3話 駅前にあるドーナツ屋にて
午前11時。学校はまだ授業時間だ。
日奈は職員室を去ったのち、保健室のベッドで1時間程、寝て、早退した。
大泉先生からは今日の早退の許可はいただいている。
日奈は一人学校を出て、いつもの通学路を歩いていた。どこか後ろめたさを感じながら歩を進めていった。
やっぱり皆と同じように授業を受けるべきだったのかなと、日奈は少しだけ後悔した。
それでも自分はやっぱり皆のようには上手くいかない。
なぜなら日奈は人見知りだ。
大泉先生とは普段通り話すことができるが、教室にいるクラスとはなぜだか上手く会話することができなかった。
だから教室ではいつも机に突っ伏していた。
これは誰とも会話をしたくない自分がよくやっていることだ。ある意味、近づかれないようなバリアをつくっていた。
そんな日奈をどこか自分のことをあざ笑うかのような声が聞こえてくる気がした。
だから最近はイヤフォンを耳に塞ぎ、いつも聞くJ-popを聞いていたり、幼馴染が教えてくれたゲームの音源ばかり聴いている。
机に突っ伏し、音楽を聴いているときは、教室という空間から隔離されると、どこか心地が良かった。
学校を出てからというもの、周りからの視線を感じている。恐らく、高校生がこの真昼の間に外を出歩くことが周りにとって少しおかしいと感じているわけだ。
周りから来る視線はどこか私の身体を蝕むかのように、鋭く痛かった。
だから私はそこから逃げ出すように走り出した。
数十分走り、流石に息切れのせいで動けなくなったところで、公園の滑り台の上で体育座りしていた。誰にも見つからないように、影を潜めるかのようにいた。
それでも12時近くということもあってか、少しお腹が空いてきた。
日奈は滑り台を滑り降り、また歩きだした。
公園から少し離れて、水柳商店街へとたどり着く。
商店街を見渡すと、ここは人だかりができており、日奈は退屈そうにため息をこぼした。
ここは人が多くて、流石に注目を浴びてしまうと感じた日奈は、商店街を通ることをやめた。
どうしようもない退屈さに押しつぶされそうになりながら歩いていると、駅前のドーナツ屋へとたどり着いた。
このドーナツ屋は日奈がよく行くところだった。
そしてつい最近、とある少女とあった場所でもあった。
綺麗な金髪をなびかせた少女の姿が不意に思い出してしまう。
またいつか会おうと言った少女は、今は学校にいるのだろうかと思い、流石にここでばったり再会することはないだろうと確信し、ドーナツ屋に入る。
ドーナツ屋の扉を開くとふんわりと甘い香りがすぐに鼻孔をくすぐり、先ほどの空腹が押し寄せてきた。
早く何か腹に入れたいと思った。
日奈はトング、プレートを手に取り、ショーケースのドーナツを眺め、それを取る。
チョコレートがかかったドーナツ、フレンチクルーラー、それらをトングに挟んではプレートの中に入れていく。二つほど取ったところでレジの方へ向かう。
昼時であるため少し混んでいたが、トングをカチカチと鳴らしながら暇をつぶし、自分の番になればプレートをレジへ。会計を済ませ、二人席のテーブルへ向かった。一人席は残念ながら空いてなどない。
席について注文したホットコーヒーを一口。そこからやっと落ち着けて、一息ついた。
「ふう……」
やっと張り詰めた雰囲気から解放されたようだった。
ここにいればとりあえずは落ち着ける。
日奈はドーナツを一口食べた。
そして二口目を齧ったところで誰かと目線があった。
「頬張る日奈、可愛い……」
金髪の少女はそう言った。
日奈は思わずごっくんとドーナツを喉へと通した。
「え、なんで?」
「なんでだろうね。たまたまかな」
偶然にもこんなドーナツ屋で会うことはあるのだろうか。
こんな時間だというのに真夜がいたことに日奈は少し衝撃を受けていた。
「さっきのなんでに答えるねを私、たまーに昼休みに学校抜け出して、ここに来ているわけ。そしたら見知った顔をみつけて声をかけたんだよ」
「それはだめじゃないかな……?」
「えぇ!? 日奈だってやってるじゃん」
「いや、それは……」
「ま、お互いに共犯者ということで、日奈のところ座っていいかな?
「えっと……」
「やっぱりお邪魔だった?」
「ダメ、じゃ、ないよ」
日奈はビクビクしながらそう言っていた。
「そうこなくっちゃ!」
真夜は日奈の向かい側の席に座った。
「しっかし、久しぶりだね、1ヶ月ぶりかな?」
「そ、そうだね、えへへ」
久しぶりの再会に日奈は思わず愛想笑いをするしかなかった。




