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第一話

国の中心にある王都<翡翠>


国の発展と共に大きく、整備されていったこの翡翠にも、表と裏というのがある


「ここが、裏町の入り口か」


表の町、裏の町


違うのは住人だ


表の住人が一般人ならば、裏の住人は癖のある者達・・・ヤクザ者、犯罪者、博打師、孤児、妓女、奴隷、外人


国の中で最も発展している王都は、やはり最も裏の人間も多かった



「こんな所で、裏町眺めて、おにーさん怪しいねぇ」


「!!!」


裏町を熱心に見ていた男は、突然声をかけられ肩を揺らす


「あは。驚いちゃいました??ごめんねぇ


おにーさん、表の人間でショ??裏の入り口眺めて何してるのさ」


「あ、あぁ・・・・どう、なっているのかと気になってな」


「まるで子供みたいな事言うねぇ。翡翠の表の子供だって、好奇心は刺激されても入っては来ないってのに」


「そう、なのか?」


「そうそう。表と裏は違うよ。一度入ったら、戻れないんだ。そういう町なのさ


だからおにーさん、戻らない覚悟はあるの?あるなら案内したげる」



にっこりと笑うその子に、男は否・・・と呟いた


「悪いが、又の機会にしようと思う。一応抜け出してきた身でな。長居も出来んし、やらねばならない事も山積みなんでな」


「そう。それがいいよ。」


バイバイ、と手を振る子に背を向けて男は己の生活に戻って行った




子守唄を口ずさみ裏町を歩いていれば、丁度表につながる道に出る


裏町には入り口の他にも幾つか表と繋がる道があって、此処は特に花街へとつながる道の為、歩いているのは裏の住人よりも表の住人の方が多い


先ほど出会った男には、一度入ったら戻れないと伝えたが、実際は少し違う

表から望んで裏に来る人間なんて、限られている

戻れないんじゃなく戻らないだけ


証拠に花街に来る表の男たちは昼になると帰っていくのだから


「あら小狼様じゃないかぇ」


「やぁ蝶歌」


「また、入り口で追い返していたのですか」


「そうそう。今日なんて、世間知らずな男だったよ。」


一つの妓楼に入れば、声をかけられる

馴染みの顔に小狼は微笑んだ


微笑まれた女、妓女の蝶歌は珍しいものだね、と呟く


裏町の入り口に来て、引き返せる者ならそもそも裏町に近づこうなんてしないだろう

特に、大人の男ならば

これが子供ならば、好奇心が恐怖を勝って・・・と考えられるのだが



「蝶歌、月様はいる?」


「月様ならば何時もの場所に。李白様と白斗様と共にいらっしゃるよ」


「有難う」



小狼の入った妓楼は風雅楼と呼ばれている

質の高い妓女と、もてなしで客には貴族も多い

それゆえか各所、美しい細工が施され見る者が見れば非常に雅な妓楼なのである

飾り過ぎて下品じゃない妓楼は、この妓楼の主の趣味の良さが伺える


そんな風雅楼の最上階には小狼が愛してやまない麗しの女性がいる


一際目を引く細工扉を開けば小狼に幾つもの視線が注がれた


「あれ?蝶歌は李白と白斗サンしか名前を挙げてなかったのになぁ」


室内にいたのは八人の人間


その中で一際目を引く豊満な身体つきの美女がそりゃぁね。と濡れた唇を開く


「李白と白斗様は先頃いらしたが、後の面々は昨日から泊まっているのさ」


「そういう事だ小狼。早く座りな」


一番年上と見える壮年の男が促し、小狼は何時もの席に座った



「それで?小狼、今日入り口に来たのは、間違いないんだろう??」


「うん。」


美女が問えば小狼はあっさり頷く


「ようやっと、この国が裏町に興味を持ったっちゅーこっちゃな」


「最早、裏町はこの国を支える一角ですからね。国が意識を向けるには、少々遅かったと思いますが」


「そら大目に見たれや。今の王は即位してすぐ、北の遊牧民と戦があったんやから」


「その事後処理もようやく終わり、国の内情に目を向ける事ができたわけだな」


「坊ちゃんはどうだったかい?小狼」


「んー・・・学んでる最中、って感じ。まぁあそこの側近は林雨様の弟なんでショ?

王が馬鹿でも側近が賢ければどうにでも国は動かせるし。

まぁ・・・馬鹿かもしれないが、愚かじゃない、と評価しますよ」


「一人で此処まで来る時点で自覚がないじゃろう。

儂としては如何なものかと思うぞ」


「同感」


「月様はどうじゃ?」


「まぁ様子見だね。戦争の後始末を見る限りじゃ愚かとは言えないから裏町を害そうなんざ思わないだろう。というかそんなバカだったら王位争いで倒れてるだろうし。これからだよ」

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