議だよね。もし私が拾われなければ、同じような場所にいたのかもしれないから」
「…………」
少女はリリスに全てを伝えてはいない。ただ旅をしているとに知り合った女性が死期を悟ったから、少女に預けたというところまで。
深い事情まで話すことはないと思っているが、リリスに少し罪悪感を感じているからか、その話題のときは暫く少女の口は動かなくなってしまう。
「見つかると良いね、探しもの」
「うん、そうだね」
曖昧に笑う少女に少し首を傾げつつも、少女を信じて笑う彼女に一体何を懺悔しようというのか。
その板挟みに少女は息を吐き、胸の上で手をぎゅっと握った。
とろとろと野菜が煮込まれたスープと聞くと美味しそう。
でも、具材の食感も楽しみたい。
三日目のカレーが美味しい原理?




