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純愛弔歌

影「また本を読んでるの? お茶の用意できたよ」

葉「……うん、ありがと」

        --少女達の団欒中--

影「それで、何処を見てたの?」

葉「……いや、本を読んでたから(目ソラシ)」

影(ジト目)

 「今はそこのがいるだろう、儂の話に若い子らが楽しめるものはないぞ」

 「そんなことないよ、お爺さんの語りは自然と耳に入ってくるから……だめ?」

 以前と同じように強請る少女になし崩し的に折れる老人、側からみればそれは…………


 [ぶふっ、あっはは。翻弄されるなんて好い様ね、あっはは]

 「良い趣味をしてるな…………しかし、ふむ。記憶を取り戻すとしても、語るに損はないか」

 少し顎に手を当てた後、老人は前回と同じように語り始めた。


 「さて、前回の続きといこうか。


 流浪の娘は幾ら待っても帰ってこない流浪が気にかかった。しかし、娘には言いつけがある。娘は考えた、この地の住民を守りつつ流浪の様子を見に行く二つが成り立つ方法を。

 娘は享楽家だが、知恵が回った。いつ、何が起こるか分からぬ状況では住民を放ってはおけない。なら、守りつつ住民たちと様子を見にいけば良いと考えた。

 実力は流浪が認めていたため、その策は問題なく進み、深傷を負った流浪を見つけた。そして、未だ止めを刺されていない邪な化身の姿も。その姿は無垢であり、その顔には幾重に巻き付けられた包帯、そこから零れ落ちる豊かな色の瞳から光が輝くことはない。

 何も映さない瞳が娘から逸され、その場から化身は消え去った。娘は流浪を休ませ、娘が流浪の代わりに剣を持つ。

 脅威は未だに去った訳ではなく、長雨が止んだときにはもう娘の姿は何処にもなかった…………


 さて、これは幾多もの星に降りかかった災禍の一つに過ぎない。これ以上の事はそこのに聞けば良い、こんな話は往々としてあるだろうからな。力があろうと、あの災禍の前には一つの力なぞ非常に小さい。他者に手を伸ばせる範囲も必然的に狭くなる。そんな戦いがお前を待ち受けている、この物語を教訓としてくれれば幸いだな」

 話終えるまで沈黙だった少女は沈んだ声で尋ねる。

 「流浪は娘を愛していたの?」

 「口に出すことは終ぞなかったが、語るまでもない。それを尋ねるのは野暮というものだ」

 目を開き、老人が少女の方を見ると、優しげな表情で微笑む姿があった。


 「少なくとも、娘が戦った意味があったのなら、まだ救いはあるね」

 「…………そうであると、良いがな」

 弔歌は捧げられ、少女の視界にはゆらゆらと花びらが散っていた。

 前書きの解説

 いつから本を持っていても、持っている本を読んでいると錯覚していた?


 彼女にとっては、本を読むという動作は慣れ親しんだものでもあり、他の者が彼女を見たときに話しかけられないようにするためである。

 なお、今までの前書きに出た子らとは仲が良いのでどちらも気にしない。やましい事をしてなければ。

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