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暗幕が降りるまで

 水「女子会in布団をしよう!」

 葉「あっ、灯りは消さないで」

 影「すぅ……」

 水「……ほな、うちも寝るわっ! すやぁ……(自棄)」

 カリカリカリ、地面を擦る音が聞こえてくる。それは周囲に少女と琥珀しかいないからか、遠くの音も自然と拾ってしまう。

 「……寝れない、琥珀は大丈夫?」

 [……うん、そもそも私に睡眠は要らないよ。それにしても、あれらはとても不思議な奴らよね]

 少女らは狭い天幕の中に身を潜めている。ただ布に覆われているだけなので、少女たちの心細さは考えるに及ばないだろう。


 「不思議な所なんて、全てな気もするけど。何でそう思ったの?」

 [そんな隠れられるような場所もないのに、向こうが気付かないことね。元々はどんな願いがあんな化け物を生み出すんだろうね。邪神の考えなんて、私には分からないけど…………考えが読めないのはあの爺さんも同じか]

 去っていった老人に文句を言いながらも、琥珀は何処か浮かない顔をしている。


 「そうかな? お爺さんはただ、読みにくいだけだと思うよ。何処か自分を見せないようにしてるというか、隙を見せないようにしてる。でも、誰だって少しはそう言うところもあると……思うよ、多分」

 途中まであった自信が急に萎れて、力なく笑う。

 [……そう言うものか。まあ、君にそんな考えがあったとしても、妙に肩を持つわね]

 良いことに気付いたと、口を手で隠す。

 「それがどうかしたの?」

 [私が言えたものでもないけど、一日で築かれた信頼にしては何か……おかしいと思ってね]

 よく分からないという風に首を傾げる少女とその純真を弄ばんとする可愛らしい人形の悪魔。

 [先ずはそのお爺さんの事をどう思っているのかなっ、てね?]

 「意外と優しいし、信頼できると思うよ。えっと、本当に何?」

 [ふふん、今回はここでやめておきましょう。うん、最近補給できてなかったものを供給できた気がするわね。相手があれだけど、まあ良いわ]

 困惑したままの少女を放って置いて、琥珀は微笑ましい状況を、好きに解釈して浸る。


 「私は良くないけど……うん、琥珀が楽しいのならそれで良いよ」

 少女は目線を琥珀から外して、少し外の様子を伺う。外には化身たちが稀に現れる鼠などを切り裂き食べたり、他の個体と戯れあうように仲間同士を喰らい合う。

 「……目がないなら、捉える世界はどのように映るのだろう。耳もないなら、何を伝えるのだろう。嗅ぎ分ける事すら出来ず、ただ飢えを満たすだけの化身は果たして生きていると言えるのだろうか」

 住む場所によって感じる味の感覚や、見える色が違うように。結局、如何なる存在でも見る世界には差異が生まれる。もし自身と比較したとき、それらには世界が酷く優しいものに見えているのだろうか。


 嗅覚は鋭くとも、嗅ぎ分けることのできないそれらからは誰もが等しく、同じように見えてるかもしれない。

 化け物たちが気付かないのは嗅ぎ分けることがないから。

 そもそも味方とか、敵とかそんな概念すらなさそう。


 殺戮ではなく、捕食。快楽ではなく、胃を満たすために。

 ただ腹を膨らませることだけを求める化身だから。

 捻じ曲げると、人と違い、差別のないという皮肉。

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