真殿様のお泊り徹夜計画
全員で漫画制作に取り掛かっていたが、当然のごとく終わらなかった僕たちは、今日真殿様宅にて徹夜で朝までコースをする事となる。
急に先輩の家に泊まるなんて、非常識じゃないかと思ったが、部屋の数、と言うか真殿様宅が尋常ではないほどデカイため、そんな心配は杞憂だったようだ。
両親も
「えっ、しのちゃん真殿くんの家に泊まるの!?それじゃあ気をつけてね〜!あっ、今度またうちに遊びに来てね、って伝えておいてね〜。」
とにこやかに見送ってくださりました。
僕としても、このまま受け持った仕事を放り出すのは、本意ではなかった為問題はないけれど・・・
真殿家に呆然としながら入る、僕と山野辺先輩。
婚約者であった蘇芳先輩は分かるとして、何故加藤先輩と瀬戸内先輩は平然な顔をしているんだろうか?
普通にお邪魔しまーす。で入って行ったよ。
生まれて初めて見たメイドさんに連れられ、大きな部屋へと通される。
そこにはベッドや大きな長机に椅子、ドレッサーやタンスなど、この部屋だけで生活できそうな一式が揃っていた。
「よし、お前達。必要な物はメイドか冬川に言え。俺たちは集中して漫画を仕上げるぞ。」
真殿先輩の一声で、全員が作業へと取り掛かる。
途中でトーンを破ったり、ペンを真っ二つに破壊されたり、何故かいらないシーンが書き足されたり、ベタがベッタベッタになったりとトラブルを乗り越えながらも山場を乗り越えていく。
僕は、何でペンが真っ二つになってるんだろうな、と思いながらも消しゴムで下に書いてある線を消していくのであった。
余談ですが、軽食として出されたサンドイッチがものすごく美味しかったです。
波瑠視点
まさか、漫画を6人で作る事になるとは思っても見なかったでござる。
しかも、今日、いや日付を超え、もうすぐ朝日が昇る時間でござるから昨日か。
昨日初めて話した人たちの家に泊まり、漫画を一緒に描いて完成させて・・・。
いつぶりでござるかな、誰かと共同して漫画を描くなんて。
昔、一緒に描いていた子達は高校を上がると同時にこの世界から離れて行った。
俗に言う、高校生デビューってやつでござるな。あんなに語り合って、騒いで楽しかったのに
「漫画とか、オタクみたいな事もう出来ないし」
って言い疎遠になってしまった。高校も違うから、仕方ない事ではあるけれど、でも、それでも・・・
この部に入って仲間が出来たけれど、拙者以外はみんな3年生、全員卒業して今年から1人の部員となった為、廃部も決まった。
居場所を、また無くすんだろうなぁ。それならばせめて、この部で何か形に残る物を残したかった。同人誌、って形しか思いつかなかったけれど、それでも、拙者は・・・
「こっちは、終わったぞ。」
他のメンバーは疲れからか、眠りについている中、拙者と真殿の2人で最終調整を行なっていた。
向こうも終わったようで、これで完成した、でござる。
「ふぅ、これで完成でござるな。何とか間に合ったでござるよ。まさか1日で、できるとは思わなかったでござるが」
「俺が手伝ったんだ。すぐできるに決まっているだろう。」
「ハッハッハ、ソウデゴザルナ」
拙者の懇親を込めた棒読みすら無視して、真殿は出来上がった漫画をペラペラとめくる。
「何かを全員で成し遂げ、形に残るってこんなにも楽しい事なんだな。」
「拙者も、最後にこの漫画研究部の部員として、何かを形に残せて、よかったでござる。もう、思い残すことはない。」
楽しかった。そう、1年と言う短い間だったでござるが、もう後悔なんてない。
そう素直に思えるのも、ここにいるみんなのおかげ、で、ござるな。
「さて、後は印刷所?に持って行くんだったな。すでに真殿財閥が経営している印刷会社へ手配してあるので、明日には本となって届くだろう。」
「いや〜、さすが真殿様々でござるなぁ〜。ぶっちゃけ、新刊としては出せないかな?と諦めていたでござるから、心底助かったでござるよ。」
「そうか、ではお前の用事はすんだな?次は俺に付き合ってもらうぞ。」
明け方にもかかわらず、眩しいほどの美形オーラ光線を出してくる真殿に思わずクラっとする。と、言うか真殿、そんな事一言も言ってなかってござるよな!?
何処からともなく、真殿の専属ドライバー?と紹介された冬川さんに拙者は何処かへと連れていかれたのであった。
次で波瑠ちゃん編終了です




