第10話
(来る…ッ!)
一体どんな怪物が姿を現すのか、そんな淡い期待と不安は次の瞬間に吹き飛ばされる。
「やっと見つけタ、探したゾ」
逆に驚く三者。もっとこう…大怪獣を想定していたから…
「なんだ皆して固まっテ、何かあったのカ?」
「あ、いや、なんでもない」
「なんだ…カブトか…」
「ビックリさせないでよ、もう!」
またいつものようにビスクがカブトに説教をしている。
するとカラクリはカブトの後ろにあるものに気づく。
「カブト後ろのそれ…」
「ア、アア!これはお前への土産ダ」
鎖に繋がれたモンスターの死骸が山のようになっている。それをずるずると引きずってここまで来たのだ。
「ありがとうカブト!」
スキル“搭載機能”で次々とモンスターを体内に放り込んでいく。カラクリはこの作業が大好きだ。色んなモンスターの特徴を知れるし、何より手っ取り早く強くなれるからだ。
するとここでブリキが質問をする。
「そういえばカブトはなんで僕たちを探してたの?」
「実はダナ…」
ここでカブトは道中で見つけたあるものを皆に話す。
「「ゴブリンを見つけたぁ?!」」
ビスクとブリキは二人揃って驚く。カラクリはある程度予測がついていたのか、そこまで驚いた様子はない。
「緑の肌に尖った耳…ゴブリンで間違いないと思うゾ」
「そうだね、その特徴は十中八九ゴブリンだろう」
「ハーサムと何か関係あるのかしら」
「そこなんダ、それが分からなかったから勝手な行動はできなかっタ。とりあえずカラクリの判断を仰ごうと思っテ…」
「いい判断だカブト、ひとまず偵察にでも行こう」
カブトがゴブリンを見つけた場所まで案内する。数分歩いた程度の場所で割と近い。
「ここダ、この洞窟の中にゴブリンが入っていくのを見タ」
しかし肝心のゴブリンは一人も見当たらない。それどころか気配すらない。
「いないじゃないの…本当に見たの?」
「俺は確かに見たゾ!」
「うん、確かにハーサムと似た匂いがする…それに足跡らしきものも」
スキル“搭載機能”で嗅覚が鋭敏なモンスターを厳選して搭載したカラクリ。実際に足跡など無いのだが、今のカラクリには「一定間隔で点在する匂いの跡」という風に見えており、それがすぐに足跡だと推測できた。
(それになんだ…この不思議な気配は…)
一時間程度見張ってみたものの、ゴブリンが出てくる気配が無かったので撤収することにした四人。
家に帰ってきた今何をしているかというと、それはハーサムへの尋問だ。
「えっと…四人して僕に何のようですか?」
「ハーサム、君はもともとどこに住んでいたんだっけ?」
「え、そりゃ森の中ですよ」
「細かく言うと…それは森にある洞窟の中か?」
「…ッなぜそれを…!」
「やっぱり君の故郷だったか、今日カブトがその洞窟を見つけたんだ。挨拶したいから案内してくれ。」
「それは…ちょっと難しいです」
「なに?」
「言ってませんでしたが…オイラ、家出してる最中なのでさすがに厳しいというか…」
どうやら複雑な家庭環境なのだろう。だがしかし
「雇用条件第一項、労働者は事業者の命令に逆らってはならない」
これを聞いて青褪めるハーサム。
「ハーサムくん、行こうか」