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勇者、魔力を感じる。






「…起きたか。」



シンが階段から降りてきたミカエラを見てそう呟く。

あの日以来、ミカエラは、時間通りに自分で起きていた。



「…おはよ。シン君。」



眠そうに目をこすりながら食事が並べられたテーブルに向かってイスに座る。



「あぁ。…準備が出来たら地下に降りてこい。」



素っ気ない返事とともにシンは地下へと降りていった。

ミカエラは、急いで食べ、顔などを洗ってから、シンのいる地下へ降りていった。



横に二人分くらいある廊下を歩く。廊下は一本道であり、階段から三番目の扉以外は開けるな。とシンから言われているのでミカエラはなにがあるかはわからない。



階段から三番目の扉を開けると、縦横10メートルの正方形の部屋がある。その中央には、白い輪っかみたいのが50センチくらいの高さで浮いており、輪っかの中は白い空間がどこまでも広がっている。



この輪っかはシンの究極魔法《空間魔法》によって生み出された、全く別の空間へつながる出入り口なのだ。



「来たか。今日は、今までと違い魔力操作の訓練をしてもらう。」



輪っかをくぐって出てきた空間は、どこまでも白

く、終わりが見えない広さだった。シンはここを訓練所と呼んでいる。シンが作る空間では、想像したものを何でも創り出すことができ、死ぬことはない。死ぬくらいの攻撃を受けても、ギリギリで踏みとどまり強制的に空間の外へ放り出される。シン自身は、空間の中で自分の好きなように出来るのだ。



「魔力って操ることなんて出来るの?」



「あぁ、出来る。魔力ってのは常に体内の外へ出てるんだ。この体内にある魔力を外に出さないように全身に循環させる。そうすることで、魔力が筋肉、骨などに馴染みより、魔力が通りやすくなる。そのせいで、魔法の発動時間が短縮出来たり、身体能力も上がる。」



魔力を操れるなんて知っている者は少ない。

理由は、二つ。

一つは、魔力を操れる行為は何十年の年月を用いる。そのせいもあって魔力を操るよりも、何十年基礎を鍛えた方が強くなれると信じていたからだ。

二つは、魔力を操れる行為は、自身の身体に負担がかかり過ぎる。下手すれば死ぬこともあるのだ。

この二つの理由があることで、魔力操作は、禁忌的な事にされ知るものは、少ない。



しかし、シンはこの魔力操作を長くても1ヶ月で出来ることを知っているのだ。

魔力操作ができるようになるまで何十年も掛かるのは当たり前なのだ。知識なくてできるはずがない。何事にも手順があるのだ。



「へぇ〜。でも操れるなんて言われても、魔力なんて感じないよ?見えないし触らないものをどうやって操るの?」



疑問に思うのも仕方ない。この世界での魔力は、空気的なものとして扱われている。見えないし触らないそんなあることすらわからないものを操るなんて言われても、分かるはずがない。



「確かに魔力は、見ることも触ることも出来ない。だけど、感じることは出来る。心を落ち着かせ、深く集中しろ。」



「…わかった。やってみる。」



呼吸を整える

邪魔な雑念をけす。

無駄な感覚を遮断する。目を閉じ、口で呼吸をし、深く集中をする。

真っ暗な闇の中、風が吹いた。

しかし、ここは真っ白な何もない空間。風など吹くはずがない。

風に意識を向ける。



「…っ…」



紫の渦に呑まれそうになり、つい声を出す。

それと同時に、何も感じなくなっていた。目を開けば、真っ白な空間と、シンがいた。



「それが、魔力を感じることだ。下手をすれば、魔力に呑まれ死ぬことになる。気をつけろ。」



「…これが、魔力…操れる気が…しない…」



圧倒的な力に、腰を抜かすミカエラ。



「大丈夫だ。手順さえ間違えなければ、死ぬことはない。恐れることもない。」



「…そうだね。頑張って魔力を操れるようになるよ!」



ほっぺを両手で叩きやる気をだす。



「この調子でどんどんやろう。と言いたいところだが、今日は、魔力操作の訓練は終わりだ。次は、模擬戦をする。」



「…え?なんで?」



せっかくコツを掴みそうなのに、これで終わりだというシンに理解が追いつかない。



「魔力操作だけに全力注いでどうする。技術はな、毎日やらないで疎かにするとあっという間に鈍っちまうんだよ。」



「…うぅ。…わかった。ルールは、昨日と同じ?」



ミカエラは、模擬戦用の木刀をもち、シンから数歩離れ、構える。

ミカエラの構えは、木刀を顔の横に置き、脇をしめ、剣先は、相手に向ける攻撃型である。



「あぁ、制限時間は10分、俺は、攻撃禁止。俺に攻撃を一撃でも入れたらお前の勝ち。俺が耐えたら俺の勝ちだ。」



シンも、模擬戦用の木刀をもつ。

シンの構えは、木刀を、右手で身体の中央に上へ真っ直ぐもち、脇をしめる防御型である。



開始の合図と共に、ミカエラが踏み込み、真っ直ぐ速度に乗せてシンへ突きを放つ。

シンは、ミカエラの木刀が届く前にミカエラの木刀の腹を、シンの木刀で押し込む。

ミカエラの木刀が右に逸れる。

ミカエラは、体勢を崩し無理矢理右へ大きく回避する。

ミカエラは、シンの背後を狙い縦へ斬りつける。

しかし、シンは後ろを振り返ることなく、木刀で受け流す。

いくら、ミカエラが攻撃を仕掛けようとも、全て、木刀のみで受け流され、10分が経過した。



「…ハァハァ……ハァ…つよ、すぎる…」



模擬戦が終わると同時に大の字になり倒れるミカエラ。



「まだまだ、弱いな。筋がブレてるし、俺が攻撃しないことをいいことに防御を考えてない。それに加え、直線的な攻撃ばっかだ。全然ダメだ。」



褒めれば伸びるなんて言葉があるが、それは間違えだ。褒めて生まれるのはやる気だけ。褒めることによって伸びはしない。それに、やる気がないならやらなければいい。とシンは考えている。

それに、シンは合理的主義者だ。まず、何が正しいかではなく、何が効率いいかを考え、行動に移す。そんな彼にとって、感情はコントールするべきもので出来なければ邪魔でしかない。



「だが…成長はしている。」



これは、褒めているわけではない。事実を伝えているのだ。最初の頃は、400回は殺せたのに、いまは、48回しか、殺せないのだ。驚くべき成長スピードである。



「…先に、戻っている。昼食までには戻ってこいよ。」



シンは、そのまま、階段を上っていった。

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