真殿様の部室乗っ取り計画 その1
あのピクニックから早数日。4月がもう終わりに差し掛かる今日この頃。
生徒会長神楽坂先輩との約束まで後1ヶ月しかないにも関わらず、未だに部員も部室も部の活動内容もまっったく決まっていない。
後1ヶ月ぐらい余裕だろ☆と、思っていたけれど、何1つ達成できていない及びこのメンバーではいつまで経っても進展しない、間違いなく。
今も、放課後に集まるだけ集まって各々がわちゃわちゃとしているだけで、部の方針を話し合うことも、他の生徒を勧誘しに行ったりもしない。
いや、部が成立しない方が早くこの人達から離れることができるので、僕としては良いはずなのだが・・・
「あの、先輩方。楽しそうなのは何よりですが、もうすぐ5月になりますけど。生徒会長との約束まで時間がないですよ。」
「なに、最悪あの男を買収すれば問題ないだろう。」
相変わらずの真殿節を、瀬戸内先輩がやんわりと否定した。
「う〜ん、それは無理だと思うよ。相手は神楽坂くんだもん。彼、厳格な人で全生徒に対して公平に接し、ルールを守る、守らせるをモットーにしている人だから・・・」
「そんな性格の人にお金チラつかせても、余計に反感を買うだけやろね。」
買収云々は置いておいて、全員が話し合いを始めたことはいいことだ。
このまま、最低でも活動内容までは決めてしまいたい。
「買収とかは置いておいてまずは部活動な「ではまず部室を取りに行くぞ。」
はい?何故そこから始まる!取りに行くって・・・あっ、増築してくれるのかな、金持ちだし。
「王手様、どこか心当たりが?」
「冬川に調べさせたところ、1つだけあまり活動していない部があった。そこを乗っ取る。」
冬川さんって、真殿先輩の専属ドライバーじゃなかったかな・・・って、今不穏な単語が出てきた気がしたけど、気のせいだったかなぁ。
「なるほど!流石王手様です!」
「では、早速行くぞ。お前たち、付いて来い!!」
安定の中庭で集まっていた僕たちは、真殿様を筆頭に校舎の中へと戻る。
穏便に事が済むよう、祈りを込めて。
校舎の奥深く、日も差さないような階段下にその部屋はあった。
3年の瀬戸内先輩も、こんな場所あったかな?と首を捻っていた。
真殿先輩は躊躇もなくその扉を開け堂々と入って行く。
もう、諦めた。
「おい、入るぞ」
「入ってから言うセリフではないでござるよ。入るぞ、ではなく入ったぞ。になるでござる。」
真殿先輩とは違う、部屋の中から第三者の声が聞こえた。おそらく、この部の人だろう。
独特な語尾は、この際スルーさせてもらう。世の中変わった人いっぱいいるもん。今すでにいっぱい目の前にいるもん。
「むっ、まだ人がいたでござるか。して、この部に何か御用でござるか?」
瓶底眼鏡を掛け、栗色の髪を三つ編みにした女の人が、椅子に腰を掛け、テーブル越しにこちらを見ていた。
ネクタイの色から2年生である事がわかる。
「単刀直入に言わせてもらう。この部室を俺たちに寄越せ。」
「・・・用件は、それだけでござるか?」
真殿様のストレートな言葉に、一瞬で空気が重くなるのを感じた。
いくらなんでも、急に部室を寄越せだなんて言われたら普通怒るよね。
瓶底眼鏡さんは、チラリと黒板の方を見た後
「いいでござるよ。拙者のこの部室、譲るでござる。」
と答えた。
個人的に一番好きなキャラ登場!




