悪食権化
Q.グロテスクなものは大丈夫? 例・内臓など
ラル「別にー、気にしないよー。
でも、内臓の配置とかさー、神秘的なものだよねー」
葉「好きではないよ。でも、見えるものは怖くないかな?」
影「気にしない。解体とか、よくするから」
水「うちはあかんで。カルビとかはええよ?
でも、レバーとかの内臓系は苦手や。せやから、
焼肉のときはカルビやハラミとかを----えっ?
ハラミって、内臓なのっ? 知らなかった……」
という訳で、グロが多いから気をつけてね。
ゴツゴツとした岩場を暖かな灯りが仄かに照らす。足場は平らに均されているのか、引っ掛かりが少なく、躓きにくそうだ。
「かなり歩きやすいね」
「応戦する時、こちらが不利にならんようにな。敵は足場が悪くとも、足の鉤爪を使って踏ん張りが効く。戦う環境には注意しておけ」
老人が先導しながら、元々居た建物の奥にある扉から徐々に下り、今は一本道を進んでいる。
まだ歩いて数分も経っていないが、少女は緊張から汗が幾筋も流れ、じめじめとして熱気が酷く不快な気分にさせる。
「こんな熱が篭るものなの? 外が砂漠みたいなら、逆になると思うけど」
砂漠は暑いというイメージがあるが、実は暑いのは日が登っているときで、夜は冷える。夜は砂漠の地表を温める太陽はないため、地表から熱が逃げる放射冷却が起こるためである。因みに、砂漠の地表は熱いが、下の層に行くほど表面と比べて気温が低めで安定しているそうだ。
「それは己の目で確かめろ。途端に異界が顔を出す、世界が切り替わる境目は直ぐそこだ」
老人が指差す方にある段差を超えると、そこから見えた光景は————
「なに、これ……」
以前と変わらぬ岩地面にねじれた木が刺さっている。この世界の理を歪めるように、散りばめられた種子から芽吹き、咲く花が余計違和感を掻き立てる。
しかし、それすら些事にすぎない。狂い咲く、やや紫色が生い茂る中にそれがいた。
それには目がない。耳がない。ただ捕食するための口と、屈強な腕、獲物を追うための足があるだけの醜いソレ。
「邪神の淀から生まれた不純物だらけの化身。……都合よく一体を釣り出せたようだ。お前だけで倒してみろ」
ソレは少女を見つけると、嬉しそうに口を歪める。決して走れない訳ではないのだろうが無邪気に近寄り、互いが間合いに入った瞬間
——ヨダレを垂らして飛び付いてきた——
「っぅ?!」
ぎりぎりの距離で体を逸らし、後ろに下がる。また敵が振り返り、にやぁと笑った後、臨戦体勢に移行していた少女は横一文字に刀を振るう。
ガッ、と固い感触が刀から伝わり、少女の刀は口に咥えられ、止まっていた。
武器を投げ捨て、少女は背中にあった荷物から予備を取り出す。
その一連の様子を目がないはずなのに、子どもが目を輝かせるように見ている。
少女が取り出したのは間合いが身近いナイフのみ。再度寄って来る歯をしゃがむことで避け、腹の一点に蹴り上げを喰らわせる。
「ちぃっ——、はぁぁぁぁっ!!!」
倒れ込んだ敵の首にナイフを穿つ。ガキッ、と甲高い、嫌な音を立てながらも、力強く振り下ろす。
欠けてゆくナイフを最後に生物なら心臓がある場所を貫いた。
「はぁ、はぁ……ふぅ、はぁ」
息も絶え絶えの少女の上に手拭いが覆い被せられる。
「一体の処理にそれ程手間取っているようではいかんぞ。敵は一体と限らんからな」
少女が顔を手拭いで拭ったとき、目の前に居た老人を背後から引き裂くように爪が現れる。
「お爺さぁっ——」
老人に向けて咄嗟に手を伸ばす少女、老人は背後に目もくれず、
身を翻したところから自然な流れで、軽く手を押し出す仕草で新たに現れた敵の腹を撃ち抜いた。
「奴らは血の匂いに誘われて来る、労力もそこに費やす方が良いだろう」
何事もないように話しながらも、屍の山が築かれてゆく。素人が見たら、演技ではないのかというほどに敵が容易く倒れていく。
死骸の方を見ていくと、お腹の部分が異様な形でへこんでいる。ある死骸は口から内臓を吐き出していた。
「いい加減、その血塗れの顔を拭け。それと、無理矢理蹴りをした時の足も手当てしておけよ。今は我慢するより、悪化させない方が先決だからな」
暫く上の空だった少女はその言葉で立ち直り、すぐに顔を拭いて、荷物を回収した。
待ちに待った戦闘かもしれない。
なお、ほぼお爺さんが処理した模様。
ちなみに、少女は割と戦えるよ?
ただ技能とかはあるけど、戦い方が問題。
ちなみにお爺さんは本気を出してない。
色々事情もあるけど、何より獲物を使ってないからね。




