真殿様のお手伝い計画 その1
残り数日しか残されていない今、僕たち6人はそれぞれ受け取った担当に別れ、作業を進めていた。
「山野辺さん、この袋の予備はどこにあるのかな?」
手先が器用で、内職をしている瀬戸内先輩はグッズ?を袋に入れ包装をしたり、シールを切ったりしていた。
「この絵をペンでなぞるんやったかいな?」
「おいっ、山野辺波瑠!このベタ?がうまくいかないっ!!」
「山野辺さん!ど、どうしましょう!トーンが破けてしまいました!!」
この人達、主に真殿先輩と蘇芳先輩は手伝う気があるのだろうか・・・
僕は無言で頼まれた背景を必死に描き上げる。
「全員生きて帰るでござるよ!!」
安請け合いするもんじゃないな、と心底思いました。
有栖視点
みんな頑張ってるなぁ〜。私も袋詰めが終わったらみんなを手伝わないと!
今日は王手くんの家で、徹夜朝まで缶詰コース、だったかな?その為今日は王手くんの家にお泊りをする事。
どうしよう、ちょっと緊張するなぁ。って、これは遊びじゃないんだから真剣にやらないと!!陽が傾いてきたので、私は少し部室を抜け家族へ連絡を入れに行った。
連絡が終わった後部室へ戻る時、神楽坂くんの姿を見かけた。
相手も私に気が付いたのか、少しバツの悪そうな顔をしながらもこちらへと向かってくる。
「神楽坂くん、こんな時間まで残っていたんだね。」
「あぁ、まぁ、ちょっとな。そうだ、君達今山野辺の所にいるのだろ?先程漫画研究部の方を覗いた時、姿が見えてね。」
「うん、今お邪魔してるよ?」
そうか、と一言呟くと何か言いたげな雰囲気を出す。私はじっと彼を見つめ言葉の続きを待つ。
「漫画研究部は、今月中に廃部が決定してある。1ヶ月、人数が規定に満たさない部は即廃部になる事が規則であるからな。」
漫画研究部、廃部になっちゃうの?せっかく漫画面白かったのに・・・。部員は1人、って言ってたから仕方ない事なんだろうけど、でも、それでも・・・
「規則、は規則だからな。俺は生徒会長として規則に則った行動しか出来ない」
冷たい言い方だけど、その奥で何か別の意味を感じる。生徒会長として、ではなく今ここに神楽坂くんがいる理由、きっと、それは・・・
「山野辺さんの事を心配して、この辺りうろうろしてたんだね。」
「もうすぐ廃部するんだ。色々と処理する為にも下見は大事で、だからな。」
早口で私とは違う方向を見る神楽坂くんに肩をすくめる。素直じゃないなぁ〜、ってね。
「私も、最年長として色々と山野辺さんの事、みんなの事見てるよ。」
「・・・ありがとう。」
小さく、小さな声で呟いた後振り返る事なく神楽坂くんは廊下を歩いて行った。
いつか、神楽坂くんも規則と言う柵から解放されますように。




