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真殿様の赤点回避計画 その2


「あっ、じゃあ1番問題あるのは私かな?オール赤点だよ〜」

瀬戸内先輩の問題発言にいち早く我に帰ったのは加藤先輩だった。


「あ、有栖ちゃん?あの、オール赤点って冗談、やんな?」


「いやいや〜、前回の期末テストで5教科全部赤点取ってしまって、危うく進級できないところだったよ。」


よりにもよってあんたが赤点常習犯かよっ!!

1年生の俺や、複数人いる2年生の誰かが赤点ならまだ、教え合ったり、ノートを回したりしてなんとかなったかも知れないけれど、3年生が1人しかいない今、誰も先輩に教える事が出来ないのでは?


優秀な人達が揃っているとは言え、学年の壁はでかいはず。

あっ、なんか英才教育とか受けてそうな真殿様ならいけるか?


「こうなってしまっては仕方ない。有栖、今から1週間みっちり勉強漬けの毎日を過ごしてもらうぞ!!これは俺の、部長命令だ!!」


ババーンと効果音が鳴りそうな勢いで真殿様が宣言をする。瀬戸内先輩は一瞬、悲観的な顔をしたが唇をきゅっと噛み締め


「やる、やるよみんな!!絶対に赤点を回避してみせる!!だから応援しててね!」


と天に拳を突き上げていた。




〜国語のお時間〜


「では、国語は拙者が授業を受け持つでござるよ。ありたん先輩、漢字はまあまあ出来てたでござるから、後は読み解く力が身につけば赤点は回避できるでござろう。」


何故か始まった授業。伊達眼鏡を掛けて、教師っぽい雰囲気を出したかったのであろう山野辺先輩からスタートした。


あの後、真殿先輩が各々の得意分野に分かれて瀬戸内先輩をバッグアップするぞ!みたいな感じになり、今に至る。


「では、ありたん先輩。この女性はここで、今、何をしているか。答えて欲しいでござる」


女性が時計の下で立ち、携帯を扱っている絵が黒板に描かれていた。山野辺先輩いつのまに描いたんだろう?


「えっと、ここで待ち合わせをして、相手を待ってるとかかな?」


「うむ、合ってはいるが、答えが足りないので三角ってところですな。この絵だけでありとあらゆる事が想定されるでごさる。

例えば、やべ、あと数分で推しのピックアップガチャ始まるわ。とか、あーあ、このイベ拙者も行きたかったのに。くっ、現地レポ頼むでござるよ!!とか」


長い長い長い。しかも、なんで全部山野辺先輩の趣味方向に走ってるんだよ。


「とまぁ、この女性の心情を深く知り、奥まで考えて漫画を描き上げるといいでござるよ。」


こうして国語は、漫画講座で終わってしまった。テスト範囲を暗記するしか道はなさそうだ。



〜数学の時間〜


「では、次はわたくしの番ですね。数学は公式さえ覚えてしまえば、後は簡単ですから。」


ふんわりと優しげな笑みを浮かべながら、授業がスタートする。今度は大丈夫そうだな。

にしても、蘇芳先輩が数学得意だなんてちょっと意外だ。


「で、ここのxを二乗にして・・・」


「この数字たちはどうしてこんなにも形を変え、移動をさせられるんだろう。まさか、夜逃げっ!?」


「えっ、よ、夜逃げですか!?この数字たちにそんな過酷な過去がっ」


う、ん?なんか話がおかしくなっていませんか?数学の授業してたよね、この人達。なんで夜逃げとかそんな話になってる訳?


「明日香ちゃん、私たちでこの数字たちを助けよう!!xお父さんとどんな形になっても再開させないと!!」


「そうですわね!!早く子供達と再開させてあげませんと」


2人で涙を滲ませながら、数学の公式に取り組んでいった。先程国語の読み解く力がまさかここで発揮された?ま、まぁ数学自体はきちんと解いてるので問題ないか。



〜理科の時間〜


「ほな、次は僕が教えるわ。テスト範囲って、どこからなん?」


「えっと、ここからここまでかな?」


「あっ、それやったら簡単やねぇ。特別な実験をまとめたんとかないし、暗記すれば大丈夫やと思うで。にしても・・・」


加藤先輩は、教科書ではなく瀬戸内先輩を静かに見つめる。儚げに微笑みながら、何か誘惑するような熱を持った視線のように見えた。


「有栖ちゃんが、留年してくれはってたら僕たち、同じクラスやったかも知れへんのに。って思うとちょっとだけ残念やったわ」


「あっ、そうだね!留年してたら王手くんや明日香ちゃんと同じクラスだったかも知れないのにね!」


せやな、と切なげに視線を逸らした加藤先輩が不憫だったが、僕からはドンマイとしか言えなかった。勿論、心の中でだが。

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