ものがたりたがりはなんとなく-2
「言ったでしょう? 結局私も君もなんとなくの塊でしかないのよ。君の理想なんか現実には存在しないし、そもそもその理想さえなんとなく作られたものでしょう? ひょっとして私達が現実に生きているとでも思っているの? それこそありえないわ。なんとなく。だって私はなんとなく死ねるもの。あなたをなんとなく殺せるもの。この話をなんとなく終わらせられるもの。そんな世界をなんとなく現実だと思って過ごしてたなんて、本当に惨めね。勘違いしないで。これはなんとなくじゃないわよ。なによ? なんとなくを否定するのがおかしいの? なんでよ? そんななんとなく発した質問に私が答えるとでも考えたのね、可哀想。いいわよいつまでも分からなくて。話者の自己満足? 結構結構。私はなんとなくここにいて、あなたになんとなく考える事をぺらぺらと言ってるだけ。そこに理屈もへったくれもあったらなんとなくじゃなくなるのよ。別にいいわよ頭の中を覗いたってあなたには分からないわ。現実しか見てなくてなんとなくとも生きていられないあなたには、ね。なんとなく考える事を放棄して、そこでなんとなく話を聴いている『あ、な、た、も、』ね」