真殿様と美少女有栖の花嫁計画 その5
瀬戸内先輩に小屋へと促された僕、真殿様、加藤先輩の3人は中に入る。
小屋の中は綺麗、と言うか物が少ない印象だ。
一番最初に目に入ったのは大きな暖炉の上に飾られている綺麗なひまわり畑の絵画だった。正直、この小屋の内装などから、一番似つかわしくないものだろう。
「何も無いところですが、どうぞ椅子にでも座ってください。」
椅子は全部で10個ほど置いてある。いくらなんでも、椅子の数が多すぎてはないだろうか?
「美しい絵だな。」
真殿様の目にも絵画が目に入ったのか、瀬戸内先輩に賛美の言葉をかける。
瀬戸内先輩はその言葉に困った様な、苦笑いを浮かべながら
「ありがとうございます、父が描いたものなんです」
と言う。
「有栖ちゃん、なんかあるん?困った様な顔してはるけど・・・有栖ちゃんにそんな顔似合わへんよ?」
加藤先輩の言葉に、少し顔を暗くした瀬戸内先輩だが、僕たち3人が静かに見つめていると、やがて観念したのか言葉を紡ぐ。
「父は・・・画家なんですが、今まで1度も絵が売れたことなくて・・・美しい絵、だなんて初めて言われたからどう返答したらいいのかわからなくて・・・」
俯いた瀬戸内先輩に、何か声を掛けようとした時、小屋の扉から「ただいま〜!!」と、元気な声が複数聞こえてきた。
瀬戸内先輩は椅子から立ち上がると、「おかえり〜!」と、元気な声で答えた。
バタバタと姿を見せたのは、学ランを着た男の子3人と、ランドセルを背負った4人の女の子たちだった。
急に人数が増えたことに、真殿様、加藤先輩は目を丸くしているが、すぐに我に返った加藤先輩が女の子たちの方へと近づいて
「あ、有栖ちゃんの妹さんたちかな?初めまして〜、後輩の加藤光希いいます〜。よろしく頼みますわ。」
と目線を合わせる為に、しゃがみこみ女の子たち4人に微笑みかけると、4人とも照れた様に小声でよろしく、と言っていた。
まだ数日しか加藤先輩と関わっていないが、この人が女の子にだらしない事だけは、わかった。
「おい、ロリコン。妹たちに近づくな変態ロリコン」
学ランを着た男の子3人組の1人が、女の子たちと、加藤先輩の前へと立ち塞がる。
加藤先輩、ざまぁ。
「こーら、奏太。加藤先輩は挨拶してただけでしょ〜。初対面なのにそんなこと言ったらダメでしょ?」
瀬戸内先輩に注意をされた、奏太くん?は渋々と言った感じですみません、と加藤先輩に誤っていた。
「姉ちゃんお腹すいた〜!!何かない?」
「そっちの籠の方に何かないかな?」
一気に賑やかになった瀬戸内家に、真殿先輩は固まっている様子だった。
「真殿先輩、なんか固まってますけど、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。急に人数が増えたから驚いただけだ。」
瀬戸内先輩は、先程帰ってきた子達を全員集めて、僕たちに紹介してくれた。
「えっと、この子達は私の兄弟姉妹で右から中学2年生の英太、敬太、奏太、小学5年生の蘭、鈴、蓮、小学3年生の加奈です。」
全員で7人。しかも驚くことに全員が美形。眩しすぎるっ!!
有栖先輩に似て、色素の薄い日本人離れした容姿の兄弟姉妹の方々。
「お姉ちゃん、この人達と大事な話があるから、今日の夕食、調達しに行ってきてもらってもいいかな?」
瀬戸内先輩の兄弟たちははーい、と返事をした後、小屋の外へと駆け出す。
最後に奏太くんだけが残り、小声で
「有栖ねぇに何かしたら、地の果てまで追いかけて地獄へ落とす」
と僕たち3人にだけ聞こえる声で恐ろしい言葉を残して小屋から出て行った。
「俺に対してあの態度とは、なかなか度胸のだな」
ニヒルな笑みを小屋の扉へと向ける真殿様。子供相手に何を考えているのか分からないところが、めっちゃ怖い。
「それで、有栖ちゃん。話ってんやの?」
「・・・私、真殿くんの事、利用しようと思ってたの。」
有栖編、次回で最終回です。
奏太くんです。えいたけいたそうた。三兄弟は響きで名前を決めました。