取り止めのない手記
葉「言葉には様々な意味を含有するのはご存知の通り。
また、イメージから比喩に使われることもある。
比喩とは、曖昧な輪郭の情報を上手く掴ませるのに良い
ものよ。輪郭を掴むという事は他のものと分けること。
だから、名前は重要かな。さて、質問はある?」
水「……はっ、無問題や!」
葉(寝てたね、間違いなく)
この世界には魔法があるらしい。それは此処に来たとき、琥珀が教えてくれた情報だ。どんな法則があって、どのように動いてるのかはよく分からない。
私は頭が硬いのか、それとも他の理由かで使う事は今のところ出来ない。しかし、魔法という技術は人や魔族の生活を豊かにし、また戦にも使用される。
これを使えたら便利だが、別に使えない人も一定数はいる。だからといって、差別される訳でもなくどちらも農業を営んでいる。いや、正確にはそういう地域までしか足を踏み入れた事がないというのが実際のところ。
ともかく、魔法という便利なものがあるからか、飲み水には困らずに、お風呂にまで入れた。お風呂、と言ってもサウナのような蒸気風呂なのだが。お風呂を温める加減や、湯を張るのに魔法を使うより水を蒸発させる方が効率的なのかもしれない。それに、蒸気にするだけなら魔法じゃなくても容易に出来る。
人の知恵や工夫は面白い。こんな風に日記に書くくらいには、興味深いものだと思っている。
◇
次の日、まだ日が昇らない時間に少女は既に起きていた。
「…………流石に早いか。日記はまとめたし、少しこれを試していよう」
これ、と言われて背嚢から取り出したのは師匠から託された仮面。赤く塗られ、眼を吊り上げた表情は憤怒を表してるようにも思える。
「夜叉の役割は神が治める世界を守ること。なら、その象徴としてか、それとも顔を隠す為に?」
仮面は様々な理由で使用される。想像してみると、仮面舞踏会や鉄仮面と呼ばれるものを被った騎士、心の仮面・ペルソナなどが思い浮かぶ。
顔を単に覆い隠す目的もあれば、凶刃から顔を保護する、隠す為に使用されたりもする。身近なものだと風邪を予防するときに使うマスクだろうか。あれも、病気から身を守る為に使われる。
「でも、師匠はその為に使っていたとは思えない。そう言えば、師匠が話してくれた話の中で仮面が出てくる話があった…………でも、あれは民族的な習慣。もしそれが習慣だったら、私に薦めてもおかしくないと思うけど、それに同じようなのは見た事がない」
頭の中で整理する為に、口に出して思考を並べてゆく。しかし、明確な答えが返ってくる訳ではないので、途中で中断する。
「…………時間もそろそろ。行こう」
寝台に座っていた腰を持ち上げ、仮面を背嚢に入てる。少し空を日の光が彩り始めた頃、少女は店に向かった。
魔法については……次回に期待を、ねっ?
仮面について
前書きの茶番の応用
仮面という顔を覆う物体が、表情を隠すという意味に昇華されていたりする。仮面は世界各地に見られ、様々な役割がある。
神を降ろすためや、舞台での役割を変えるため、身分或いは正体を隠すためにも使われる。
さて、では何故お爺さん(本名・松洛)は付けていたのでしょうか。確定情報がなさ過ぎて、答えが出ないループに陥っている少女なのでした。




