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今日思ったこと

作者: 卯侑

生理について語っていますのでご注意ください

朝、目が覚めて言いようのない気持ち悪さを抱えていた。

生理2日目、お腹痛いし気持ち悪い。加えてイライラする。

大学への登校時間が迫っていることに気が付きながらも布団から抜け出せずうだうだとする。


生理、月経、女の子の日、言い方は色々あれど、私にとってはただ体内から血がドバドバと出ていく日である。

生理痛が辛い人、辛くない人、様々いるが女性通しでも一概にこうと言えないこの現象。症状も様々で気絶するほど痛い人もいれば全く気にならない痛くない、という人もいる。

私にとっての痛みレベルは私にしか分からないし他の人の痛みは私には分からない。

病院に行くレベルの痛みではない。本当にベッドとお友達にならざる得ない人と比べれば申し訳ないぐらいだが、私にとってはつらいのだ。分かれとは誰にも言う気が起きない。

ただ、大丈夫かと心配してもらうだけでヒロイン願望はおさまる割と簡単な自分である。


そういえば、食生活を改善すれば痛さが改善される!と、力説している人をたまに見るが、ほぼ同じ食生活をしている妹には生理痛が無いのだが一体どういうことか。

全く、小学四年の冬からの付き合いである生理痛にサヨナラを告げられるのはいつになるのだろう。


うん、いい加減ベッドから出よう


声に出せただけで随分マシだ。のそのそとベッドから出て、もそもそと着替える。

家族に挨拶をして顔を洗って食事をして、毎日していることの繰り返しをしながら……ついでに痛み止めを流し込んで、また洗面所に向かう。メイクをするためだ。

私にとってメイクとは武装だ。

高校を出てからメイクをしている顔が私の表の顔になった。外出時はメイクをしないと落ち着かない。自分を守る仮面が剥がされたようで。

別にメイクをしていない人を否定する気は毛頭ない。

マナーだ、ルールだと叫ぶつもりもない。


ただ、覆い隠す何かが無いと落ち着かないだけ


でも、今日は別だった。周期がズレて二月振りだからか、気分が悪い。まあ、多分寝不足もあるけれど。洗い物をしていたら1時を回っていたから寝たのは2時近くか。

何が言いたいかと言うと顔に何も塗りたくない。

大学にはノーメイクで通ったことがなかった。

どんなに遅刻しそうでも、武装を解く勇気がなかったからだ。


でも、仕方ないか


久しぶりに素肌を外気に晒しながら外を歩けば皮膚呼吸をしている気分になった。

電車に乗りこみ鬱々とした気分で立ち続ける。

運良く座れた。腕の間に顔を埋めればほっとする。

メイクをしていないから出来ることだ。

メイクをしていたら化粧の粉が服につく。


高校生の時は何も考えずにできていたことなのに


それは、抱きつく、ということにも共通していた。

私は高校生の時まで、よく友達に抱きついていた。

後ろからでも、前からでも、比較的背が低い私は相手の体に顔をすり寄せることが出来た。保護者に懐く幼子のように。

抱きつけるレベルの友達は大変落ち着く匂いをしていた。

不自然でない程度に吸い込むと嫌なことが消える感じがする。

麻薬みたいな。


メイクをしてから、していない


その友人達には今でも定期的に会っている。

抱きつきもする。

ただ、顔を寄せられないだけ。


それが少しストレスになっているのを感じてはいた。

まあ、どうしようもない。

幼子の振りをできる年頃ではなくなったのだ。


大学の友達に一線を引いてしまうのはこれのせいか


相手のパーソナルスペースにずかずかと入り込むことができるか、それはいじめられた経験のある私にとって、相手に自分を預けられるかどうかの判定になるらしいと気がついた。

なるほど、なんとなく持つ片想い相手にひっつきたくなる衝動はここからか。

まあ、現代日本じゃ恋仲でもない男女が身を寄せることなんてないけれど。


電車を降りて学校に向かって歩く。

不安や吐き気を堪えて唇を噛み締めるとぴりっと切れた。

後で、せめて、リップクリームは塗らねばならない。痛い。


信号待ち、ぼんやりとお店のガラス戸に映る自分をみて、ぎょっとする。

顔が死んでいる。

ああ、メイクをしていない私の顔はこんなだったか。

目は細く、顔に華やかな色がない。見ていられない。

やっぱり、武装は必要だ。

せめてマスクをするべきだった。


この顔できらきらとした同級生達の中に入るのかと思うと気分の悪さが増す。

深く息を吐いて自分を奮い立たせた。

頭皮が引っ張られると頭痛がするので髪をまとめることもせず、服を選ぶ余裕が無いのでニットにジーンズにコート。

せめて前日にバイトがない時だけの楽しみであるネイルをすれば良かったか。

嫌、匂いが気持ち悪い。それに顔と服装と爪がチグハグになってしまう。これでいいのだ。


今日はせいぜい悲劇のヒロインの振りをしよう。

腹の痛みを貧乏揺すりで誤魔化して近くに見えてきた大学の校舎をじっとにらみつけた。

今日は課題を終わらせなければ帰れない。

全く、タイミングが悪い。


今度友達と泊まりで出かけることがあったら素顔で擦り寄ってみようか、なんて謎の決心をした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] そういう時、ありますよね。わかります。辛い時は無理をせず、休むべき時だと思って適度に休んでくださいね。
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