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ものがたり  作者: 空白スラ
ものがたり
3/22

あなたが語って、私が聴くからものがたり-2

 なんで、そこだけそんなに鮮明なの? 

 ……やっぱり誰も答えてくれない。

 私はなにも見えない中で震えていたの。寒くはなかったけれど。

 ノイズだったあなたの声が聴こえてくるまで、そんなに時間はかからなかった。あなたはずっと、縁側に座る少年と女の子の話を語っていた。その傍らで小さく鳴く猫も登場していたの。

 私、やっと気づいたの。私は、女の子だった。

 ううん違う、あの白いワンピースの女の子が私。あなたが少年だった。縁側に座って、日が暮れるまでおしゃべりして、猫を撫でて家に帰る。

 私、あなたの事が好きだったの。あなたのお話も大好きだったの。

 そう、私はその事を伝えようとしたかった。だから、だからあなたがそれを知る前に死んでしまって、それを受け入れる事ができなかった。

 私は猫になった。もともとあなたのお話の主人公は猫だったから。私があなたに触れられなかったのは、あなたがもういないから。女の子が私に触れるのは、私自身だから。

 でも、私はもう現実へと引き戻されてしまうの。あなたのいない現実へ。私の紡いだあなたのものがたりは、終わってしまったの。最後に、私という聴き手を悲しませて。

 いや……あなたと一緒にいたいよ……


 あなたの声は、だんだんノイズに変わっていったの。とってもうるさくて頭を抑えてもがんがん響いて。

 あたまから、全部たたきこわされるような感じがして……


 ……ノイズが遠ざかるとぼくは縁側に座るあなたを見た。あなたはうつむいていて、表情はうかがえない。

 また女の子が来て、あなたと楽しそうにしゃべる。ぼくはそれをただ見ていた。

 ふと、あなたがこちらを見た。手招きしてぼくを呼んでいる。ぼくは立ち上がってあなたの手の中まで歩いた。

 ふたりの間に、ぼくはちょこんと置かれて夕暮れに染まる空の光を浴びていた。

 女の子は、やけに顔を地面に向けてもじもじしている。あなたもおんなじ感じで。

 あなたが、小さく言葉を言った。

 ふたりとも、紅くなった顔を見合わせて笑ったの。

 私は小さくみゃあと鳴いた。

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