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魔法使いじゃないから!

魔法使いじゃないから!『レベル2―これはパフォーマンスではない!―』

作者: すみ 小桜

これは、七生の災難のお話第二弾!

基、『魔法使いじゃないから!』の二作目です。

このお話だけでも、わかるようにはなっています。

  ―1―



 僕は今、絶体絶命のピンチだ! なぜなら全校生徒の注目を浴びている――これも全てこの目の前に浮いているミーラさんのせいだ!


 僕は高校一年生に先日なったばかりのあきら七生なお。そして、僕の目の前にいるこの見た目からこの世界の者と違う、銀色に光る水色の髪と瞳の少女がミーラさん。カイ何とかという世界から来たらしい。ちゃんとした世界名は、聞く暇があったら聞いておくとして――。


 先日彼女は、事もあろうに自分の世界に放たれたモンスターを僕の世界に落とした。理由は、自分の世界で処理しきれなかったかららしい。しかし、ちゃんと僕の世界で倒すつもりだった。ここまではまだいい!


 だが、彼女が持参した『杖』が、彼女には使えなかったらしく、その場に居合わせた僕に無理やり使わせた。そして、残念な事に、その杖を僕は使えてしまったんだ!

 ミーラさんは、僕にモンスター退治を押し付け、そのまま元の世界に帰ってしまった! そうしたらもう倒すしかないじゃないか!


 しかもそのモンスターもミーラさんも僕の世界の人には見えないらしく、雨の中で杖を振る僕を周りの人は、生暖かく見守ってくれたさ!

 春はいえ、ここは北海道でその日は寒い日だった。ずぶ濡れになれば、風邪を引くのは当たり前で――その週は、学校を休む事になったんだ!


 あぁ、思い出しただけでも腹が立つ! もうモンスターを連れて来るなと言ったのに! 彼女は今、また同じ事をしようとしている――。





  ―2―



 僕は、学校が始まって最初の日に学校に行っただけで、その週を休んでしまった。お蔭でなんとなく、取り残された感じだ。同じ中学の人は、クラスの中にはいなかった。なのでお昼は、ポツンと独りぼっち。まあ別にいいんだけさ。


 「ねえ、審くん。ごはん一緒に食べない?」


 お母さんが作ってくれた弁当を食べようと、机の上に出した所にそう声が掛かり、僕は顔を上げた。


 長い腰近くまであるストレートの髪を耳より上を半分縛り、大きな赤いリボンを付けている。アニメに出て来る女の子のように、大きなリボン。――今時いないよね。こういうでっかいリボンの人。


 つい僕は、リボンに見惚れてしまった!


 「だめ?」

 「え? あ? はい……」


 はいって言ってしまった。だって目が怖かった。なんか『逃がさない』って目つきで。っというか、僕、この人の名前すら知らないんですが……。


 「じゃ、こっち!」


 ガシッと腕を掴まれ引っ張るので、慌ててお弁当を掴む。って、お昼食べるんだよね? なんで教室の外に行くんだよ! ――って、直接聞けない僕って情けない。


 彼女は、ぐいぐい僕を引っ張り上の階へ。一年生の教室は三階なので、四階に行くのかと思ったら更に上の階へ。いや、その上は屋上だ!


 ど、ど、どんなシチュエーションだ! わざわざ屋上で二人っきりでって。もしかして、こ、告白……?!


 「連れて来たわよー」


 彼女は、屋上のドアを開けると同時にそう言った。――あぁ、二人っきりじゃなかったのか……。

 待っていたのは、女子じゃなく男子だった。それも見たことがあるヤツ。同じ中学だったが、一度も一緒のクラスになった事なかったと思うけど。連れて来たって言ったぐらいだから、この人が、僕に用事あるんだよな?


 「えっと……」

 「俺の事知ってる? 同じ中学だった大場おおば幸映ゆきはる。彼女は、同志の二色にしき愛音あまね。で、俺達、新しい部を作ろうと思ってるんだ」


 唐突に自己紹介から本題に入った。って、これ部活の勧誘かよ!

 なんの部なんだ? 確か『どうし』って言ったよな? 同市? 市に関係する部なのか?


 「お前さ、雨の中、杖振っていただろ? それで……」

 「え! いや、知らない! 人違いだって!」


 大場がいきなり核心をつくような事を言ってきたから、慌てて言い訳をするしかない! あれをもしかして見られていたのか?

