キミと屋上
焼きついた光景、目を見開いて「嘘だ」と呟く。
嘘だ、嘘じゃない、嘘じゃない嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ―――・・嘘じゃない。
否定し続けても、結局は現実を突きつけられる。
からからに乾いた喉。
瞬きすらできないほど体は冷えて固まっていた。
向こう側に向かって、伸ばしていた手が崩れるように力無く落ちる。
真っ白な頭、整理が追いつかない。
ねぇ、キミは
この世界は嫌いなの?
何気なしに聞いたあの日が、脳裏によぎった。
うん、嫌いだよ。
そうやって笑ったキミの顔が、今も鮮明に残ってるよ。
痛々しくて、弱々しくて。
そんなキミを見たくなくて目を逸らしたのに、頭に焼きついた表情。
キミの服から覗く手首には、生々しい傷。
古い傷も、新しい傷も。
キミの顔には殴られた痕、脚には青い痣。
それでも笑うキミは、美しかった。
息が止まるかと思うくらい、美しかったんだ。
「さよなら」
そう言ったキミを連れ戻そうと、手を伸ばした。
あと数センチ。
あと数ミリ。
服に触れたその瞬間。
キミは―――・・消えた。