九話 誓い
『クレアーナ嬢、一緒にダンスを踊ってくれないか?』
攻略対象の一人の、ショール・ジェットが笑いかけてくる。
ショールか、このキャラも人気が高かったな~。真っ黒の肩まであるストレートの髪に髪と同色の少し吊り上がった、形のいい目。それに何と言っても、攻略対象の中で一番背が高くて、美しい。ゲームでも、お色気キャラだったし。
そういえば、このシーン、舞踏会のスチルだ。この時踊った、攻略対象のルートに入るんだよね。
『はい、喜んで。』
ちょっと、私の意志と関係なく、動いてるんだけど。え?勝手に進んでいくの?
二人はとても甘い雰囲気で、大広間の中心に向かっていく、
『お待ちください。』
後ろから声がした。
二人は、立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
『ジェット様、パーティーで一番初めに踊るのは婚約者です。』
と、一人のご令嬢が言った…。
え!ちょっと待って!なんでここにルチルがいるの!?
『フローライト嬢、そんな昔のしきたりを守らなくてもいいんだぞ。』
『昔のしきたりではありません。常識です。クレアーナ様、この国の姫ともあろうお方が知らないはずないですよね?』
ええ、知ってますよ。ルチルはちゃんと二人が恥をかかないように注意してるのね優しい。
『え、そんなぁ、私ぃ、そんなつもりじゃなくてぇ。』
うわぁ、クレアーナの喋り方気持ち悪いな。
クレアーナは目に涙を浮かべて、上目遣いでショールの方を向いた。
『フローライト嬢、そんなにきつく言うことないじゃないか。』
え、ちょっと何言ってるか、わかんないです。
『そーですよー!』
ちょ、クレアーナは一回黙ろうか。
『フローライト嬢、俺の婚約者で居たいなら、俺たちに口出しするな。』
うわっ、今の聞きました?これはもう脅しですよ。っていうか婚約者だったんだ。じゃあ、ルチルはライバル令嬢なんだ。
『っ、……分かり…ました…。』
あー、ルチル可哀想。
『ショールさまぁ、こわかったですぅ。』
お前のが怖いわ。
『そうか、怖がらせて悪かったな。』
ショール、ルチルを悲しませたこと、いつか後悔させてやる。
そして二人は、そのまま大広間の中央で幸せそうに、ダンスを踊っていた。
… … …
「姫様、姫様、朝ですよ、起きてください。」
「うーーーんーーー」
「姫様、今日はお寝坊さんですね。」
レイラが少し微笑みながら言った。
「え、あら。夢?」
「姫様、悪い夢だったのですか?」
「いいえ、戒めよ。」
クレアーナはまだ眠い目を擦りながら、夢で良かったと安堵した。
そして、絶対にルチルを幸せにすると心に誓ったのだった。
読んでいただきありがとうございます。
やっと、話が動き出しそうです。