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クールで辛口な女神さまは、やっぱり辛口がお好き  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!


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第9話「女神さまは知りたい」

 昼の二時過ぎ。

 喫茶店を出た俺達は、そのまま一緒に電車に乗った。


 結局最寄り駅は同じなため、一緒の駅で降りるとそのまま目的地へと向かう。



「わたし、ここ好きよ!」


 そして目的地へ到着すると、五条さんは両手を広げながら微笑んだ。


 俺達がやってきたのは近所のスーパー。

 これから、今晩のカレー用の食材を一緒に買い物する事になったのである。



「それじゃ、行きましょ!」


 そう言ってワクワクした面持ちでスーパーへと入って行く五条さんに続いて、俺も買い物カゴを片手にスーパーへと入った。




 ◇




「ねぇ見て田中くん、この大根変な形してるわ!きっとひねくれ者なのね!」


 まずは野菜コーナー。

 カレーに必要な根菜類を見ようと思ったのだが、五条さんは変な形をした大根を手にして笑っていた。

 俺はいつもスーパー=必要なものをただ買い物する場所だと思っていたのだが、今日はこうして目に入るものを楽しそうに見物する五条さんと一緒にじっくり野菜コーナーを見て回る。


 確かに、大根は変な形をしていて少し笑えたし、こうして五条さんに並んでじっくりと野菜を見て回っていると、見た事の無い野菜や他にも美味しそうな野菜が並べられている事に気が付いた。


 だがそれにしても、野菜を見ているだけでこれ程楽しそうにする五条さんは、やっぱり変わった子だった。

 それは別に悪い意味ではなく、目に入るもの一つ一つが新鮮といった感じで、こうしてただ地元のスーパーにいるだけでも楽しめてしまうのは最早一種の才能――いや、それだけ純粋って事なのだろう。



「田中くん、カレーにはどのジャガイモがいいのかしら?」

「んー、どれを使ってもそれぞれ美味しいけど、スパイスカレーにはメークインの方がいいかな」

「そうなんだ、どうして?」

「煮崩れしにくいんだよ。対してこの男爵なんかは煮崩れしやすいからカレーに溶け込みやすいんだ。まぁそれはそれで味がまろやかになって美味しいんだけど、スパイスの風味を活かす意味でうちではメークインを使ってるよ」


 そう俺が説明すると、五条さんは顎に手を当てながら「成る程成る程」と楽しそうに頷いていた。

 そして五条さんは何か思いついたような表情を浮かべながら、何故かメークインではなく男爵の方を手にした。



「じゃあ、今日はこっちを使いましょう!」

「え、今の話聞いてた?」

「勿論!こっちを使ったらどんな味になるのか、興味があるわ!」


 だからお願いと男爵を差し出してくる五条さん。

 これがバレンタインのチョコレートとかだったら嬉しいのだが、残念ながら差し出してきたのはチョコレートではなくジャガイモだった。



「――まぁ、そう言うなら」


 まぁ別に男爵でもカレーは作れるし、確かに普段はメークイン一択だった俺は男爵を使ったカレーも久々に食べてみたくなってきた。

 こうして五条さんは、カレー作りにも新しい視点を与えてくれるのであった。


 それから必要な野菜を買い物カゴに入れた俺は、次は精肉コーナーへと向かった。

 まぁ肉の種類については本当にどれでも良いのだが、せっかくだからここはさっきのジャガイモと同じく五条さんに選んで貰う事にした。



「チキン……いや、ポークも捨てがたいような……でもビーフって食べた事あったかしら……悩ましいわね……」


 すると五条さんは、さっきのジャガイモの決定力が嘘のようにどの肉を選んだらいいか悩みだしてしまった。

 だから、まさかここでこんなにも悩むとは思っていなかった俺は助け舟を出す事にした。



「じゃあ、その三種類の中では一番高いけどさ、ビーフにしてみない?」

「どうして?」

「うちでビーフは扱ってないからさ。男爵にビーフ、どんな味になるか、ちょっと楽しみじゃない?」


 どうかな?と俺が提案すると、五条さんはぱぁっと満面の笑みを浮かべる。



「今日しか食べられない田中カレーってわけね!それは素敵だわ!」


 そう言って喜ぶ五条さんは、そのまま俺の提案通りカレー用の牛肉を手にしてカゴに入れてきた。

 その表情は本当に楽しそうで、見ているこっちまで楽しくなってくる。

 本当にただスーパーで買い物しているだけだというのに、側に五条さんがいるだけでこんなにも景色が変わって見えてくるのであった。


 こうして必要な食材を全て取りそろえた俺達は、あとはレジで精算するだけだというところで、五条さんは最後に見たいところがあると言ってその目的地へと向かって歩きだした。



「やっぱり、食後のおやつはマストよね」


 そこは、お菓子コーナーだった。

 棚に並べられたお菓子を楽しそうに眺める五条さんは、完全に子供に見えた。



「お菓子、好きなんだ」

「うん!色んなパッケージがあって、これはどんな味なんだろうとか考えるだけでワクワクしてくるの!」

「そっか」


 うん、やっぱり完全に子供のそれだった。

 だからここは、思う存分食べたいお菓子を選ぶのを待ってあげようと思う。


 隣でそんな五条さんの姿を見ていると、俺も小さい頃は同じだったよなと昔の記憶というか感覚が蘇ってきた。

 思えば、いつから俺は今の五条さんみたいにお菓子を見てワクワクしなくなったんだろうか。

 別に嫌いになったわけではないのだが、いつしかお菓子自体あまり食べなくなっていた。

 高校生なんてまだまだ子供だと思っていたが、俺も大人の階段を登ってるって事なのだろうか。



「決めた!これにするわっ!」


 そんな事を考えていると、五条さんはお菓子を一つ手にして掲げた。



「ビスケット?」

「ええ、クマさんビスケット!これは甘いのかしら、それともしょっぱいのかしら!気になるわ!」


 それはクマの顔を形をしたビスケットで、確かにパッケージからは甘いのかしょっぱいのかはいまいち判断が付かなかった。



「成分表示見たら分かるんじゃ」

「ダメよ田中くん、それじゃロマンに欠けるわ」

「ロマン?」

「ええ、味を予想して合っていたら大正解!ハズレていたらコンチクショーよ!」

「――そっか」


 お菓子の味でギャンブルを楽しもうとする五条さん。

 それがロマンなのかどうかは正直よく分からないが、五条さんが楽しそうだから良しとした。


 こうして、クマさんビスケットもカゴに入れると俺達はレジへと向かい精算を済ませた。

 そしてスーパーを出ると、そのまま一緒に五条さんの家へと向かう。



「持って貰っちゃってごめんね!」

「いや、いいよこれぐらい」

「でもこうしてると、なんだか夫婦みたいね!」

「ふ、夫婦!?」


 突然の爆弾発言に取り乱す俺。

 五条さんは、そんな取り乱す俺を見て「冗談だよ♪」と笑った。


 こうして五条さんの一言により、俺はようやく今の状況の異常性に気が付いた。

 ただ映画を観に行くだけのはずだったのに、これからまた五条さんの家へと上がろうとしている事に今更になって戸惑う自分がいるのであった。



スーパーへ行くだけでも、楽しそうな五条さんでした。


続きます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 買い物して。まったりとおうちデート。 すっかり身内。
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