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クラスチェンジ

 次の日、バイトに勤しむ俺の携帯は順調に動いている。昨日インストールしたゲーム以外は。そう、あのゲーム、アプリを開くと職業決定画面で固まってしまっているのだ。


 といつものように接客をしている最中——


『レベルアップしました。コンビニバイトリーダーにクラスチェンジします』


 携帯からアナウンスが聞こえた気がした。そして翌日もバイト中に——


『レベルアップしました。コンビニ奴隷にクラスチェンジします』


 ……確かに聞こえた。聞き違いではなくて、俺の携帯からアナウンスが聞こえた。

 休憩時間に携帯を手に取りあのゲームアプリを開く。すると確かにコンビニ奴隷と表示されていた。

 はははっ、なんだよコンビニ奴隷って。

 そこで画面にまだ下があるのが分かり、下へとスクロールさせてみる。すると——



 藤堂 怜

 性別男

 年齢17

 レベル23(レベルアップ+1)

 HP :8/8(+1)

 MP :1/1

 筋力 :2

 持久 :5(+1)

 敏捷 :2

 器用 :2

 魔法力:0

 精神力:0

 耐性値:41(+2)

【ジョブ】コンビニ奴隷

 new【スキル】嫌よ嫌よも好きのうち

 効果、コンビニ店舗滞在時に経験値常時獲得

【スキル】長時間労働勤務、年中無休

 効果、物理耐性小、麻痺耐性小、毒耐性小、ウイルス耐性小

 new【スキル】接客のプロ

 効果、接客術小、記憶能力向上小、コミュニケーション能力小、クレーム耐性中、恐怖耐性中、危機感知中、敵意感知中

【スキル】掃除、商品管理、商品検品、廃棄管理

 効果、収納

【スキル】レジ業務全般

 効果、鑑定

 new【スキル】恵方巻き&クリスマスケーキのノルマの重圧

 効果、プレッシャー耐性小、精神汚染耐性小

【スキル】新人育成

 効果、パーティー育成補正小

【スキル】フライヤー調理、衛生資格

 効果、調理補正小

【スキル】急な呼び出し

 効果、ストレス耐性小、HP自動回復小



 なんだろう、正直意味が分からないけど少し面白いかも。

 とそこで、車のブレーキ音の後、ドガシャンと言う音と共に店舗が揺れる。


 どど、どうしたんだ!?

 急いで店内へ戻ると、突き刺さるようにして乗用車が店舗のガラスを突き破り商品をぶちまけていた。

 じじ、事故だ!

 怪我人は!?


 店内に倒れている人はいないが、乗用車を運転している人がハンドルに項垂れるようにして動かないでいる。

 そして助手席にもシートベルトをした髪の長い女性が、衝突のショックか動けないでいた。

 とっ、とにかく助けないと!


「大丈夫ですか? 運転手さん、大丈夫ですか? 」


「グゥガァー」


「う、うわぁー」


 両腕で肩を掴みかかられた。

 なっ、なんで!?

 そして揉み合いになりなんとか距離を取るべく突き飛ばしてみると、その反動で倒れた運転手が動かなくなる。

 恐る恐る近付いてみると——


 窓枠に残されていた鋭利なガラスが、仰向けに倒れる運転手の首元に突き刺さっていた。


『レベルアップしました。コンビニ戦士にクラスチェンジします』


 なにやらアナウンスが聞こえた気がするが、それどころではない。人を、人を殺してしまった。俺はこれからどうなるんだ?

 警察が来て牢屋に入れられてしまうのか?

 今までの経験が走馬灯のように流れ、頭をよぎっていく。


 そこで助手席にいた人が暴れ始める。同じく助けようとしたお客さんの一人が、腕を噛まれてしまった。

 そして少しの間を置き、そのお客さんが他のお客さんに向かって、掴みかかり噛みついてしまう。

 店内は大混乱、逃げ惑う人々。


 そして俺は、自身が起こした過ちが怖くて、その場から逃げ出していた。急いで自宅があるマンションに戻ると、自宅警備員をしている心愛に鍵を開けて貰い転がるようにして部屋へと入室する。


「お兄ちゃん、どうしたの? 」


「心愛! 」


 抱きしめていた、怖くて怖くて心愛の小さな身体を思いっきり抱きしめていた。そして程なくして頭を撫でられている事に気がつき、力が抜けていった。

 ……自首しなくちゃ


 それから震える手で百十番に電話するが、繋がらない。

 あれ、なんで?

 もう一度してみたが駄目だった。


「お兄ちゃん、もしかしてネットの噂が本当だったのかな? 」


「噂? 」


「うん、色んなところでファンタジーに出てくるゴブリンやオークに人々が襲われてるって」


「ゴブリンやオーク!? 」


「その対応で、警察は大忙しだって。あと外国では、拳銃が使い物にならなくなってるって噂や、海上に大陸が現れたって噂もあるよ」


 ……噂は噂だ。

 それより一人で警察署に行くのは怖い。心愛には申し訳ないけど付いて来て貰おう。

 そうして心愛にお願いをした俺は、力なく玄関を出るのであった。

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