20話 ドーナツの真実
日奈が始めたドーナツの宝探し。結局のところ誰一人ドーナツを見つけることができずに終わってしまった。代わりに見つけたのは日奈が書いたとされる意味深な暗号のみだった。
そんな結果に、隅は納得できず、独断でドーナツの行方を追うのだった。
隅は早速、同じクラスにいる日奈に聞いてみることにした。
日奈は隅の目の前の席にいつも座っているので話しかけやすい。
しかし今日、日奈はなぜか学校に来ていなかったのだ。いつも目の前に座る教室にはいつもの日奈の姿がどこにもなかった。
そこへ教室に大泉先生が入ってきたので、聞いてみることにした。
「あの、大泉先生。少し、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「はい。何でしょう?」
「椎名さんは今日は学校にいらっしゃるのですか」
「ああ。椎名さんね」
大泉先生はどこか心当たりがあるかのように言い、
「椎名さんは欠席、ということになっていますね」
「欠席ということですか」
「はい。そういうことにしています」
そういえば日奈は学校をよくサボっているということをクラスメイトから聞いたことがあった。しかし欠席ということになっていますという言葉が少し引っかかるような気もした。
「大泉先生、ありがとうございます」
隅は頭を下げて礼を言った。
「ところでワタクシも早退という形でもよろしくてよ」
「ダメです」
「はい……」
隅は仕方なくトボトボと自分の席へと戻り、クラスメイトと昼食を取るのだった。
*
ということもありまして。隅は隣のクラスに在籍する裕、真夜にもドーナツのことについて聞いてみることにした。
昼休み時間に隣の教室へと足を運んだ。
教室に入ってみると、裕は友達とやらで談笑していて、一方で真夜の姿はなかった。
隅は裕に話しかけることにした。
「常盤くん、少しよろしいですか?」
「ああ、ちょっと待ってろ」
裕は快く頷き、周りにいる友達に一声かけていた。
隅は裕と一緒に教室を出た。それから廊下で二人会話するのだった。
「それでここに来たということは俺に何か用があるんだろ?」
「はい、そうです。あの日のドーナツのことについて伺いたのです」
「ああ。俺はそもそもドーナツのことなんか知らないからな。というか、ドーナツ入っていたの真夜に聞かされていたからな」
「そうですか。なら分かりました。ところで七瀬さんはどこにいらっしゃいますか?」
「うーん。学校にはいないと思うな。あいつも最近学校サボりがちになったというか。日奈と仲良くなってからだっけな、昼休み時間からたまに学校抜け出しているっぽくて」
「そうですか。なら椎名さんと七瀬さんにはまた別の機会に聞くことにしましょう」
「まあ、その方がいいと思う。ただドーナツがどこにあるかって、多分結局のところ誰にも分からないんだと思う」
「そうですか。これはワタクシの憶測なのですが、紙袋は全部見つかっていないんだと思うんですよね」
「ん? 俺は隠した場所は把握しているが?」
「その常盤くんはその途中から、椎名さんの手伝いをしていたのだったら、その前に隠していたのだとしたら、完全に全部の場所は把握できたいないのではないでしょうか?」
「確かにそうかもな」
「じゃあ結局、そのドーナツはどこにあるのでしょうか」
「さあな」
さっぱり何も分からないと言うように裕は首を横に振った。
*
とある正午の駅前にあるドーナツ屋。
そこで楽しそうにドーナツを食べながら談笑する二人の姿があった。
一人セミロングの少女で、フードを被ってドーナツを食べており、もう一人は美しい金髪を靡かせて楽しそうに会話をしていた。
「でさ、あの後先生が言うわけ。これは感想文じゃなくて、短編小説だって」
「そうなんだ。でも、ちょっと読んでみたいかも」
「ええー。恥ずかしいな」
「でも、先生には見せたんでしょ。その短編小説」
「まあ、先生が感想文を書きなさいって言うんだから、仕方なーく書いたらこうなりましたって報告したら、案の定お前の書く文は短編小説だなって」
「そんなに先生が短編小説だって言うくらいなら、私も見てみたいな」
「ええー。どうしようかな。やっぱ、だめ!」
「なんで?」
「恥ずかしいし」
「笑わないから」
「本当に?」
「うん。本当」
「じゃあ、今度のクリスマスの時期に私の小説持ってきてあげる」
「上からだね」
「し、仕方ないでしょ」
恥ずかしそうに真夜はそっぽ向いた。
一方、日奈は真夜が小説を読ませてくれるということですごくうれしそうにドーナツを食べていた。
ドーナツを頬張る日奈を見ながら真夜は話しかけてきた。
「ところでさ、ドーナツ」
「ドーナツが何?」
「あの日、ドーナツを賭けて宝探ししたじゃん」
「ああ。あれね」
「そうそう。それでさドーナツって結局のところどこに隠したわけ?」
「えっとその、言えない」
「え~なんでよ。私にだけでもいいからさ。教えてよ」
「まあ、良いけど」
日奈はドーナツを一口食べ終えると言った。
「いやー。あの人は綺麗な人だったなー。黒髪で、スーツ姿で、コート羽織ってて」
「うん? それで?」
「確か特徴的だったのは目の色が左右違ったことかな。オッドアイって言うのかな。でも目の下にはクマがあって」
「なんかまるで私も知っている人みたいな姿だね」
「うん。もうわかるでしょ。ドーナツをもらった相手」
「私の姉さん」
「そう」
日奈は肯定するかのように頷いてきた。
真夜は驚いた様子で聞いてきた。
「でも、日奈はその、知り合いだったわけなの? 私の姉さんと」
「うん。そうだよ」
「言ってくれたらよかったのに」
「うん。まあこれは誰かが聞いてきたら言おうかなって思っていたんだけど。あの時みんな、紙切れのことが気になっていたみたいで、言いそびれて。あと、途中で帰った私も悪いし」
「なんだそういうことだったんだ。言ってくれてありがとうね日奈」
「まあ、真夜ちゃんが聞いてきたから答えただけだよ」
日奈はそう言いながら、カフェオレを一口飲んだ。




