14話 コーヒータイム
真夜と裕が二人で紙袋を回収している間、隅はドーナツ屋の前にいる日奈のところに戻っていた。
「ちょっと! 協力者がいるってどういうことかしら!」
隅は少し怒っていた。
一方、日奈は平然としながら、ベンチに座って、コーヒーをストローで吸っていた。
「いや。私のドーナツに皆、命かけすぎ、私も含めて…」
「確かに、そうですわね」
隅は可笑しくなり、つい笑っていた。
日奈は「まあ、そうだね」と言いつつ、ストローでコーヒーを吸う。
「ところでクマちゃん。もう私のドーナツはいいの?」
「そうね。もう、いいかしら。それに駅周辺って、広すぎてもう、お手上げかしら」
隅は手を上げて降参のポーズを取った。
日奈は「そう」とだけ呟いた。
「今度宝探しするのでしたら、どこか一か所の建物にしてほしいかしら」
「そうだよね。やっぱり駅周辺じゃ広すぎたよね」
「そうね。おまけに黒服達とは連絡つかないし……」
「黒服って、探すのに手伝ってもらったの?」
日奈は驚きながら言った。
それに対して隅は当然であるかのように答えた。
「そうですわ。だって、駅周辺を1時間で隅々まで1人で探せって無謀ですわ。というか、元々、それを知った上で範囲をわざと駅周辺にしたわね」
「えっと、なんのことでしょう……」
「とぼけても無駄よ」
少し引き攣った顔で答える日奈に対して、隅はやれやれと呆れた様子だった。
隅は日奈の隣へと座ってきた。
「ところで七瀬さんはこちらへ戻ってきていないのかしら」
「多分、今も探している」
「そうみたいわね」
「うん。真夜ちゃんなら、そうする。そして、私を、見つけてほしい」
「え? どういうこと?」
隅は日奈がおかしなことを言ったと感じ首を傾げた。
日奈はどこか嬉しそうに話していた。それはまるで意中の相手について語るかのように。
その横顔を見ていた隅は気になって前のめりになっていた。
「えっとね、これは夢の話なんだけど。私、金髪の女の子とかくれんぼしていた。それで、小麦畑に入って行ったその子を、私は捕まえられなくて。なんというか、夢に兄さんが現れて、止められたの、父上に怒られるから麦畑には入るなって」
「そう、そんな夢をみたのですね。それは椎名さんの昔の話だったりして?」
「多分そう、かもしれない」
「そしたら、もう金髪の少女とはすでに会っているのでは?」
「うん。私の思い違いじゃなかったら、真夜ちゃんは、昔、一緒にかくれんぼした女の子」
日奈はまるでときめく少女のように語った。
それに対して隅は優しく相槌を打った。
「そうだと、いいですわね」
「うん」
日奈はそう言って微笑んだ。
そんな日奈に隅はさらに質問を重ねた。
「それで今回の宝探しと夢の話は何か関係あるのかしら?」
「えっとね、紙袋の中にねちょっと、紙切れを入れたの。何を書いたのか、教えられないけど」
「そう。なら、二人が帰ってきたら聞いてみることにするわ」
「うん。多分、後20分もすれば帰ってくると思うよ」
「そう。ならワタクシもここでコーヒーを飲みながら待ちますわ。椎名さん、そのコーヒー、どこで買ったのですか?」
隅に聞かれて、日奈は指差した。
ドーナツ屋の方向を。
「ワタクシ買ってきますわ」
「うん。行ってらっしゃい」
隅は嬉しそうにはしゃぐ子供のようにドーナツ屋へと入っていく。
ドーナツ屋へと入っていく隅の姿を見ながら、日奈はコーヒーを啜った。




