6話 噓つきで、不器用な猫の話
商店街で聞き込みをするも、結局、スマホの情報を聞き出すことができなかった。
日奈と真夜は諦めて、商店街を後にし、近くの交番で紛失物の書類を提出した。
時刻は13時となっていて、学校ではもうじき昼休みが終わるころだ。
「とりあえず、スマホ見つからなさそうだし、そろそろ学校に戻ろうか」
「そ、そうだね……」
真夜の提案に対して、日奈はどこか引き攣った顔で言った。
真夜は少し気になりつつも、
「日奈。今から走って行けば、多分、次の授業には間に合うはず! 行こう!」
真夜は日奈の手を引こうとした。
だが、日奈は動こうとしなかった。俯いたまま、首を横に振った。
真夜は少し困った様子で、それでも少し微笑みかけるように、
「あ、ひょっとして、走るの苦手だったりする? それなら私、近道知っているから、そこに行こうよ!」
「いや、そうじゃなくて……」
「早く、行かないと次の授業に遅刻しちゃうって」
「えっと、その……」
真夜の忠告に否定的な日奈。
日奈は学校を早退している。その事実を真夜は知らない。
「えっと、ドーナツ屋に忘れ物しちゃったかも」
「さっきのドーナツ屋で? ああ、ドーナツだったら、また放課後行けばいいよ」
「えっと、財布落としちゃったかも、ははは……」
「日奈も忘れ物? 仕方ない、私も行くよ」
「いや、良い……」
「なんで?」
「その、なんでって……」
本当は学校を早退しただけなのに、財布を忘れたと言い訳したことにより、状況はさらに悪化していく。
日奈は真夜の質問に答えることができない。
だって、周りと違うことしているから。
日奈は微笑んだ。
「財布のことは大丈夫、だから。真夜ちゃんは、行って。だって、二人とも遅刻だなんて、格好がつかないから」
「何言ってるの、日奈。私の問題に巻き込んでおいて、日奈の問題を無視なんてできないよ。私だけ解決して、日奈は解決しないんじゃ、私の方こそ格好がつかないじゃない!」
「真夜ちゃん。で、でも……」
「大丈夫。日奈が遅刻するなら、私も一緒に遅刻する。そして一緒に怒られようよ。だから……」
真夜は何度も一緒について行くことを提案するが、日奈は否定し続けた。
しまいには、真夜は少し悲しそうにしていた。
日奈はそんな真夜の姿を見ていられず、踵を返し、走り出した。
「私、学校で待っているから!」
後ろから真夜が叫んでいたが、日奈は振り返らなかった。
日奈は走りながら、泣いた。
*
日奈に何も聞けなかった真夜は一人で学校に戻っていた。
学校に戻る間、真夜は走ることはなかった。
日奈が後ろから走ってきて来ることを期待して、何回か後ろを振り返ったが、その姿は見えなかった。
学校へ戻ると、授業時間になっていた。
遅れて、教室に入ると案の定、先生に叱られ、生徒指導室に行くことになる。
生徒指導室で話をしていると、真夜は昼休み時間に何度も学校を抜け出していたことがバレてしまい、反省文を書くことになった。
真夜はそのまま午後の授業を受けた。
放課後。真夜は一人教室で、さっき生徒指導室で渡された反省文の用紙に睨めっこしていた。
そして何か思いついたかのように、走り書きをしていた。
反省文を書き終えると、一人、椅子をギコギコ鳴らしながら、天井を仰いだ。
すると、教室の扉がわずかに開いた。
真夜は少し驚き、
「え、何?」
気になって、扉の近くに向かうと、足元にドーナツの紙袋が置かれていた。
ドーナツの紙袋には、『ごめんなさい』というメモがついていた。
どうやら日奈は教室に来てくれていたみたいだった。
日奈が約束を守ってくれたと気づき、真夜は嬉しそうに、紙袋を開いた。
そこにはチョコ味のドーナツが入っていた。
*
真夜は職員室で反省文を提出すると、先生は少し、呆れた様子、時には難しそうに眺める様子があった。
反省文を読み終えると、先生は呆れた様子で、「いや、これ、反省文なのですか?」と聞いてくる。
「はい! 私なりに頑張って書きました! どうですか!」
「いや、物語? 短編小説一本、読まされた気分だよ」
「面白かったですか!」
「いや、そうじゃなくて……。まあ、このドーナツを貪る猫? 何か、まるで感情を持った人間みたいだ」
「そうなんですよ! 因みに、実在する人物なんですよ。その子は臆病で、でも、勇気があるようなそんな子なんです」
「まあ、物語を一本創作できる才能は認めるよ。だが」
先生は真夜に対して核心をつくことを言った。
「これ、反省文じゃない……」
「はい……。書き直してきます」
真夜は先生に指摘され、しょんぼりしながら職員室を出た。




