第16話
荷車に山のようにものを積み運ぶカラクリ。そしてそれに付き従うハーサム。既に七往復目である。気力的にもう限界だ。
「結局オイラはこういう雑用係なんですよね」
「毎度すまんな」
「いえ、いいんですよ」
他のゴーレム三人はというと、カブトは私物の類がゼロなので朝から森に出かけている。ビスクも花瓶と花壇くらいしかない。花壇の移動はカラクリのスキル頼みである。ブリキはそれでも大量の蔵書があるので三往復ぐらいはしていた。
カラクリは前身アインツェル·ゲンガーの頃から使っていた私物の他にも、ゴーレムの開発修理のための工具などがあるため、今このような状況になっている。
「いらないものは捨てよ…」
そう呟いた瞬間だった。
巨大な影がカラクリたちを覆う。
「なんだ?!」
見上げれば飛翔する巨大な生き物が通り過ぎる。
「ありゃあ…ドラゴンか?」
「そうですね、定期的にここら辺を通るんですよ」
ボーっと見上げたままのハーサム。
「どうしたハーサム」
「あ、いえ、やっぱカッコいいなーと思って」
「俺が?」
「え?違いますよ、ドラゴンですよ。だって最強の象徴じゃないですか。オイラ、ガキの頃ドラゴンになるのが夢だったんですよ。」
「へ〜意外となれたりしてな」
「ハハハ、ただの子供の妄想ですよ」
「そういえば、あのドラゴンの住処ってどこにあるんだ?」
「オイラもネム婆さんに聞いた程度しか知りませんが、確か北にある真っ二つに割れた山、金銀銅山という山に住んでるとか」
「へ〜」
(ここら辺のモンスターはもう余裕だし、次からはそこを目指そう)
するとそろそろ洞窟が見えてくる。
洞窟の外では急ピッチで家造りが行われており、かなり騒がしい。
“木属性操作”のスキルを持つブリキが主体となって、辺りにある木々を伐採·加工を施し、力自慢のボーレンら男衆で組み立てをしていく。
カブトが周囲のモンスターに顔を利かせているため、作業中に襲われるという事は今のところ起こっていない。
襲われてもボーレン率いる男衆は返り討ちにしてしまいそうだがな。
ビスクは気にせず花壇の手入れと水やりをしている。
カラクリも私物を自分の部屋を置き終え、ようやく自由行動ができるようになった。
「これからどうするハーサム?」
「そうですね…特にする事も無いんですけど、まあ修行ですかね」
「じゃあ一緒に来るか?」
「え、いいんですか?」
「いいぞ」
カラクリのモンスター狩りに初めて同行を許されたハーサム。ちょっぴり認められたような感じで嬉しさが込み上げてくる。
ハーサムは前々から時間を見つけては森へ行って狩りをしていた。なぜならあの家には食料が置いておらず自分で獲ってくるしかなかったから。ゆえにハーサムにとって森の狩りはもう慣れたものである。
数分歩いたところで一体のモンスターに遭遇する。
(そういえばハーサムの戦いを今まで見たことが無いかも…)
「ハーサム、試しに倒してみろ」
“解析眼”
名前:ハーサム Lv.13
種族:緑亜人(通常種)
属性:なし
魔法:なし
スキル:「刳る竜爪Lv.18」
(レベルは俺らとそこまで大差ないな…)
名前:―― Lv.12
種族:棘甲羅亀
属性:水
魔法:「水属性魔法Lv.16」「強化魔法Lv.14」
スキル:「追跡棘Lv.15」