 いや、学校の近くだったから見られていても不思議ではないかもしれないが……。って、これ噂になったりしてないよな? だから誰も近づかなかったとか……。

 敬遠されてる理由がそれなら、悲しすぎる。


 「それって、噂になってるのか?」

 「なってたぜ! うちの生徒が杖を振り回して叫んでたってな!」


 やっぱり! 終わった。ぼっち確定だ!


 「でもまあ、俺以外、お前だって気付いてないけどな!」

 「気づいていない?」


 大場は、そうだと頷いた。

 取りあえず助かった! って、何故わざわざこんな所で、そんな話を……。――恐喝!


 「僕、お金持ってないから……」


 そう言って、僕は一歩後ろに下がる。

 二人は顔を見合わせると、大笑いを始めた。

 ち、違ったみたいだ。そう言えば、部活の勧誘だったっけ? だが、考えても杖を振っていた話と部活の勧誘の話は繋がらない。


 「そうじゃなくて、俺達もそっち側って事」


 笑いは収まったが、まだお腹を押さえたまま大場はにっこりほほ笑んでそう言った。

 そっち側って、どっち側だよ! こいつも『杖』を貰った仲間って事なのか?

 困惑した顔の僕を覗き込む様に二色さんは、顔を近づけて来た。


 「私達も魔法使いっ子、大好きなのよ! 今までは隠れて楽しんでいたんだけど、あなたの話を聞いて吹っ切れたわ! 部活と言う名の元、堂々と楽しもうって! ね!」


 二色さんは、すごい事を言い出した! あの恥ずかしい行為を部活としてやろうと言ってきた! いやいや、それないから! しかし、好きでもなければ、杖を振り回してあんな事はしないと思うだろう。――どうしたらいいんだ!


 「誤解だから! 僕、別に魔法使いになりたかった訳じゃなくて、仕方なくやっただけだし……」

 「じゃ、誰かに脅されてやったのか?」


 困った顔をして話したからか大場はそう取ったようだけど、ある意味間違いではないかも。


 「って、言うか、モンスターが……」


 そこで、僕はハッとする。彼にはそれは見えていなかったはず。――これ、説明無理じゃないか? 兎に角、杖を振り回した事は置いておいて、断ろう!


 「悪いけど僕、どこの部にも入る気ないから、ごめん」

 「へぇ。そういう事言うんだ」


 大場はそう言って、徐にポケットからスマホを取り出し操作する。そして、画面を僕に向けた。

 そこには、雨の中杖を振る僕の姿があった! ――これだって、恐喝じゃないかぁ!

 僕は、心の中で叫んだ。





  ―3―



 僕達は結局、三人で部を創る事になった。

 昼食を屋上で食べながら打ち合わせなるものをするはめに……。


 「部の名前なんだけど、どうする?」

 「魔法っ子クラブってどう?」


 僕は、箸からおかずを落として固まった! ――そんなはずいのやめてくれ!


 「そんな名前の部、通らないって! 中学校じゃなくて高校だよ!」


 僕は、慌てて適当な事を言って否定した。

 中学校だって、通らないだろうその名前をそうかなぁ? っと二色さんは、残念そうに呟くと諦めたようだ。一安心。

 しかし、部活の名前だけで、こんなに大変な目に遭うとは……。

 いや、もしかして、この名前で届出して却下された方がよかったのか? ――だが、もし通ってしまったら大変だ!


 「お前はないのか?」


 大場が僕にも提案しろと言ってきた。自分で決めた方が無難なのか? ――そう思い適当に言ってみる。


 「かそう部ってどう? あえて平仮名で。コスプレの仮装と想像する世界の仮想」


 超適当に言ってみた。魔法っ子よりはだいぶマシ。まあ、否定されて名前が決まらなければ、なかった事にしよう! 名案!

 だが二人は、食いついた!


