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ものがたりの裏へと
あなたは、目を開けた。なんにも描かれていない黒色のワンピースを着て、黒い髪が背中まで這っている。
あなたは、親に手を引かれる子供のように無抵抗のまま廊下を歩きだす。壁には夥しく『お い で』と書かれていて、でも悪意はなさそうで。
突き当たりにあったのは本棚だった。そこには色とりどりの絵本がある。緑の草木が風になびいている本。兎や鹿などの可愛らしい動物が緑の小人に撫でられている本。
けれどあなたは真っ白の絵本を選んだ。他の本はなんとなくあなたを寄せ付けないというか、あなたを恐れているようだった。
あなたは真っ白な絵本を開く。中身は何にも描かれていない。ふと、あなたは絵本に触れる。するとページに波紋のようなものが広がり、あなたの指は確かにページの向こう側に行ったようだった。
あなたは、少し間を置いてから絵本を上から被った。絵本は乾いた音をたてて床に落ちた。