真殿様の偉大なる計画
ある晴れた日の4月、暖かな日差しが差し込む陽気な空気とは違い、僕は、修羅場を迎えていた。
「ねぇ、今なら1万でこの学校を案内してやる、って先輩が言ってんだからさぁ、後輩は素直に聞くもんでしょ?」
「そうそう、その辺わかってる?」
この、華村高等学校に入学して2週間。僕は早々にカツアゲにあっていた。
ネクタイの色は白で、3年生である事がわかる二人組は、人が全く見当たらない場所へと僕を連れ出し、逃げられないように囲っている。
「あの、僕一万円も持ってないんですが・・・」
「え〜、マジで?一万円も持ってないの?じゃあ、俺らに借金って形でいいよ?まぁ、当然利子もつけるけど〜」
「そうそう、俺ら優しぃ〜から、俺らの手伝いするだけで借金チャラにしてあげるよ?」
ニヤニヤと悪い笑みを浮かべながら、僕の胸ぐらを掴む。
「ほら、あと5秒で決めてね〜、ごー、よーん、さーん、」
カウントが0になったら殴られるんだろうか?
お金はないし、かと言って、こいつらの言いなりになるなんて、絶対に、死んでも嫌だ。
「貴様たち、そんな暗隅で何をやっているのだ?まぁ、庶民にはお似合いの場所かもしれんがな。」
目の前にいる二人組とは違う声。上から目線のその言葉にはどこか傲慢さや、高貴さを含んでいると感じた。
ちらりとその声の主へ目を向けると、やけに整った顔立ちの長身の男で、ネクタイの色から2年生である事がわかった。
「んぁ?なんだ、お前。2年生が3年生の俺らになんか用ですかぁ?」
「なに、お前も俺らとオトモダチになりたいの?」
3年生2人組は、少し自分より身長の高い男に一瞬ひるんだが、青色のネクタイを見てすぐに2年生である事を悟ると、その男へと突っかかる。
「友?この俺がお前らみたいな愚民と友に?はっ、随分と面白い冗談だな。ところで、体育館に行きたいのだが、お前道案内をしろ。」
その男は目の前の先輩を一瞥すると、僕の方に視線を向けた。
男の態度に先輩2人組は殴りかかろうとしたが、胸ポケットからフワリと数枚の紙を取り出したかと思うと、それを地面へと落とす。
よく見てみれば、その紙はお札、出会った。しかも、この日本で1番の男前でどんな人でも虜にする、一万円札様だ。
「お前達はこれが欲しかったんだろう?拾え。貴様らにくれてやろう。ほら、地面に這いつくばって拾うがいい」
驚きのあまりなのか、本能がそうしたのか、先輩2人組は地面に這い蹲り、お札を拾い出した。
「お前っ、1枚多く取っただろっっつ!!」
「はぁ!?お前こそ俺より多く取り上がって!!」
地面に膝をつきながら、2人は取っ組み合いを始めていた。
「くっ、くっくっ、ハハハハハ!!あー、面白い光景が見れた。さて、案内してもらおうか、そこのお前。」
1人この光景についていけなかった僕に、男は再度言葉を繋ぐ。
それは、疑問形でも、何でもなく、決定事項で、命令事項のようにも思えた。
「さぁ、俺の偉大なる計画の幕開けだ」