あなたが語って、私が聴くからものがたり-2
なんで、そこだけそんなに鮮明なの?
……やっぱり誰も答えてくれない。
私はなにも見えない中で震えていたの。寒くはなかったけれど。
ノイズだったあなたの声が聴こえてくるまで、そんなに時間はかからなかった。あなたはずっと、縁側に座る少年と女の子の話を語っていた。その傍らで小さく鳴く猫も登場していたの。
私、やっと気づいたの。私は、女の子だった。
ううん違う、あの白いワンピースの女の子が私。あなたが少年だった。縁側に座って、日が暮れるまでおしゃべりして、猫を撫でて家に帰る。
私、あなたの事が好きだったの。あなたのお話も大好きだったの。
そう、私はその事を伝えようとしたかった。だから、だからあなたがそれを知る前に死んでしまって、それを受け入れる事ができなかった。
私は猫になった。もともとあなたのお話の主人公は猫だったから。私があなたに触れられなかったのは、あなたがもういないから。女の子が私に触れるのは、私自身だから。
でも、私はもう現実へと引き戻されてしまうの。あなたのいない現実へ。私の紡いだあなたのものがたりは、終わってしまったの。最後に、私という聴き手を悲しませて。
いや……あなたと一緒にいたいよ……
あなたの声は、だんだんノイズに変わっていったの。とってもうるさくて頭を抑えてもがんがん響いて。
あたまから、全部たたきこわされるような感じがして……
……ノイズが遠ざかるとぼくは縁側に座るあなたを見た。あなたはうつむいていて、表情はうかがえない。
また女の子が来て、あなたと楽しそうにしゃべる。ぼくはそれをただ見ていた。
ふと、あなたがこちらを見た。手招きしてぼくを呼んでいる。ぼくは立ち上がってあなたの手の中まで歩いた。
ふたりの間に、ぼくはちょこんと置かれて夕暮れに染まる空の光を浴びていた。
女の子は、やけに顔を地面に向けてもじもじしている。あなたもおんなじ感じで。
あなたが、小さく言葉を言った。
ふたりとも、紅くなった顔を見合わせて笑ったの。
私は小さくみゃあと鳴いた。