5話 震える勇気で
日奈はドーナツ屋を出た。
それからすぐに前方を歩く金髪少女に目をやった。声を出して少女を呼び止めたいが、どう声を掛けたらいいか分からなかった。
最近知り合ったばかりの人間がズカズカと他人が抱える問題に踏み入って良いのか分からなかった。
それでも少女は困っていた。平然を装っているが、多分、困っていたはずだ。
日奈は震える喉から声を出そうとした。
「あ、あの!」
思った以上に自分の声が出て、日奈は驚いてしまった。
声をかけられた少女は、日奈の方を見ていた。少し困った様子で。
「日奈。食べるの早!」
「いや、まだ食べきってなくて」
「なるほど……。じゃなくて、なんで私を呼び止めたの?」
「そ、それは……」
日奈は少し動揺しつつも、それでも伝えなくちゃいけないと思い、
「一緒に、わ、私も、探す……。真夜ちゃんの、スマホ」
真夜は一瞬、驚いた様子だったがすぐに嬉しそうに口角を緩ませ、
「日奈~!」
と言いつつ、日奈に抱き着いてきた。
「や、やめてよ」
日奈は恥ずかしそうに、真夜のことを引き離そうとするが、
「やだ。離さない」
と真夜は抱き着くのをやめなかった。
「日奈って、優しい子だね」
真夜は日奈の頭をなで続けた。
「シャアーー」
日奈はそんな真夜の手を払いのけると、まるで猫のように威嚇していた。
そんな姿を見ていた真夜は、スマホあったら今の姿撮っていただろうなと、微笑ましく思ってしまった。
日奈は真夜と一緒にスマホを探すことになった。
真夜は道端を注視しながら歩いていた。
「どこいちゃったんだろう、私のスマホ」
少し困った表情で真夜は探していた。
「どこか心当たりとかあったりするの?」
「んー。確か、学校出る時には持っていたんだけど」
「昼休みに出てきたの?」
「うん。そんなところかな。もう少しで昼休み終わっちゃうよ」
真夜のスマホを探している中、商店街へとやってきた。
この商店街は学校に近いところにある。
真夜が商店街に入ろうとすると、日奈は急に手を握って引き留めてきた。
「ま、待って。ここ、入るの?」
「うん。そうだけど。日奈どうしたの?」
「いや、私、ちょっと遠回りしたいなって思っちゃって」
「日奈、ひょっとして、商店街怖かったりする?」
真夜が核心を突く発言をした。
日奈は商店街が怖かった。人付き合いを避けてきた日奈にとって、商店街という場所は人が多く、ここを通ることに難易度が高かった。
日奈が怯える様子を察したわけか、真夜は日奈に手を差し伸べた。
「大丈夫。私の手を握っていれば。私がいるから大丈夫」
真夜はそう言って、強引にも日奈の手を握った。
二人は商店街へと入っていく。
日奈は真夜に手を引かれながら、少しだけその状況が恥ずかしいわけか、下を向きながらもじもじしていた。
その間、真夜は商店街の行き来してくる人、店の人に、落し物を見なかったか聞きまわっていた。
商店街にいる間、日奈は真夜の手を放すことはなかった。




