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クールで辛口な女神さまは、やっぱり辛口がお好き  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!


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第12話「女神さまは断りたい」

 月曜日がやってきた。


 登校のため、俺はいつも通り電車に揺られながら週末の事を思い出す。


 ――俺はあの、五条セレナと一日遊んだんだよな


 あの日の事をこうして思い出すのは、もう何度目か分からない。

 それでも俺は、思い出す度に何とも言えない感情に心を満たされるのであった。


 しかも今では、お互い名前で呼び合う程に距離が縮まっていることが俺は嬉しくて堪らなかった。

 人生でもここまで仲良くなる事が出来た女の子なんてセレナが初めてだし、しかもそんなセレナは誰しもが憧れる学校一の美少女なのだ。


 まさに、これなんてラブコメ状態だ。

 そんな、まるでラノベの世界にでも迷い込んでしまったかのような嘘みたいな現実に、俺は正直心が舞い踊っていた。


 ――早く、セレナに会いたいな


 なんて事を思ってしまう程度には、気が付くとすっかりセレナの事が気になる存在になっていた。

 我ながらちょろいと思うが、その反面これが普通だとも思う。

 だって、あんな美少女と仲良くなって、しかも家にまで上がっているのだ。

 そんな状況で、何も気持ちが動かない方が嘘だ。


 そして今日も自分の教室へとやってきた俺は、周りに目もくれず教室の一番奥の席へ視線を向ける。

 先に登校しているであろうセレナの姿をつい探してしまっていた。


 ――あれ、いない?


 しかし、教室にセレナの姿は無かった。

 机に鞄は下げられているため、既に登校してはいるようだ。

 まぁトイレかどっか行ってるんだろうなと思いながら、俺は自分の席についた。



「おはよ、聡」

「おう、おはよう健太」


 先に席についていた健太と挨拶を交わす。

 しかし、何やらニヤニヤしている健太の様子が気になった。



「ついさっきさ、一組の男子が教室来たんだよ」

「うん、それで?」

「この教室に用があるって言ったら、言わなくても分かるだろ?」

「あぁ、なるほど……」


 つまりは、その男子は朝からセレナに告白をしようという事だろう。

 まぁよくある事だし俺には関係の無い話なのだが、それでも何だか胸の中がモヤモヤとしてくる。



「結構イケメンだったけど、まぁ相手が悪いだろうなぁ……って聡?」

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるわ」

「おう、いっトイレ~」


 やっぱり気になった俺は、呼び出されたであろうセレナのあとを追うべくトイレへ行くフリして教室を出た。

 告白をするなら人気の無いところ――だとすると、この間セレナにテストを見せたあの角とかだろうか。

 そう考えた俺は、何の確証も無いがその角へ向かって歩き出した。


 正直行ってどうなるものでもないし、なんなら迷惑なのかもしれない。

 それでも俺は、セレナが誰かとくっつくかもしれないと思うと居ても立ってもいられなかった。

 その結末を一人教室で待っている事なんて出来なかった俺は、こうして駄目だと分かっていても確認せずにはいられなかった。


 そして、例の角へ近付くにつれて奥から声が聞こえてくる。



「良かったら、友達から仲良くなれないかな?」

「ごめんなさい」

「いや、そう言われるだろうとは思ってたけどさ、連絡先交換するぐらいダメ?」

「ダメです」

「そこをなんとか」

「――しつこい」


 食い下がる男と、完全に寄せ付けないセレナの声が聞こえてきた。

 どうやら今回も、持ち前の無関心からの塩対応で相手を全く寄せ付けていない事に安心する俺。



「待ってよ、俺もそう簡単には諦められないから。一目惚れしたんだ」

「知らないわよ。諦めて」

「ま、待てよ!」

「キャ――痛いわ、手を離してよ」

「待ってくれたら離すよ!」



「あ、いたいた五条さん、先生が呼んで――え、何?どうしたの?」



 何やらよくない方向に会話が進んでいる事を察した俺は、後先考えずにそう言って二人の間に割って入った。

 勿論、先生の話なんて嘘だ。



「あっ、聡くん――」

「な、なんでここが!ってか今、名前で――」


 突然現れた俺に驚く男と、ほっとしたような表情を浮かべるセレナ。



「何だかよく分からないけど、五条さん嫌がってるみたいだけど?」

「あ、いや、これは――すまん」


 そう言って男は、掴んでいたセレナの腕を離した。

 こうして無事解放されたセレナは、慌てて俺の後ろに回って隠れた。


 まぁ男も咄嗟の事だったっぽいし、とりあえずはこれにて一件落着だろうと思った俺は、そのままセレナを連れて行く事にした。



「とりあえず先生待たせてるから、早く行った方が良いと思うよ。君ももういいかな?」

「あ、ああ、すまなかった――」


 こうして無事に男からセレナを引き剥がす事に成功した俺は、二人で廊下を歩く。



「ありがとう、助かったよ」

「いや、まぁ変な会話が聞こえて来たからさ」

「じゃあやっぱり、先生ってのは嘘なんだ?」

「う、うん、ごめん」

「どうして謝るの?おかげで助かったんだもの、謝る必要なんてないわ」

「そ、そっか」

「でも、どうして聡くんはあそこにいたの?」


 不思議そうな表情を浮かべながら、セレナは聞いてくる。

 そんなのセレナの事が気になって見に行ったからだよなんて言えない俺は、答えに詰まってしまう。



「あー、その、なんて言うか」

「うふふ、まぁ、いいわ!そんな事より聡くん!」


 ニッと笑ったセレナは、そう言って俺の事をピッと指さした。



「五条さんじゃなくて、セレナって呼んでよね!」

「いや、あの場でそれは」

「分かってるわ!でも、二人の時は名前で宜しくね!」


 そう言って微笑むセレナの姿に、俺は一気に胸が高鳴り出した。



「じゃ、わたしは先にいくね!助かったよ!」


 そしてセレナは、楽しそうに教室へ向かって駆け出していった。


 別にこのまま一緒に教室へ向かっても良かったのだが、セレナはそれよりも互いの平穏の方を優先させている事が少しだけ寂しく感じられた。




気持ちを自覚した聡くんでした。続きます。

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