三話 ファント・アルロ
「お嬢様、お嬢様、起きてください。」
ゆっくりと瞼を開くと、アルロとお父様が私をのぞき込んでいる。
「クレアーナすまない、怒ってしまって悪かったな。」
あら、なぜお父様は謝っているのかしら?
「学園に通うかどうかはクレアーナの好きにしていいぞ。」
ああ、そのことでしたの。
「お父様、お父様はどちらのほうが良いですか?」
学園がゲームの舞台だから行きたい気持ちはあるけれど、今はお父様やお母様のほうが大切だわ。
お父様が行ってほしくないようなら私は行きたくないし、行ってほしいようなら行くけれど。
「そうだな。親心としては少し心配だが、この国の王としては行ってもらいたい。」
そうか、いつか私はどこかに嫁ぐのだから、人脈はあったほうがいいのよね。
それに心配なのはきっといつも私が無茶ばかりしているからかしら。じゃあ、
「わかりましたお父様。私、学園に行きます。」
学園にはゲームがある。
私は早く婚約者を見つけたいけれど、確か攻略対象たちには婚約者がいたような…。
それも全員。そこで私はふと思った。
この世界はゲームじゃない、私にとっても攻略者とその婚約者にとっても、この世界は現実なんだ。
だから私は攻略しない。攻略者と婚約者が幸せになれるように、手助けしよう。
そう、心に決めた。
「そうか、分かった。来月から通えるように手配しておく。」
「はい、お父様。」
ファーナリア学園。
ファーナリア国で最大の学園、もちろんとても広く庶民棟、商人棟、騎士棟、そして貴族棟。
他にもあるが、大きく分けて四つある。
もちろん私は貴族棟に通う。
お父様が部屋から出て行ったのを確認してソファーに寝っ転がる。
「あー疲れたー」
「お嬢、本当に行くのですか?」
アルロが紅茶を入れながら聞いてくる。
「ええ、女に二言はないのよ。」
「そうですか。では私もお供します。」
えっ
「アルロもファーナリア学園通うの?。」
なんで?
「いえ、私は姫の従者兼護衛としてお嬢についていきます。」
「でも…」
言いながらアルロの頭に目を向けた。そこには相変わらず二本の白い角がどっしりと構えている。
アルロは私が言おうとすることが分かったのか、
「ああ、角ですか。角なら取れますよ。」
とははっと笑いながら言った。
「え!角って取れるの!?」
流石に角が取れるのは私も初めて知った驚きだわ…。
「正確には取るのではなく外す、ですけどね。」
取るも外すもあんまり変わらないじゃない。
「取って大丈夫なの?」
「はい、全然平気です。でも、角を外すと身体能力が人間並みに下がりますし、それに髪と目の色も変わってしまいます。」
「見たい!」
反射的に答えてしまった。
「なぜですか?」
そんなの面白そうだからに決まっているじゃない。
「特に理由なんてないわ。それとも見せられない理由でもあるの?」
「いえ、別に。」
よし!やったわ!
「ですがお嬢、笑わないでくださいね。」
真面目な顔でそう言うと、深呼吸をしてなにやらブツブツとつぶやくと角を掴んだ。
そのままゆっくりと角を上に動かしていくと角が頭から離れていく。
そのままじっと見つめていると、徐々に角のあった場所から髪の色が変化していく。漆黒から見事な金髪へと、そして髪の色がすべて変わると、目も段々と色が変化していき赤かった瞳がまるで嘘のように透き通るような青へと変わった。
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