真殿様と最後の勧誘計画 その3
「神楽坂 雪代。国立病院機構の理事長の息子さんで、小中高と成績優秀で、大学も国立の医学部に進学予定らしいで?性格は、まぁ周りからの印象や評価も僕たちが知るまんまやなぁ。流石に、こないだ見た神楽坂くんの事は知らなさそうみたいやな。」
翌日の昼休みに、いつもの場所で6人が集まり、加藤先輩が集めた情報を聞いていた。
なるほど、あの人医者の息子なのか。少し、納得した。
「なるほど、あの病院の息子か。それであれ程肝が座っていたのか。」
「わたくしの方は、申請書を先生方から受け取っておりますので部員が揃い次第すぐに提出できるようにしております。」
「よし、明日香。お前は忍の方へ手伝いに回ってくれ。」
真殿先輩は、蘇芳先輩から申請書を受け取ると、満足げに微笑む。
この部が本格的に起動できるまであと少し。
「有栖、忍の方はどうだった?」
「う〜ん、私を警戒してるのか今日は授業が始まるギリギリでしか教室に戻ってこなかったよ。だから、あんまり話しをすることができなかったよ、ごめんね・・・」
「そうか・・・神楽坂 雪代が有栖に弱そうだからといっても、そう簡単にはいかないか。」
「僕の方も期待しないでくださいね。と言うか、朝から今の時間まで神楽坂先輩と会ってないですし。」
そう、朝校門前で頭髪服装検査をしている神楽坂先輩にバッタリと遭遇し、ここで避けるわけにも行かないなと思った僕は神楽坂先輩へ近寄って行ったが・・・
「僕の姿を見るなり、神楽坂先輩脱兎のごとくその場からいなくなりました。」
あんまり接点ないけど、あぁまで露骨に避けられるとさすがに傷付く。
「ふむ・・・神楽坂 雪代が設けた時間まで俺たちと接するのを極力避けようとしているのか?なら、こちらから積極的に行くしかないな。」
真殿先輩は何処からか紙とペンを取り出すと、何かを書き出し封筒に入れ瀬戸内先輩へと渡す。
「えっ、あの、王手、くん??」
その差し出された手紙と真殿先輩を交互に見つめ、顔を赤らめる。少し戸惑ったようにワタワタしている姿は、まるで小動物のようだった。
「これを、神楽坂 雪代の靴箱に入れてくれ。」
「ふぇい??」
「放課後、屋上へ来るように書いてある。」
がっくしと肩を落としながら、その手紙を受け取る。
うん、うん、と唸りながら手紙を受け取る瀬戸内先輩は少し可哀想だった。この人、本当に人の心を弄ぶのが好きだなぁ・・・最低。
瀬戸内先輩は落ち込んだまま、おそらく靴箱へと向かって行った。
瀬戸内先輩が抜けたことにより、そのままお昼は解散となり、放課後は全員屋上へ来るようにと指示される。
放課後だが・・・
「何故来ない!!神楽坂 雪代!!」
1時間ぐらい屋上で、雑談をしていたが本来の目的であった神楽坂先輩の姿が見える事はなかった。
「先輩、手紙になんて書いたんですか?」
「放課後屋上へ来い。いいか、これは俺からの命令だ。と、書いたが・・・何か問題でもあったか?」
「はい、問題だらけですね。」
多分、上記のような内容の手紙から差出人を特定したんだろうな。うん、あんな内容の手紙なら僕でも差出人分かるわ。
「こうなっては仕方ありませんわ!!王手様、すぐに生徒会室へ乗り込みましょう!!」
「仕方ない、俺自ら出向いてやるか。」
蘇芳先輩と真殿先輩は先陣を切り、屋上から出て行く。
意外とこの2人、息が合うのでは??
2人の後を追い、生徒会室へとやって来たが扉には鍵が掛かっており、中に人のいる気配はなかった。
「ん〜、人がおる気配もせんなぁ・・・。生徒会長さん、帰ったんとちゃうん?」
「う〜ん、教室出るところまでは見たんだけど・・・」
「こうなったら、最終手段だ。お前たち。」
神楽坂国立病院機構へ向かうぞ!!
真殿様の声が、静かな廊下に響き渡った。




