真殿様の赤点回避計画 その3
〜社会のお時間〜
「えっと、何故か僕が社会の授業担当になってるんですが・・・、僕3年生なんて教えられませんよ?!」
「大丈夫だ、忍。頑張れ」
突如真殿様に社会を教えろ、と言われ僕はかなり慌てる。3年生相手に何教えればいいんだよ!!
凄く期待に満ちた目でこちらを見る瀬戸内先輩に少しだけ心が痛む。美少女を無下に扱うなど、男としてあっていいものなよだろうか。
大きくため息をつき、先輩のテスト内容を確認する。あっ、いいなぁ。戦国時代の話じゃん。
とりあえず、簡単な確認作業して終わろう。
「では、戦国時代の有名な三英傑は?」
「えっ、さん・・?」
「三英傑。さ、ん、え、い、け、つ」
「だ、誰だろうね〜。せ、千利休?」
「お茶ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!なんでわからないんですか!!あの有名で、尊敬すべき御三方の名前を言えぬとは!その根性叩き直してくれるわ!!」
初歩的な問題すら解けなかった瀬戸内先輩に、思わず我を忘れてしまった。
しかしながら、これは見過ごせないっ!!僕の知識を全て叩きつける!!
「適当に社会を忍に宛てたのだが、思わぬ正解を導き出せたな。」
「忍さん、性格変わっていますね・・・」
「きっと、疲れてたんやろうなぁ。」
「男は誰しも豹変するでござるよ」
〜英語のお時間〜
「一応聞いておくが、お前イギリス人とのクォーターじゃなかったのか?」
「あっ、そうだよ。おばぁちゃんがイギリス人だよ!でも、海外とか言ったことないから英語なんて喋れないよ!」
真殿先輩は軽く頭を抑えながら、英語の授業がスタートした。
「・・・ちょっと待て。どうしてこんなところに副詞を付ける!!」
「えっ、なんかゴロがいいから合ってるかなぁ〜と。」
「合ってないし、単語の綴りが違う!!」
悪戦苦闘しながらも、授業は進んでいく。
「有栖、明日お前に特訓ノートを持ってくるので、それを繰り返し行うことだ。分かったな!」
「は、はい・・・」
今日1日で全教科分の勉強内容を詰め込まれた瀬戸内先輩が、知恵熱を出さないことを祈りながら、今日は解散した。
思っていた以上に時間は経っており、真殿様の車に寄って全員家まで送り届けられた。
それから1週間後
「やったよ!!赤点回避できたよ!やった!!」
瀬戸内先輩は両手を広げながら、5枚のテストを出す。
確かに、赤点は回避されている。それでもぎりぎりのラインだが。
僕としては社会47点は残念でならない。あれだけ教えたのに・・・
「いや、しのちゃん。途中でテスト範囲と関係ないところばかり教えていたでござるよ。」
後のテストも40前後の数字が並ぶ中で、英語だけ80点を叩き出していた。
「えっ、瀬戸内先輩。英語だけ点数高いですね。」
「あっ、えっと・・・王手くんが作ってくれたノートのおかげ、かな?」
少し顔を赤らめながら、チラリと真殿先輩に目を向ける。
そんなに凄いノートだったのかなぁ・・・。
「よし、とりあえず一難は去ったな。5月も中旬に入ったからな。もう時間がない、お前たち気合入れて最後の部員を集めるぞ!!」
そう、この部には残り2週間ほどの時間しか残されていない。
それまでに部の方針と、後1人部員を揃えなくてはいけない。
真殿先輩の言う通り、ここから真剣に取り組んでいかないといけないな。
みんなと、またここで集まれるように。
次回から第1部最終章に入ります。