 「いいな、それ! 仮の姿の仮相!」

 「なるほど! 魔法で焼き切る火葬もあてはるわ!」


 いや、大場の『仮相』はいいとして、二色さんの『火葬』はどうかと思う。

 二人の大賛成の元、部活名は、かそう部となった。

 これ、本当に許可おりるのか? ――いや、名前より活動ないようで無理だろう。

 僕は、そこに行きあたり帰宅部のままでいれそうだと、それは言わないでおく。勿論、対策を取られない様にするためだ。


 「じゃ、放課後、職員室にレッツゴウ!」

 「オッケー」


 大場は元気よく、右手をぐうにしてあげ、二色さんは親指を立てて頷いた。

 やる気満々? の二人とは対照的に、僕は返事すらする気になれなかった。

 部が許可されれば、このはちゃめちゃな二人と、はずい部活をエンジョイさせられる事になる。――もう、ため息しかでなかった。


 どうせ魔法が使えるのなら、モンスターを見た所からやり直したい! ――僕は、心の中でそう叫んだ。



 放課後の職員室にて、教頭先生に新部活動の申請を出しに行った。

 二人は真面目に、説得を試みている。僕はただ傍観を決めた。下手な事を言って許可が通ったら大変だからだ。


 「だから、コスプレと……」

 「いや、それはわかった。だが、活動内容が……趣味というか……」

 「どこがダメですか? 漫研や写真部とどう違うというのですか! 活動内容は、趣味の領域ではないですか! 私からしてみればそうです! 先生が違うというのなら私にわかるように説明して下さい!」

 「………」


 二色さん、凄い迫力だ。これまずくないか?

 新しい部を創るには、最低三人が必要で僕が入る事になった事で、それはクリアされた。

 二色さんは、押し切る方法を取るみたいだ。考えてみれば、この活動内容を納得して許可してくれるとは思えない。ちゃんと考えてはいたんだ二人共。――僕の考えが甘かった。これはきっと……。


 「わかった! 但し君達も部活紹介をする事になるが?」


 やっぱり、条件付きだが通ってしまった! 二人は大はしゃぎだ!

 先生は、全校生徒の前で部活内容を説明出来るのならという条件で許可してくれた。なんて条件だすんだよ! 二人が喜ぶだけだろう~!


 正式な部としては、その部活紹介の日までお預けになった。だが、二人はやる気満々。どうやって、魔女っ子が素晴らしいかと見せる話し合いが行わる事になった。

 まあ、いいや。その日は恥ずかしいかもしれないが、その内容じゃ部は許可されないだろうから……。

 大きなため息をつく僕だった……。





  ―4―



 とうとう部活動紹介をする日が訪れた。全校生徒は、体育館に集められ、ステージ上または、ステージ前でスピーチや実際に見せアピールする。

 僕達の出番は最後。トリってどうよ? 目立つ事この上なし! 先生意地悪過ぎる! まあ、新しい部だからかもしれないが……。


 今日は杖を持って来ていた。二人は、凄いとかよく出来ているとか、杖だけで大盛り上がり。何となく、羨ましいよ。


 で、最後から二番目の紹介が今、終わろうとしている。

 そこに……ステージの天井に見たことがある円状の光――魔法陣だ!


 「なんで……!」


 危なく大声を出すところだった。辺りを見渡すも魔法陣が見える人はいない様子。

 やはりというか、ミーラさんが魔法陣の所に姿を現した! ――ここで、何をする気だよ!


 「この世界とリンクする!」


 聞いた事ある台詞!


 「次は、新しい部活、かそう……」


 僕は、フライング気味でステージ上に上がった! いや、終わったのを見計らった訳じゃない。こんな所で呼ばれたら! という思いから動いていた!

 体育館はざわめき立った。


 「こんな所で何やろうとしてるんだよ! やめろ!」


 「おぉ」


 っと、後ろから歓声が聞こえる。たぶんパフォーマンスをしていると思っているに違いない。大場と二色さんも打ち合わせと違うが、文句は言わない。むしろ、僕がやる気になってくれたと嬉しそうな笑顔だ。


 「だって、あなたの力が見たいっていうから。ちゃちゃっと杖で宜しくね!」


 ミーラさんは、こっちの迷惑など微塵も考えていない様子で、僕に言った。


 「落ちて!」

 「だから、ちょっと待てって!」


 慌てて叫ぶも遅かった。ボトン! っとそれは落ちて来た。

 今回は、一体だけのようだけど、熊みたいなモンスターだ。大きさもそれぐらい。二本足で立っている。


 僕は一歩下がった。――どうすんだよこれ!

 ちらっと後ろを見ると、ジッと全校生徒が僕を見ていた。そりゃそうだ。彼らには、僕しか見えていない。ミーラさんもモンスターも。僕の一人芝居にしか映っていないはず……。――こんな恥ずかしいのもう終わらせる!


 僕は、杖をモンスターに向けた。


 「僕に力を! あのモンスターを倒せ!」


 数えて十一回目の台詞じゅもんを言った。

 だが、モンスターは苦しそうに膝を付くと、こちらを睨んだ!


