真殿様と美少女有栖の花嫁計画 その3
翌日、まだ眠たい目を擦りながら僕は学校へと登校していた。
校門辺りまで来ると、生徒たちがざわざわと野次馬のように集まっていた。
どうしたんだろう?何か有名人でも来てるのかな?
生徒たちの波をかき分け、注目されているであろう中心地へとたどり着く。
そこには、赤い花束を抱えた真殿様が瀬戸内先輩にそれを渡しているところだった。
あの人は何しているんだ!?
「瀬戸内有栖、お前が俺の部活動へ参加した記念だ、受け取れ。」
「えっ、いいの!?本当に!?嬉しいです!!」
瀬戸内先輩は周りの目など気にもしていない、いや、真殿先輩が持っている赤い花束に注視するあまり、周りが見えていないようだった。
そこで朝礼開始を知らせる予鈴がなり、野次馬になっていた他生徒達はすぐさま教室を目指しているようだった。
瀬戸内先輩も、真殿先輩に一礼し、自分の教室へと向かった後、僕はそっと真殿先輩へと近寄る。
「真殿先輩、おはようございます。瀬戸内先輩に何を渡したんですか?ぱっと見赤い花のようでしたけど・・・」
「野いちごの花だが?」
「あぁ、確かに小さくて可愛いですからねぇ。女の子は好きでしょう」
少し間を置いた後、そうだな、と呟いてるのを聞き流しながら、僕たちもそれぞれの教室へと急いだ。
お昼休み、教室に友達のいない僕は中庭の方へと足を向けた。
今日は真殿様にも呼び出しを受けていないし、ゆっくりとお昼ご飯を食べれる。ベンチに腰をかけ、1人でのんびりしていると
「あっ、こんにちは♪えっと・・・真殿くんと一緒にいた1年生の子だよね?」
不意に、聞こえた鈴のような声に振り向く。瀬戸内先輩だ。
「あっ、そうです。赤穂忍です。」
「遅くなったけど、3年の瀬戸内有栖です。よろしくね、赤穂くん。隣いい?」
はい、と返事を返した後瀬戸内先輩は僕の隣に腰をかけた。
「お前たち、早かったな。」
「お二人さんお待たせ〜やな」
えっ、ここ3人の待ち合わせ場所にでもなってたわけ?
「じゃ、じゃあ僕はこのあたりで失礼「忍、お前はどこへ行こうとしているんだ?」
「今日は有栖ちゃんの歓迎会と、僕たちの親睦でも深めようや〜って話にさっきなったんよ〜」
「先に赤穂くんが行ってるから合流して待ってて、って言われてたんだ」
なんで僕の行動が読まれてるんだ。僕は一言たりともその話を聞いていないのだけど。
呆気にとられている僕をよそに、真殿先輩は瀬戸内先輩の隣に座り、加藤先輩はベンチの後ろ側に回った。
「とりあえず、かんぱーい。」
『かんぱーい』
加藤先輩が持ってきたジュース(真殿様が小銭をお持ちではなかったので、加藤先輩のおごり)で交わす。
「そういえば、この部活はどんな活動予定なのかな?」
あっ、そうか。瀬戸内先輩にはまだ説明していなかったっけ。この、部活(仮)の事を。
「ん〜、平たく言わせてもらうと真殿くんの、花嫁さん見つけて、囲って、わいわいする部〜、みたいな感じなんやろか?」
なんか、あんたが言うといかがわしく聞こえるのだけど。
「俺は、この高校生活の間で自身が理想とする花嫁を見つけ出すことが最大の目標であり、この部はその一歩にすぎん。」
「真殿先輩が一声かければ大抵の女性は寄ってきそうなんですが、どんな女性が好みなんですか?」
そう、早いところその理想の人を探して欲しいんだ、僕は。
真殿先輩は軽く額に手を当て、傲慢そうな顔の眉間にシワが寄る。
「私利私欲で、傲慢な女は嫌いだ。それは、分かるのだが・・・いざ理想の女性を聞かれると、返答できないんだ」
「は、はぁぁぁっ!?あんだけ全校生徒の前で啖呵切ってたわりに何にも考えてないわけですかあんたは!!」
成る程、めんどくさい。この人やっぱり超めんどくさいよ・・・
真殿様と話している時に、瀬戸内先輩が少し悲痛そうな顔をしていたのを、僕たち2人は気がつかなかった。