第2話
「な、何よアンタ、急に変な声出して…ビックリしたじゃない」
「あ、いや、スマン」
奇声を出してる間に考えたんだが、案外ゴーレム生活も悪くないのかもしれない。だって食事、排泄、睡眠とかもろもろ必要ないからな。見方を変えれば、むしろ人間より時間を有効に使えるんじゃないかなと。
「ところでアンタ名前は?」
「俺か?俺はアイン…いや、カラクリ。ただのカラクリだ。」
アインツェルとして第二の人生を歩むのではなく、カラクリとして新たな人生を謳歌する事にした。
「アタシはビスク。よろしくね。」
「僕はブリキ。よろしく〜」
「俺、カブト。コレカラ共ニ励ンデイコウ!弟ヨ!」
(へぇ、名前は教えて無いのに既に知っているのか)
それからカラクリ、ビスク、ブリキ、カブトの四人は情報交換を行った。
彼らはこの世に生まれ落ちた時には既に自己というのを確立していて、何故か分からないが自分の名前を知っていたという。
しかし、自分たちが誰のもとから生まれた等の出自に関する事は一切知らないようだ。
彼らいわく、気がついたら存在していた、だそうだ。
(なるほど、では彼らは俺の前身、アインツェルの事を何も知らないのか。別にこれは言わなくていい情報だよな。しかし何故かアインツェルの遺体が消えている…)
すると先程の謎の少年の声が頭の中に響く。
【やっほーカタクリくん、だいたい事情は掴んだかな?】
(その声は…キミはさっきの?!)
【そうそう、じゃあ時間も無いし早速自己紹介から。僕はこの世のありとあらゆる人形を司る神、通称『人形神』。今は訳あって名前は教えられないから普通に人形神と呼んでくれて構わないよ。】
噂には聞いた事がある。この世界には神という不確かな存在が実在すると。神は気に入った者に加護を与え、現世に干渉するとか。あまり詳しい事は分からないが、確かこんな感じだったはずだ。
「俺に…なんのようだ?」
【そんな固くならないでよ〜、実はさ、僕からお願いがあるんだ】
「お願い?」
【カラクリくんにはさ、できるだけ早く強くなってもらいたいんだ】
「強く…?その理由は?」
【そりゃ端的に言えば僕のためさ。神の位って神になる前にどれだけの業績を残したかで決まるんだけど、もう一つ大事な要素があるんだ。それが使徒がどれだけの功績を残したか、なんだ。】
「使徒…つまり神に加護を与えられた存在か?」
【そうだね、僕は訳あって神に至るまでの業績がゼロどころかマイナスだからさ。そのせいで神界で僕は邪神扱い。だから僕の名誉回復のためにカラクリくんには頑張ってもらうしかないんだ。でも安心して!超強力な加護を授けたから、間違いなくキミの助けになってくれるはずだよ】
「あの三体の魔人形もキミの仕業か?」
【ん?あぁアレね、アレは僕の加護の副作用みたいなもんさ。それ以外にも加護のおかげでできる事がたくさんあると思うから、色々試してみて。あ、ゴメン。念話がもう限界みたい。それじゃあよろしく頼むよ。くれぐれも大量虐殺とかしないように…】
そう言うとブツリと念話が途切れる。どうやら人形神と会話していた分の時間は現実世界で進んでいないようだ。
「カラクリ、ボーっとしてるけど大丈夫?目覚めたばっかりだから、動力核が上手く作動していないんじゃないの?」
「いや大丈夫だ、で、何だっけ?」
「これからの活動方針さ」
つい先程生まれたばかりの三人と違って、カラクリは生前の知識があり博識なため、既にリーダー的存在になっていた。
「ああそれなんだが、当分の間、俺たちは強くなる事に重きを置こうと思う」