第11話
「ご存知の通り、オイラたちゴブリンは弱いです」
「確かに」
「そうね」
「種族的な問題って辛いね」
「非力ダ」
「うぅ…そこまで言わなくても…まあそれはいいんですけど、やっぱりこの森じゃ生存競争に勝てないわけですよ。そこでオイラたちのご先祖様は何を考えたかというと、洞窟に逃げたんです」
「まあそんな事だろうと大方予想はついていた」
「洞窟と言っても最初は雨宿りができるくらいの場所だったらしいんですけど、長年の掘削工事を経て今じゃ立派な洞窟になっています」
「人口洞窟ってことか、凄いね」
「それで何が嫌で家出なんかしたのよ」
「それは…」
すると例の洞窟に到着する。
「着きましたね」
ハーサムを先頭にぞろぞろと潜っていく。
地面はかなり整備されていて歩きやすい。それに等間隔に松明には火が灯っており、しっかりとした居住空間なのだと四人は少し感動する。
「ちょっとドキドキするわね、こういう場所!」
「うん、冒険って感じでとても新鮮!」
ビスクとブリキはとても楽しそうだ。
一方のカブトは一言も発しない。さすがに警戒しているようだ。
すると分かれ道から一匹のゴブリンが出てくる。
「あ、ハーサムじゃないか!お前だけ帰ってこないから皆心配してたんだぞ…ってうわァァァ化け物だァァァァァァ!!!」
ハーサムと再会を喜んだのは束の間、後ろの四人の存在に気づき発狂して逃げてしまった。
「俺たちなんかした?」
「いやなんもしてないわよ」
「僕も」
「感動の再会に水を差すなんて事はシナイ」
四人はお互いを見つめ合う。
「だよな」
すると洞窟全体に響き渡るほどの甲高い音が鳴り始める。
「あ、これ敵襲警報です」
「へー…は?!」
すると先程までの静けさから一転、洞窟内は慌ただしくなる。
女子供の悲鳴、野郎どもの気合いの入った図太い声、ドタバタと駆け回る色んな音、それらが洞窟という反響しまくる場所で際限なく湧き出てくる。もはやカオスだ。
数分経った後、武器を持った男ゴブリンが隊列を組んで進撃してくる。
「大事になったな」
「どうすんのよこれ」
「和睦交渉の余地あるかな」
「俺はいつでも戦う準備ができてイル…合図はカラクリに任せるゾ」
ゴブリン兵の先頭にいる男が前へ一歩出てくる。
「ハーサム!お前一体どういうつもりだッ!!」
もの凄い怒気を含んだ声だ。この男の一声で洞窟は元の静けさを取り戻す。
「今までどこをほっつき歩いていたか知らんが、得体の知れん輩を許可もなくこの神聖な場所に連れてくるとは何事だ!」
まさに怒り心頭。対してハーサムはというと平然としている。凄いな。
「この人たちはオイラの恩人であり、上司です」
「上司だぁ?!何を訳の分からんことを!」
(ハーサム、あの男は誰だ?)
(オイラの父です…)
(あぁ、なるほどね)
「ひとまず、そいつらは敵では無いんだな?」
「はい」
「ならいい、野郎ども撤収だ」
「へい!お頭!!」
兵は引いていく。
(あれ?一触即発な感じがしてたのに…)
「ハーサム、客人なら俺の部屋に招待しろ」
「はい」
「荒々しいんだか冷静なんだか…」
「リーダーとして正しい判断だよね。現状を正しく認識して双方が最も望む結果に持っていった…やるじゃん君のお父さん。」
「ゴブリンといえど彼は強そうダナ。漂う気配が一人だけ明らかに違っタ…」
「それで彼の部屋に行けばいいのかな?」
「はい、案内するので着いてきて下さい」
ハーサムの父の部屋はかなり深部にあるようで、何回か階段を下り、それにかなり歩かされた。
遠目から色んなゴブリンから好奇の目で見られるのは少し恥ずかしい…
「ここです」
ハーサムがドアをノックし開ける。
「父さん、連れてきました」
重たい腰を上げカラクリたちと向き合う。
「まずは先程の非礼を詫びさせて下さい、申し訳ありませんでした」
これには全員がビックリする。
(あの頑固な父さんが…頭を下げた?!)
(キャラ変かしら?)
(急にどうしたんだろう…)
(意味が分からヌ)
「いえいえ、敵かも分からない輩が乗り込んできたのであればあれは普通の態度です。それにこちらは何も被害を被っていません。ですから顔を上げてください。」
この状況に着いていけてるのはカラクリのみ。
ビスクとブリキ、カブトに至っては謝罪の意味も理解していない。ですます口調のカラクリは気持ち悪いなぁぐらいの感想しか抱いていない。
ハーサムの父は自分たちの立場というものをしっかりと自覚している。弱小種族であるゴブリンより遥かに上位の存在であろうこの四人に対して、いくら仲間を守るため、面子を保つためとはいえ無礼な言動をとってしまった。その事に対して心からの謝罪である。
「ありがとうございます。では自己紹介から始めましょう。私はゴブリンのボーレン。この洞窟に住むゴブリンのリーダーであり、そこにいるハーサムの父でもあります。」
「俺はゴーレムのカラクリです」
「同じくビスクよ」
「僕はブリキ」
「俺はカブトだ」
「あの、ゴーレム…とはなんなのでしょうか?」
「俺たちの種族名の事です」
「ほう、今まで見た事も聞いた事も無い種族です…新種か何かですか?」
「そう…ですね、俺たち以外に生物としてのゴーレムはこの世界に存在しないでしょう」
「なんと…!」
少しの談笑を挟み、本題に入る。
「して、ここに来た目的を聞いてもよろしいですか?」
「大したものではありません。ただの挨拶です。」
「挨拶…?」
「はい、うちのハーサム君の故郷となればご挨拶に伺わない訳にはいかないでしょう」
(うちの…?)
「失礼ですが、ハーサムは将来有望な自慢のうちの息子です。親バカかもしれませんが、そろそろ返してもらいたいのですが?」
一瞬にして辺りがピリつく。




