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真殿様と美少女有栖の花嫁計画 その6

「・・・私、真殿くんの事、利用しようと思ってたの」


息を呑む。衝撃的な事実だが、瀬戸内先輩が何かを伝えようとしているんだ。ここで横槍を入れるわけにはいかない。


真殿先輩もそう思っているのか、ただ無言で瀬戸内先輩を見つめていた。


「さっきも言ったけど、私の父は売れない画家。母はイギリスのおばぁちゃん宅から出稼ぎに行ってくれて、仕送りをしてくれるの。そのおかげでうちは何とかなってるような状態なんだけど・・・」


瀬戸内先輩はチラリと小屋の扉を見つめ、すぐにこちらへと向き直る。


「来年には瑛太、敬太、奏太は受験生。3人を高校へと送り出すにはどうしてもお金が足りない。私も就職して何とかしようとは考えていたけど、間に合わない。うちの高校はバイト禁止だし、内職でコツコツしてるけど、月の生活費でいっぱいいっぱい。どうしようかと考えていた時に、真殿くんが現れた。あの祭壇の上で花嫁を探す、って言っていた時チャンスだ、って思ったの。うまく近づく事が出来れば、3人の受験に間に合うかもしれない。そんな愚かな、淡い期待を抱いていたの」


少し、声を押し殺しながら、静かに語る瀬戸内先輩。しばしの沈黙が流れるが、誰も言葉を発しようとはしなかった。


今この状況では何も言えない。


「けど、1日だけだったけど、3人と話して、真殿くんと話して、考えが変わっちゃった。楽しかったんです。嬉しかったんです、浅はかな考えを思った私を部活に誘ってくれて。でも、悲しかった。真殿くんを騙してる自分が嫌だった。家族の為に、そう思ったけど、家族を言い訳に人を、後輩を、友達を傷つけるなんて事、しちゃダメだった。ごめんね、私利私欲で傲慢な女の子嫌いだって言ってたのに、近付いたりなんかして」


悲しそうに微笑む瀬戸内先輩を見ていられなかった。そっか、この人今日のお昼に真殿先輩が言っていた事を気にしていたんだ。だから、全て話そうと思ったのかもしれない。


「・・・家族の為を思ってした事のどこか、私利私欲で傲慢な女なんだ?」


「えっ?」


「お前は家族を守る為に1日1日必死だったんだろ?昨日の菜の花も、家族の為だったんじゃないか?」


真殿先輩は椅子から立ち上がり、瀬戸内先輩の前へと立ち、大きな手を差し出す。


「お前は私利私欲で傲慢なんかじゃない。誰よりも家族思いで、優しいやつだ。それこそ、俺の花嫁候補に相応しいじゃないか」


相変わらずニヒルな笑みだが、まぁ、かっこいいんじゃないんですかね。


「せやね、有栖ちゃんはもう僕たちとは一蓮托生の中や。有栖ちゃんが嫌やって言っても、この真殿くんが逃がしてくれへんやろなぁ」


「僕も、まだ瀬戸内先輩のこと、何も知りませんけど、嫌いじゃないです。」


瀬戸内先輩は、大きな瞳から一筋の涙を流すと、ありがとう、ごめんね。と真殿先輩の手を握り締めながら、笑った。


「あーっ!!姉ちゃんが泣かされてる!!」


「絶ユル」


「有栖おねぇちゃぁぁぁん!!」


小屋の外から賑やかな声が聞こえる。一番最初に叫んだのは、瑛太くんかな。その後ろから斧を引きずりながら、奏太くんが向かってきていたので、僕たち3人は逃げるようにしてその場を後にした。







翌日、昨日の奏太くんを夢に見ながら、眠たい目を擦り学校へと向かっていた。


「おはよう、赤穂くん♪」


元気な、可愛い声が後ろから聞こえる。これは・・・


「瀬戸内先輩?」


正解!っと今までとは違う、笑顔の瀬戸内先輩がそこにいた。


「なんか、昨日はごめんね。あまりおもてなしもできず、それに、その・・・奏太が追いかけたりして。」


あぁ、昨日の悪夢はちょっと忘れたかったです瀬戸内先輩。



「おはよう、お前たち」


高圧的な声。まぁ、真殿様だな。


「真殿くん、昨日の夜、父の絵が売れたんです。匿名希望で」


「そうか、まぁ、お前の父の絵は素晴らしかったからな。今まで売れなかったのが不思議なくらいだ。今後評価されれば定期的に売れるんじゃないか?」


昨日、匿名希望で絵が・・・?それって、まさか・・・チラリと真殿様を見る。


澄ましたような、何も関係ない、って顔をしているけどおそらく・・・それが、瀬戸内先輩にも分かっているのだろう。瀬戸内先輩は真殿先輩の横に並び


「真殿くん・・・、ううん、王手くんに相応しい花嫁候補になって見せるので、しっかり私を見ててくださいね。」


天使もうっとりするような満面の笑顔で、真殿様を見上げていた。



花嫁候補 瀬戸内 有栖 入部決定。


有栖編終了

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