純白の檻
眩しい...目を開けると真っ白な天井が目に入った。首を回そうとすると、口の粘膜にに固いものが触れた。手で掴んで引っ張ってみる。首の内側を引っ掻かれるような感覚とともに、細長いものがずるりと抜けた。自由になった上半身を起こしても、目に入る色は白だけ。私は体の中に繋がったそれを力任せに引っ張る。白い肌に流れる紅さだけが、この部屋で唯一命の匂いを発している。まだまだぼやける視界で首を回した。昨夜こぼしてしまったシミの面影はもうどこにもない。この部屋に、白以外の色は無いのだ。別に白以外の色を見たことがない訳では無い。無惨に壊され、純白の下の濁った暗さがむき出しになっているのが今でも脳裏に焼き付いている。ただ、いくら壊そうが、いくら汚そうが、目を開けたらまた真っ白に戻っているのだ。私はこの白い部屋が嫌いだ。裸足のままベッドを降りてドアを開けてみる。宙に浮いているこの部屋から出るにはここからダイブする以外にない。しばらく立ち尽くしたあと、私はベッドの隣にいた。自分の体にひとつずつチューブを刺し直していく。真っ白な服を身に纏う。洗面所で鏡に映る自分。真っ白な服に色をぐちゃぐちゃに付ける。指で口角を上げる。体に繋がったチューブは見て見ぬふりをする。ドアノブに手をかける。ガラスに囲まれた真っ直ぐなトンネル。一歩踏み出す度にいやでも目に入る景色をできるだけ締め出しながら早足で目的地に向かう。今日の僕も、ピエロだ。半分だけ本物の笑顔で笑う。チューブに繋がれた体で踊る。目まぐるしく変わる色に必死にしがみついているうちに一日が終わる。僕の色を隠してガラスのトンネルを戻る。また、あの白い部屋。白くて何も無い部屋。何も、何も、何も無い部屋!!!!力の限りに拳を振り上げ、思いっきり壁に叩きつける。何度も何度も何度も何度も!!!!何度も....私の力では傷ひとつつくことはない。腹の底から笑いが込み上げてくる。その場にペタリとへたりこんでひとしきり笑ったら、顔に張り付いた笑顔だけが残った。外れたチューブを刺し直してベッドに向かう。真っ白だっただけ良しとしよう。きっとこれでいいい。大丈夫。でも、願わくば、もしも、このまま眠ってしまって、このまま、目を覚まさなければ...いいのになって...ちょっと...だけ、思ってたりして。なんてさ。そんなこと考えてもしょうがないのに。私はこのチューブなしでは生きられないし、あそこから飛び降りる勇気もない。だから明日からも同じ日常が続く。これは仕方の無いことなんだ。だから、おやすみ。全部忘れて、見て見ぬふりをしよう。せめて明日は、笑って生きたいから。
中学生の頃のやつ発掘してきました




