古槍鋳りて、百錬之鋼を継ぐ
Q.料理できる?
影「大したものじゃなければ…」
ラル「んー? たまにお菓子をねー」
葉「作るなら、何から用意したら良い? 鍋?」
水「はい、おにぎり!」
前書きの内容が思いつかないよう。
休みとはどうしてこんなにも早く過ぎてゆくのか。大したことのない日々は過ぎ、何気に存在感を薄めいた伽藍が久しぶりに顔を出したところから始まった。
「おう、久しぶりだなっ! やっと出来たぜ、嬢ちゃんも楽しみにしておけよ」
以前と変わらぬ様子で、肩に担いだ箱を地面に置いた。
「あっ、伽藍。前に会ったのは少し前なのに、かなり昔なように感じるね」
伽藍の工房に行っても扉は固く閉ざされ、常に鎚の振るわれる音が響いていた。
一応、扉の前に食事を用意すると、食べ終わった皿が置かれていたので生きてることを少女は分かっていた。
「おっ、前と比べて随分と……成長した、と言えば良いか? なら、タイミングは完璧だな。爺さんを呼んでくるから、すまんが暫く待ってくれ」
そんな感じで、伽藍は全員を集めた。
◇
[…………ああ、伽藍も居たわね]
「琥珀、それは酷い気がする」
「こいつはそんな事を気にするやつではない。いつもより工房に篭った時間が長いしな、仕事に熱が入って他を忘れていたのが落ちだろうよ」
本当に忘れたように呟く琥珀、それを咎める少女、老人から呆れた目で見られる伽藍。
「仲良くしてるようで何よりだぜ。確かに途中から仕事に熱中していたが、良い仕上がりだ」
「そうか、早く見せてやれ」
「いや、こういうのは開けるまでが楽しみだろ? その為に箱に入れたんだしな」
愉快そうに笑う伽藍は幾つかある箱の前に少女を誘う。
「ええっと、どれから開ければ?」
「どれから選んだって良いに決まってるだろ」
散々迷った末、少女は細長い箱を開けた。
「これは……刀?」
「おう、正真正銘の鍛造された刀だ。あまり注文されるものではないから、つい張り切ってやっちまったよ」
鞘から刀身を抜き取ると腰に下げたものと違い、刃は少女の背筋が凍るほど美しく、それに反して波紋は流れる水のように波打つ。
「……凄い」
「はっはは、それは良かった。そんな風に思わせる事ができたなら、冥利に尽きるな。……いや、この仕事しか出来ない俺には滑稽な言葉か」
「ううん、この刀は伽藍にしか作れないと思うよ。だから、誇って良いと思う」
少し恥ずかしそうに頰を掻き、そうだなと伽藍は笑う。
「だが、俺の技術だけじゃねえ。実は爺さんが元々持ってた槍を鋳潰して作ったんだ。もしかしたら、爺さんの槍が上手い具合に」
「そうなの?」
驚いた表情で少女は老人の方を見ると、ため息をついた。
「伽藍、いらん事を言うな。あれはもう使わんから使えと言っただけだ。確かに思い入れはあったが、あれを手元に残すのは忍びないと思ってな。なら、有効活用してもらおうと言う訳でな……」
[ははっ、言い訳みたいよ?]
老人の態度が琥珀には可笑しかったらしく、愉快そうに笑っている。
「ありがとう、伽藍。お爺さん」
周囲が笑いに包まれる中、ため息を吐きながらも老人の口角が少し上がっていた。
これからのメインは鍛造刀、脇差として元の一本。
何気に元の一本の方が頑強。あまり切れないけどね。
目指せ、二刀流? あっ、他のは予備とか、ナイフとか。




