ものがたりの裏で-3
「死って、望む人もいれば嫌がる人もいるからなんとなく不思議よね。私? 私は……なんとなく嫌かな」
あなたが尋ねなくても、あたかもあなたが問うたように白い女の子は喋る。
「それじゃあ、また次に行こうね」
あなたは、もう諦めているのか。
今度現れたのは、また女の子だった。だが、今までの人とは違い、まず女の子の周りにうっすら景色が見えるし、髪が燃えるように赤い。それに、目を開いて動いている。まるで赤毛の女の子がいる空間だけを写しているとでもいうように、女の子自体の位置はいつまでたっても変わらないが、ほんのり女の子の周りに見える景色は確実に変化している。
「フィリア、って言うんだよ? 可愛いでしょ、なんとなく」
白い女の子は得意気に言った。でもあなたは、やっぱり無口。
「でもね、フィリアとは今日でお別れなの。寂しいけど……なんとなくお別れしたいの」
そう言うと、白い女の子はフィリアの周りの景色に少し絵筆を入れる。景色は白みが出てきて、ところどころ見えなくなってきた。
「ごめんなさいねフィリア、ごめんなさい」
ずっと、謝り続けながら白い女の子は筆を動かす。
どんどん、フィリアは白で埋められていく。フィリアは異変に気づいてあちこちを走り回っていたようだが、ついには白いフィリアの像が固まった。
「ものがたりはいつか、忘れ去られてしまうの。私はそれがなんとなく嫌だから、こうやってお別れするの。そうしたら少なくともこの子はずっとここにいれるの。なんとなく私と一緒にずっといれるの。ねえ、なんとなく素敵でしょ?」
あなたは、何も答えない。じっと、フィリアの像を見ている。それは目に焼き付けようとしていたからか、あなたはフィリアの目を穴が空きそうなくらい見つめていた。
「ねえ? どう思ってるのよ? あなたの考えも聴きたいわなんとなく」
あなたは、決められているように何も言わない。
白い女の子は、なんとなくあなたのそんな態度が気に入らないようだった。
「ほら、もう行くわよ」
あなたを引き連れ、最後の場所まで白い女の子は進んだ。