星々の輝きは遠い
葉「ただいま……って、今日は誰もいないのか」
葉(妹は遊びに行って……静かだな)
葉(騒がしくなくなると、一気に寂しくなるね)
帰り道は何事もなく、少女は家に着いた。
扉を開けると、いつかで見たように少女のお腹にリリスが飛びつく。
「ただいま、リリス。良い子にしてた?」
「うん……」
リリスを抱き上げて、部屋に入ると琥珀が疲れた様子で出迎えていた。
[やっと、帰ったのね。私、疲れたわ]
「何でそんなに途切れ途切れなの?」
少女がそう聞くと、琥珀はまるで徹夜をした人のように、ゆらりと話した。
[————って、ことがあって疲れたわ]
「うーん、私に懐きすぎてるからかな。琥珀の前では嫌いなものは残すし、私がいないから泣いて大変と…………」
べったりと張り付くリリスをちらっと見て、少女は困った表情をしながらしゃがむ。
「リリスは琥珀のことをどう思ってるの?」
「…………嫌い」
[えっ?!]
予想外の不意打ちに琥珀は衝撃を受ける。
「それはどうして?」
「だって、コハクはお母さんを遠くに連れてって行きそうだから」
その言葉に少女は少し目を伏せたあと、再度リリスに向き合う。
「リリス、私は貴女のお母さんじゃない。だから、一緒にいてあげられるのはほんの少しの間。貴女のお母さんに託されて、せめてリリスが自立できるまでは側にいようと思っている。だから、私は——」
「ひっぐ、……お母さんは私のこと嫌いなの?」
ぽろぽろと涙を流すリリスに少女は鎮痛な表情のまま、その言葉を否定する。
「ううん、リリスのことが大好きよ」
胸元に抱き寄せ、落ち着くまでリリスをあやす。
◇
「はぁ、少し焦りすぎたかな」
[確かにそうかもしれないけど……私よりは良いと思うわよ。だって、あそこまで嫌われてるとは思わなかったもの]
泣きつかれてしまったリリスを寝かせて、夜風に当っている。
「もう、歯止めがなくなってしまった。邪神との戦いの傷を癒えた両国は戦争に一直線だと思う」
[こんな時に愚かと言えば良いのか。全く、するのなら大人だけで権力争いしていて欲しいものね]
悩み事の種は尽きない、しかし少女たちに出来ることはない。
[そんな暗い話は置いといて、自分探しは順調?]
暗い話はうんざりだと、そちらの話を打ち切る。
「うん、そっちは色々と見えてきた気がする。名乗るのも偽名って少し申し訳ないけど仕方ないよね」
少女はゆかり、と名乗ったがそれは偽名だ。一時期、魔王国を放浪していた為、下手に本名を使うとスパイだとか、なんとかで面倒になるかもしれないからだ。
[名前か……、紫苑って子は一体どうして姉の元にいるんだろう]
「今分かるのは、彼は戦いたくないから私が居るってことと、彼と私の根源が恐らく同一のものってことぐらい…………私たちが考えなきゃいけない事は多いね」
満天の星が夜空を明るく照らしている。悩みと同じように無数にある星々にはどんな世界があるのだろうか。
それを見るには、未だ少女たちの道のりは長い。
少女の考えていることの整理回でした。
・リリスのこと
・両国の戦争
・紫苑という少年について
・琥珀の姉、瑠璃葉の目的
・少女自身について
・追加で仮面について
読者の疑問
・少女の名前なんだよ! と、予測中。まだ焦らしたい。
一応、これから『ゆかり (仮称)』と呼んでくれて構わない。なお、作者は少女呼びのまま。
名前の由来に紫苑が関係あったりする。