 「え? なんで? ちょっとミーラさん、これどういう事!」

 「どういう事じゃなくて、力が足りてないって事でしょう! 早く攻撃して!」


 ゲームでいうならば、一撃で仕留めきれなかったって事。HPがわからないから何度も攻撃すれって事だよね?


 「あぁ、もう! 僕に力を! あのモンスターを倒せ! どうだ?」


 今回の攻撃でもまだ倒しきれなかったようで、モンスターは突然、僕に向かって走り出した!


 「ぎゃー! 来るな! 止まれ!」

 「「キャー」」


 僕は咄嗟に止まれと叫んでいた。モンスターは止まった。勿論、モンスターの意思で止まったのではなく、魔法で動きを止めたらしい。

 うん? 今、僕以外の悲鳴聞こえなかった? ――そう思い振り向いた。


 怯えた顔で隣の人に抱きついたり、目を見開いたりしている生徒がいた。――もしかして、モンスターが見えている?!


 どうしてだとモンスターを見ると、怒りで目が赤くなっているようだった。

 ゲームでもある、HPをある程度削ると強くなるアレなのか? ――やばいだろそれ!

 と、突然モンスターは、動き出した。魔法が切れたみたい!


 「げ!」


 咄嗟に僕はステージから飛び降り、手で頭を庇う形で屈んだ。突進してきたモンスターは、ドンッとステージから飛び降りると、ジッと体育館にいる生徒たちを見渡した!


 「きゃー」

 「なんだよあれ!」


 狂暴化したモンスターのせいなのか、見える人が何人かいて、這うように逃げたり、立ち上がってドアに向かう数名の生徒が! 先生達もその行動にびっくりし、生徒を追いかける。そしてなんと! モンスターも追いかけ始めた!


 「来るなー!」

 「来ないで!」


 絶叫が体育館に響いた!

 僕は立ち上がると、無我夢中で杖を振る! 両手で持ち杖を頭上に上げてから振り下ろす!


 「僕に力を! あのモンスターを倒せ!」


 モンスターは、それでやっと消滅した。へなへなと僕はその場に座り込んだ。


 「すごいレベルアップしたわ! 本物だった! これでお咎めなしだわ!」


 僕は後ろからの声に振り向いた。勿論ミーラさんだ。――お咎めなし。僕はまた、彼女の役に立ってしまったようだ。


 「レベルアップって? 本物って何?」

 「杖よ! 杖がレベルアップしたの!」


 僕の問いにミーラさんは、杖を指差し言った。杖に視線を移すも僕には何も変わったようには見えない。――僕じゃなく、杖がレベルUPって……。


 「兎に角、また後でくるね! あーよかった」

 「ちょっと待って! ちゃんと説明を!」


 僕はガバッと立ち上がり振り向くも、彼女は手を振り消え去ってしまった!

 彼女はよかったかもしれないが、僕は全くよくない! 結局彼女にまた振り回されただけだった。――で、どうしようか? この状況……。

 モンスターは消滅したが、まだパニックは収まっていなかった。


 「さすが! 様になってるな!」

 「これが……。魔法使いっ子!」


 この状況で喜んでいるのは、大場と二色さんの二人だけだった。僕は大きなため息をついた。





  ―エピローグ―



 僕は今、お昼を大場と二色さんの三人で部室にて食べていた。残念な事に部活動を認められてしまった!

 あの後は大変だった。何故か生徒指導の先生に叱られるし、それなのに部活は認められ、部室にする為の部屋の片づけをするハメに……。


 モンスターが見えたという生徒は、僕の迫真の演技に同調しモンスターが見えてしまったんだろうという事になった。数名の生徒しか見えなかったのだからそうなったんだろうなぁ。

 教頭先生も僕の迫真の演技を見て、許可する気になったらしい。これでまた一つ貸しが増えたよミーラさん。この貸しは絶対に返して貰うからね!


 「部長! 今日の放課後から毎日部活あるんだよな?」

 「部長って呼ぶなよ! 審って呼べって!」


 二人は、僕がやる気なったと思ったらしく、部長にさせられた! 副部長は大場だ。本当にどうしてこうなったんだ! 誤解している二人に言っておかなくては……。


 「僕は、魔法使いじゃないから!」


 それを聞いた二人は目を丸くすると、大爆笑を始めた。こっちは大真面目で言ったというのに!

 大切だからもう一度、今度は心の中で叫ぶ! ――僕は魔法使いじゃないから!

如何だったでしょうか?

前作をまだお読みでない方で、興味を持たれた方は是非、前作のレベル1もどうぞ☆

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

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