星に願いを 〜ONE DAY HOPE〜
こんにちは!
今回はけっこう自信があります!!
ぜひ楽しんでください!
「行ってきます」
「「――行ってらっしゃい」」
そんな母の送りの言葉を背に私は学校へ向かう。
パンを咥えて、可愛い下着も穿いて青春を迎える準備は満タンだ。
(さて…走りますか…)
遅刻ギリギリでもないのに全力で走り出そうとする理由。 それは曲がり角でのごっつんこ。そんなフラグを立たせるためのイベントを起こすためだ。
二年生三学期もそろそろ終わりを迎える頃。なぜ急にこんなことをしようとしたのか。 それは昨日見た漫画が原因である。
この少女は純粋であり、ラブコメみたいな展開が本当に起こると信じているのだ。
「よし…行こう…! とその前に鍵を締めないと…」
「何も起こらなかった…」
「そりゃあそうでしょうね」
友人は冷めた目で涙目の私を見下ろしている。
「漫画みたいなことは現実で起こらないの…?」
おどおどと聞いてみる私に友人はバシッと言った。
「起こらない……って泣くなよ!」
純粋無垢な乙女は現実を突きつけられてしまうと泣いてしまうほど涙腺が緩く、心は水に濡れただけで溶けてしまうそれはまるで筆先から落ちた絵の具が水に溶けるよう。
「――あーあ。 あそこの角でかっこいい男性が飛び出してきてこないかな〜」
一人の下校中。 人目をはばからず、私はそんな事を星にでも届けるかのように大きな声で言ってみた。
「ラブコメはないのか…なぁぁい!?」
「うわっ!?」
ラブコメの起こりそうな角を通過しようとしたその時、私の右半身にはとてつもない痛みと衝撃を感じた。
「痛った〜…」
私はなにがなんだか分からない状態でいた。でも、私の前にはイケメンが居たのだ。
(…ラブコメ!?)
私の脳内にはその単語がすぐに浮かび上がった。
そして私は男の顔を確認しようと顔を上げてみると、男は何故か目を大きく見開いて下の方を向いて顔を赤らめていた。
目線のさきに何があるのだろうと私もつられて見る。
意識ははっきりとしていなくて気付かなかったが、少女は足を大きく広げ、スカートの中の楽園が公開されていたのだ。
「…!!」
急に恥ずかしくなって私は足を閉じてスカートで下着をばっと隠す。
「「……」」
それから二人の静かな時間は流れる。何を話そうか考えていると、少女の頭には一つの妄想が浮かんだ。
(こんなイケメンの連絡先とか知れたらな〜…)
そんな急展開がありえるわけないと自分で思ったことについ笑ってしまう。
「あ…あの…良ければこれを…」
突如にして話しかけてきたイケメンは何かの紙を渡してきた。
「…で、では!」
「え…待っ…」
静止を呼びかけようとするもイケメンはどこかにへと走り去ってしまった。
(私の青春が逃げた…)
そう思いながら受け取った紙を開いて見ている。そして少女の目に飛び込んできたのは…
「連絡先…!?」
叶うはずもなかった妄想だったものが現実になったのだ。
――イケメンの連絡先を知れてウキウキしながらスキップ気味に帰宅していると、ふと、反対車線に幼稚園からの帰宅途中らしい母親と娘の親子が目に映った。
その楽しそうに話す様子に私も幼き頃の母との思い出が蘇ってきた。
お母さんとはよく保育園の帰りに夕飯のメニューについて語り合ったものだ。
家の前にたどり着くと私は扉の鍵を開いた。
「おかえり…。 ミズキ。 今晩はハンバーグよ」
「おかあさん…!!」
私はその場に鞄を落として、流れ出す涙を拭うこともせず、真っ直ぐお母さんに抱きついた。
お母さんの大人の胸の膨らみに深い安心を覚えた。
「ただいま…お母さん…」
翌朝、私は母親の仏壇に手を合わし、いつものように学校へ向かう支度をする。
そして、
「行ってきます」私は扉を閉めそして、鍵もきっちりかけた後、通学路へと足を踏み出した。
「「ーー行ってらっしゃい。」」
後日談。 なお昨日、イケメンから貰った紙に書いてあった連絡先は現在使われておりませんとのことだった。
私は本屋に立ち寄り、とある一冊の本を手に取る。
「星に願いを 〜ONE DAY HOPE〜」
読んでくださりありがとうございます!
これからも頑張っていきます!!