2話
美桜は帰宅後、部屋へと入り、クローゼットの中を漁り始めた。
「確か、ここにあったはず・・・、あった!」
2ヶ月程前に買って、まだ1度も開けたことのないVR機器の本体が入った箱があり、薄らと埃が被っていた。
箱の埃を払い落としてガサゴソと開け始め、VR機器本体の説明書を手に取り、パラパラと読み始める。
どうやら、アナウンスの指示に従って、設定を行っていくようなので、私はベットに横になった。
「ようこそ、仮想空間の世界へ!私はサポートAIのメルと言います!少しの時間だけどよろしくね!まずは、必要事項の入力から始まるよ!」
私はサポートAIの指示に従って、必要事項を埋めていく。
「まず、始めにあなたの性別と名前を教えてね!あっ、本名はあまりオススメしないよ!なぜって?そのままゲームに反映されちゃうからだよ!だから、よく考えてねー!」
・・・性別は女、っと。次に名前かー・・・、どうしよう。本名はやめた方がいいから、美桜の桜の文字を取って「サクラ」でいいかな?・・・安直すぎかな?他に思い付かないからこれにしよう。
それにしても、表情が豊かで可愛らしいAIだなー。なんか、私のイメージだと淡々と文章を読み上げたり、無表情だったりで少し怖いイメージだったから、AIに対する考え方を改める必要があるかな?
「サクラちゃんって言うのね!可愛らしい名前だね!じゃあ、次に身体情報をスキャンするから、ベットの上には何もない状態にして、服を着ている場合は脱いじゃってね!準備出来たら、目の前にある【OK】って書いてあるのを教えてね!」
え?服を脱がないといけないの!?まぁ、身体情報の正確にスキャンするためには必要なことなのだろう。
私は服を脱ぎ、枕や布団をベッドの上から退かした。
・・・あっ、夕飯の時間が近いから親が入ってくるかもしれない。もし、全裸で横たわってる娘を見たら親はどう思うか・・・。想像しただけで恐ろしくなってきた・・・。一応、部屋の鍵を閉めておこう・・・。
私はガチャリと部屋の鍵を閉めた。
これで恐れるものは何も無くなった。私はVR機器本体を被り直し、【OK】ボタンをポチッと押した。
すると、スキャンが開始された。10%刻みでサポートAIのメルちゃんが、
「10%経過したよー!」
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「50%経過したよー!」
と報告してくれる。また、私が飽きないように可愛らしいダンスを踊ってくれていた。
私は心の中で、
「・・・メルちゃん可愛いなぁー」
と思いつつ、静かにスキャンが終わるのを待った。
「・・・スキャンが完了したよ!えーっと、身長が161センチ、体重が53キロ、バストがーーー、だね!これが、サクラちゃんが基礎データになるよ!」
すると、目の前に私自身のホログラムが出てきた。
・・・わー、凄い。
様々な角度から見ても私ソックリ。しかも、ホクロの位置も正確に再現されていて、もー、びっくりです。スキャンの精度が凄いとしか言わざるを得ません。
「この基礎データは様々なことに使用されるよ!もし、この基礎データに不満がある場合は、サポートセンターまで問い合わせてね!これで、設定は終わりだよ!次はなにをする??」
これで初期設定は終わりのようだ。
次は・・・ゲームのインストールでもしようかな。
「OK!じゃあ、VR機器本体にゲームをインストールするよ!なんのゲームをインストールするの?」
私は、VR機器本体に【Free World Online】のソフトを差し込んだ。
「【Free World Online】だね!インストール開始するけど、いいかな?」
はい。
「OK!インストールを開始するよ!インストール時間は1〜2時間程度かかるよ!その間は、VR機器本体を外してても大丈夫だよ!でも、本体の電源はOFFにしちゃダメだからね!」
1〜2時間程度かかるのか。そろそろ、夕飯の時間だから外そうかな。