楽園
絶え間なく流れる小川。香り立つ花たち。常夏という言葉があるが、ここは常春の地であった。
見る者が見たら、そこに人ならざる存在が見えるだろう。
そう、妖精たちだ。
そっと耳をかたむけると、そよ風に草花がわずかに揺れるような小さな声が聞こえてくる。
妖精たちはこう言っていた。
「悪魔がきた」
ここは妖精の国。
何者も近づくことのない、秘境中の秘境にそれはあった。
ごくまれに動物が迷い込むことはあたったが、妖精達はそれらに『まじない』をかけて、国の外に導いていた。
そこに突如として悪魔が現れた。
『まじない』も悪魔には効かない。奴らが使う魔法の前では『まじない』は無力だった。
彼らは森を枯らし、そこに使い魔を放ち、妖精たちの国を侵略してきた。
「神様、助けて下さい」
妖精達は日がな一日祈りを捧げた。もはや神に助けてもらうしか道はなかった。
そして現れた。またしても、悪魔が。
でもこの悪魔は様子が違っていた。
いつもは集団で襲ってくるのに一匹で入ってきて、魔法で木を枯らすこともなかった。
ただ、巨大な目で国の様子を見回すだけだった。
「何を調べているんだ?」
「私達を調べにきているんだ」
「これはまた、大勢の悪魔がやってくるに違いない」
妖精達は色めき立った。
ー神様助けて下さいー
妖精達は更に祈った。
それにすがるしかなかった。
そしてその願いは、かなえられた。
悪魔達は来なくなった。
そればかりか、使い魔たち共々国から出ていった。
ー神様…ありがとうございますー
電車に揺られていた1人の学生はスマホを見ていた。
「へぇ〜、トト〇の森開発中止、森の復活へ。動画配信がきっかけ…ねぇ」




