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クールで辛口な女神さまは、やっぱり辛口がお好き  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!


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第13話「女神さまはみてる」

「ねぇ、田中くんの家ってあの田中カレーってマジ?」


 昼休み。

 今日も俺は健太と一緒に弁当を食べていると、突然三人の女子に話しかけられた。

 この三人と言えば、入学早々クラスでも中心になっている女子三人組で、三人とも見た目がギャルというか、我ながら表現が陳腐だと思うが陰か陽で言うなら圧倒的陽キャって感じの人達だ。


 だから当然、これまで同じクラスでもほぼ関りなんて無かった三人に、今日いきなりこうして話しかけられてしまったのである。



「ああ、うん。そうだよ」

「うっそ!?マジ!?私この間行ったんだけど、マジ美味しかった!」

「えー、私も行ってみたい!」

「えー、行こ行こ!ってか、同じクラスにいるとかちょっと感動するレベルみたいな」


 そうだと答えると、本当に嬉しそうに喜んでくれた。

 まぁ話しかけてきた時点で予想はついていたが、どうやらうちのカレーを食べてくれたようだ。


 美味しいカレー屋の息子が同じクラスにいて嬉しい――うん、これは完全に善意だろうし悪い気なんて全くしないな。

 というか、うちのカレーを褒めてくれてるんだしむしろ普通に嬉しい。


 三人とも見た目は派手目だけど可愛い子だし、そんな三人から好意的に話しかけて来てくれてるんだから全くもって素晴らしい状況だと思う。


 絶好の機会だと思ったのだろう、一緒に弁当を食べている健太は俺の事をちょっと羨ましそうにしながらも頑張って会話に加わって来ていた。


 でも、ちょっと今の状況を客観的に考えて見ると、以前の俺だったら確実にテンパっている場面だよな思う。

 ただでさえ女子への免疫の無い俺が、こんな眩しい女子三人にいきなり話しかけられたら挙動不審になっていたに決まっているからだ。


 じゃあ何故そこまで取り乱さないのかと言うと、他でもない。

 全部セレナのおかげだ。


 あんなクラスーーいや、学校でも一番の美少女とこれまで多くの時間を共有したのだ。

 おかげで、ちょっとやそっとの女子相手ならそれ程緊張しないでいられる自分がいたのである。



「ってか、田中くん話してみると印象違うね!結構面白いじゃん!」

「あ、それうちも思った!なんなら、入学当初より明るくなってない?」

「そ、そうかな?まぁ、明るくなったってのは、そうかもしれないね」


 セレナが俺を、変えてくれたから――。

 でもあまり褒められ慣れていない俺は、流石に少したじたじになってしまう。


 こうして、今度は三人一緒にまた食べに行くよと言って女子達は去って行った。

 急ではあったけど、これまで関りの無かったクラスメイトとまた新たな関わりを持てた事が俺は嬉しかった。


 ――セレナに感謝しないとだな


 そう思いつつ、そっと後ろの席を振り返る。

 そこには、いつも通り無表情で退屈そうにしながら、一人窓の外を眺める美少女の姿が――無かった。


 代わりに、目を細めながらこちらを睨むようにじっと見てきているセレナの姿があった。

 そんな初めての様子に驚いた俺は、何か悪い事でもしただろうかと思いつつ咄嗟に目をそらした。


 しかしそれからは何事も無く、昼休みは過ぎて行ったのであった。




 ◇




 そして放課後。


 俺は今日も部活へ向かう健太と別れつつ、帰宅するため教室を出る。

 セレナとは、教室ではお互い干渉しないようにしているし、何より昼休みの反応が気になった俺はセレナとはそれからも会話はしていない。


 それは、昼休みの反応だけが理由じゃない事は自分でも分かっている。

 今朝別々で教室へ戻った事が、やっぱり俺の心の中で小さなしこりになって残っているからだ。


 つまりそれは、自分と居る事よりも、セレナの中では平穏な生活の方がまだ勝っている証拠に他ならないから――。


 我ながら小さい話だと思う。

 それでも、だったらこんな俺が教室で話しかけたりしたら迷惑だよなと、ネガティブな感情が心の底から湧き上がって来てしまうのだ。


 ――これが所謂、女々しいってやつなのかな


 なんて事を考えながら、今日は一人大人しく下校する。

 帰り道、以前セレナに後ろをついて来られたよななんて事を思い出しながら、もしかしてと思い後ろを振り返る。

 しかしそこには、当然セレナの姿は無かった。


 そして帰宅した俺は、今日も店の手伝いをする。

 今日は月曜日だから、きっとセレナはうちにカレーを食べにきてくれるだろうと思っていたが、閉店までセレナが現れる事は無かった。

 そんなセレナに、親父も今日は必ず来るものだとばかり思っていたようで残念がっていた。


 一体どうしたんだろうと流石に気になってきた俺は、寝る前に連絡を取ってみようとスマホを手にする。

 しかし、現在メッセージはセレナからの返信待ちの状態であり、そこでまた俺からメッセージを送る事に少し抵抗があった。


 ――まぁ、あのセレナだしまた来てくれるだろう


 そう気を取り直した俺は、また明日教室へ行けば会えるしなと思いながら眠りについた。


 だが、この時の俺はまだこの事態の事の大きさを、全く理解できていなかったのであった。



マリみて風サブタイトルでした。

続きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっとした気持ちのすれ違い。 それだけならまだ良いのだけれど。
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