表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただいま地球さま!  作者: キリタンポン
1/3

プロローグ

はて、ここはどこだろうか?


空には綺麗な星が数え切れないほど存在し、大きな満月が夜を照らしていた。


周りを見渡せば人の手が加わっていないとひと目でわかる立派な木々が並び立っていて、ここが何処か森の奥であることは容易に想像できる。


確かさっきまで俺は勇者として魔王と戦っていたような....


というか止めを刺したと思ったらいきなりここに居るんだもんなぁ。


いやはや、勇者だというのにダンジョンに潜って転移トラップにかかってしまった事がある俺からすると、今回の転移はトラップの類ではないな。


転移トラップだとするならば足元に魔法陣が出てきて気づいたら知らない場所に居るはずなので、魔法陣が出てこなかった今回に関してはトラップの類ではないとすると...


どういうことだってばよ?


考えても分からん、壮絶な謎だ、などと考えながら少し前のことを思い返す。


『うぉぉぉー!!死ねこのクソ魔王ぉぉぉ!!』


約5時間半の死闘の末、やっと出来た魔王の決定的なスキに俺は目を血走らせながら一気に滑り込み、最後の一撃は綺麗な技でも凄まじい必殺技でもないパンチであった。


魔王の右肩に有るキモくてデカイ目玉に俺の拳がクリーンヒットをした。


いくらただのパンチとはいえ俺も勇者である。その威力は.....他と比べたことがないからあまり具体的なことは分からんがまぁ、強い!


そんな拳が魔王の弱点にクリーンヒットしたのだ。


『ぐうぁぁぁぁぁあああぁぁぁああぁあぁぁああ!!』


今でも目の前で苦しそうに体を崩壊させていくアイツの顔を忘れない。


もうその顔見るために俺は頑張ってきたのだ、最高の報酬である。


と、思った時にはここにいた訳だよな。


まぁ、転移前に魔王の中核であるデカくて気持ち悪い目玉を抉りとってやったのだから勇者としての仕事は果たせたに違いない。


否、そうであると信じてもう勇者なぞ辞めてやる。


誰が好き好んで勇者なんてやってると思ってんだ。大間違いだクソボケが。これで魔王がまだ生きてました!なんて事になったら俺が世界征服して魔王すらこき使ってやる。


「はぁーーあ、はふぅー」


と、俺は大きくアクビをしながらあたりを見渡す。


さて、本格的にここがどこだか分からない....


試しに帰還の石を使って魔王城の近くにある町に設置しといたチェックポイントに転移しようとしてみても発動しないし...


「オマケに俺の嫌いな森の中だし....」


そう、何を隠そう都会人な俺にとって森は遊ぶ分には大好きだが、ここで生活しろとか言われても、は?である。


しかし、森のダンジョンはそんな泣き言は聞いてくれない。


俺の苦い思い出の一つである。


「.........最悪」


魔王の奴が苦しむ姿を見て達成感と優越感を感じていた俺はもう一つ感じていた事がある。


「早く帰って寝てー」


そう、もうどうしようもなく眠いのだ。


というか、5時間半ずっと休まず戦闘をしていたら体が動かなくなるのは当然だろう。


頭おかしいんじゃね?なんで5時間半も戦い続けたんだよ...


あのクソ魔王、俺が疲れたから休憩してまた戦わね?って提案したらなんて言ったと思う?


「ふ、ふふふ、はぁーはっはっはっ!!貴様、そんな冗談が言える元気がまだあるのか!!面白い、面白いぞ!ならば次の進化を見せてやろう!!うぉぉおおおぉぉぉ!!」


とか言って32回目の進化しやがったんだぜ?


もうネタ切らして早く死ねよ、って思ったけどなかなかあきらめてくれないのだ、本当に嫌になる。


最終形態になるまで何回進化したと思う?


59回だよ、59回.....


正直そんなに小刻みに進化して何がしたいの?って思っちゃったよ。


しかも第一段階から強かったから殺すのめちゃくちゃ大変だったし。


あれは確か17回目の進化かな?


魔王が「くっ、やるな、だがまだまだ私の進化は止まらない!」とか言って18段階目に進化した時なんて酷かったぞ?


ただ舌が伸びるようになっただけっていう。


え、それ進化なの?って普通に魔王に聞いたら。


「侮るなよ!この舌にはあらゆる毒素が含まれている!掠っただけでも.....フフフ。死ね勇者!!」


とか言ってきた時はただのアホかと思ってしまった。


それ言わない方がいいだろ、って思ったのは俺だけじゃないはず。


まぁ、そんな訳で魔王が強い上に段々と強くなっていき長期戦へと持ち込まれたためとても、とっても、そりゃーもう最高に疲れているのである。


もう寝たいと思うのは必然だろう。


もういいや、適当に家でも建てて寝よ。


そう思い自分の体内にある魔力で土を操り即席の土台を作り、手刀で木を切断し、それを土台にはめ込むことで壁を作る。


適当に集めた気の板を床にして屋根は...要らないか。


うむ、物理無効の結界でも屋根替わりに貼っておけばいいだろ。


はい完成。


どうでしょうこの匠の成せる素晴らしい技術。


何も無かった所には、外見は窓がない代わりに隙間風もいらっしゃいのガタガタの壁、中は玄関や仕切りがない開放的な空間、自然素材を生かして床には多少の土がこびりつかせており、極めつけは屋根がない!!


なんとお値段無料ですよ!


こりゃ人気出るわ、うん。


だって物理無効の結界貼られてんだからそもそも風が来ないし雨すら結界で防げる。


まぁ、欠点は完璧な物理無効結界なため多少の穴を作っておかないと酸欠で窒息死することである。


いやはや、世の中ファンタジーのように万能とはいきませんな。


さて、結界に穴を開けたし寝るか。


おやすみー。


このとき、俺は予想すらしてなかった。


ここがどこで、自分が如何に愚かな事をしてしまったのか....






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