18話 黒昼
夜10時頃。黒髪のオッドアイの少女はコートを羽織り、足早と目的地に向かっていた。
真昼はアパートを出て、駅の方へと向かっていた。さっき電話で男とアポを取り、とある場所で待ち合わせすることになった。
そこは駅の近くにあるパチンコ店であった。
真昼は少し背伸びをした。コートを叩く。それから店内へと入っていく。
店内にある天井の照明は少し薄暗くて、その代わりにいくつもの光がチカチカと店内を響き渡らせていた。パチンコ玉を弾く音、スロット台が回転する音がした。
パチンコ、スロットを打つ人間見ては、真昼は軽蔑の眼差しを浴びせた。
そこにいる人間はまるで気が狂ったかのように各々の台にのめり込んでいた。
ああはなりたくないなと思いながら、男が待つスロット台のコーナーへと向かう。
男はスロット台で目をぎらつかせながら、時折、貧乏ゆすりをしていた。ジャージ姿で、無精ひげ、髪はボサボサで。画面を睨んでは歯ぎしりをしていた。
真昼はそんな男に話しかけた。
「やあ、おじさん」
男は真昼の顔を見ると舌打ちした。それからすぐにスロット台に向き合った。
「なんだ。生意気なガキが。ここは18歳以下は来れねーはずだが」
「私、こう見えても19歳なんですよ」
「ふん。ガキはガキに変わりねー」
「やだー。おじさんったら。それならいっそ、私の胸でも触ってみますか?」
「馬鹿言え。俺はガキに興味ない」
「そんなこと言って、本当は私みたいな可愛くて、美人なお姉さんが好きですよね!」
真昼は胸を張り挑発するように言った。
「やっぱ気色わりーガキだな」
「やだぁ。私のことそんな風に言わないでくださいよ」
「そうか。それなら大人をからかったり、挑発するような言動はやめろ」
「はーい。それで、そろそろ本題に入りませんか」
「ああ。その前に、これを揃えてから」
男はそう言いながらスロットを止めようとしなかった。
「やれやれ」
真昼はそう言うと、男を少し跳ねのけ、台へ座った。
「おい、邪魔すんな!」
男は叫ぶが、真昼は無視した。
スロット台をじっくり眺めながら、ボタンを3つ押す。
スロット台の絵柄は7を3つ揃った。
「これで満足? そろそろ本題に入ろうよ」
「おい。横取りするな」
「黙れ。私を煩わせるな」
真昼は急に表情を曇らせ、鋭い眼光を突きつけた。
男は少し怖じ気づきながら、コクリと頷く。
真昼はパッと笑顔になった。
「それじゃ換金して、場所を移動しようね!」
「ああ、そうしてくれ」
男は諦めたかのように声を漏らした。
*
真昼と男はとあるバーへと足を運んでいた。
途中、男が「お前20歳じゃねーのに、良いのかよ」と言っていたので、真昼は「バレなきゃ犯罪じゃないよ!」と返答しておいた。
バーへと入店して、バーテンダーに席を案内され、真昼と男は入口手前の席に座った。
真昼は男を見て少し嬉しそうに、
「こういうのって何か雰囲気あっていいよね。まるで密約でも交わすかのような」
「そうだな。たった今、それをしにここに場所を移動しただろ」
「そういうこと」
バーテンダーは真昼と男の注文を聞き、準備し始めた。
数分後、準備を終えたバーテンダーがグラスをテーブルに置き、
「お待たせ致しました。こちらオレンジジュース、赤ワインとなっております」
真昼はオレンジジュースのグラスを手に取り、ストローで啜った。
男はグラスを持ち、赤ワインを一口流し込む。
「良い飲みっぷりじゃないか」
「ああ? ガキなんだし、もっとガキっぽいこと言えよ」
「おじさん、おいちい?」
真昼は目を輝かせて言うと、男は「黙れ」と言ってきた。
「さて、おじさん。そろそろ本題に入ろうか」
「ああ。そうだな。お前は知ってるんだろ?」
「私、お前じゃない」
「は?」
「真昼ちゃんって言ってよ」
「は?」
「だから、真昼ちゃーん」
「はぁ……。真昼ちゃん」
「よろしい!」
真昼は少し勝ち誇ったかのように言い、男は少し動揺していた。
「ま、真昼ちゃんは知っているんだろ? 俺が知りたいこと」
「もっちろん! でも、本当に聞いちゃって大丈夫?」
「ああ」
「なるほどね。ま、言ってあげてもいいよ。おじさんの探している相手、私、心当たりあるんだ。ただし、タダで教えないよ」
「いくらだ」
「うーん。1億」
「そんな金ねーよ」
「冗談だって。お金は取らないよ」
真昼は椅子を90度回転させて、男の方に向き合った。
「じゃあ教えてあげるよ。椎名日奈の居場所」
「ああ。それは俺の娘の名前だな」
「そうだよ、おじさん。おじさんが会いたがっているから仕方なく、教えてあげるよ」
「さっさと言え。娘は、どこにいる?」
「まあ、まあそんなに焦らないで。教えてあげるからさ。でも一つ条件があるけど、いい?」
「条件か、聞いてやる」
真昼は男に情報を与える代わりにとある条件を言った。
それは椎名日奈を傷つけたら許さない、と。
男はそれを聞くと少し笑い、
「ああ。吞んでやるよ。その条件」
「じゃ、そういうことで。さて、椎名日奈のことだけど、今、水柳高校に通っていて、バイトはコンビニ、それか飲み屋街にある『スナックまつ』だよ」
「そうか。じゃあ、そこに当たってみるか」
「まあ、会えるといいね。日奈ちゃんに」
真昼はそう言いながら、ストローでオレンジジュースを啜った。




