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旅の寄り道、風に誘われて

      -----回遊魚現るっ!-----

 風がそよそよと吹き、撫でてゆくのは荒野に二つ立てられた手で抱えられるくらいの大きさの石があった。

 「結局は変えられなかったか」

 「あの頑固な彼らしいわ」

 二つの男の影が世界を照らす日から遠ざかるように伸びる。


 「お天道様はあいもかわらず、どの世界に行っても照らしてくれる。でも、それが何時迄も続くやなんて、どうして信じられようか? な、伽藍」

 道化のように戯けた口調で話すが、伽藍は複雑な表情で返す。

 全身赤い服を着て、郵便局員が肩にかけるようなバックから花を取り出す。

 「…………済まないな。向こうの世界は崩れ去ったからここに来るまで時間がかかっただろ」

 「ええよ、僕も彼とは縁があったから。あそこはええ場所やったなぁ」

 いつもは細目の彼が薄っすらと目を開けて、感慨に浸る。


 「俺だけじゃなくて、沢山の人々や協力してくれた友、何より見守ってくれていた松洛の爺さんに、お転婆娘の楽水……全てがあったからだ」

 「それでもお前が始めなかったら、そもそも生まれなかったやん。みんな、お前の描いた世界が魅力的だったから来たんだ」

 以前の世界と同じように作られた此処は大地が球体ではなく、平面に伸びている。その為、太陽が天蓋の中心で燦々と照らすために日照時間が多く、月が太陽を覆うことで一日が終わる。

 「神であっても、ままならないよな。あの時は時が早く流れているように感じていたが、今では酷くゆったりしている」

 「何や、まるで婆様や爺様みたいなこと言うて。僕は今でも早く感じるで? というか、実際に他のとこと比べると僕の世界は早く回ってるみたいやしな」

 そんな会話を聞きながら、ざっざっと近づく。


 「済まないが、此処に花を供えれば良いのか?」

 暫く相手が驚いた様子で固まると、暫し間を置いてから。

 「また、珍しい客が来たものだ。今日はあのお嬢様の驚く顔も見れるかもしれねぇ」

 「ん? ああ、僕の同僚のことか。確かに、そのぐらいとんだ珍客かもしれん」

 そんな言葉を無視して、ここまでの道中で見繕ったものを供える。


 「彼女は今も元気か?」

 「うん? そりゃ、元気ちゃうんか? あの女神様は毎度健気にも献身してるが、最近は悪巧みもしているようやから」

 けらけらと、シーインは軽薄に笑う。


 「そうか……もう私は旅に戻らなければ、では」

 踵を返し、風に揺れる首飾りがなくならないように手で抑える。

 「何事もなければいいが……」

 そんな言葉を思わず口に出し、当てのない旅に戻る。

 一章は終わりです!

 さて、読者諸君。この物語が群像劇だと言う事を忘れてないかな?


 まあ、次も少女の出番なのだが。

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